第96話
ドワーフの朝は早いけど、ホーク=エーツさんの朝は遅かった(笑) 『汎用魔法』の『浄化』と『清浄』を使って身支度の後、髭を整えて【サモントーヴァ】入り麦粥の仕込みを始める。大麦が煮えたら皮を剥がした【サモントーヴァ】を刻んで入れるだけの簡単な料理です。好みで野草を入れてもよし。オススメはネギとかセリとか。もしワサビが見つかったらそれも試してみたいところ。
ポニーが気になるので見に行く事にした。飼い葉とかあげてるよね?
ここにいるポニー、馬じゃなくて【運魔】だった。【運魔】は馬そっくりの魔獣で、体力も馬力も通常の馬の三倍の能力を有している。もちろん速度も通常の馬の三倍まで出せるけど、乗る側の技量が付いて来ない方が多いので基本的には一般的な速度で走らせる。魔獣なのでケンタウロスとの交配も可能なんだとか。そして【運魔】にはサラブレッド体型もポニー体型もいる。多分、ばんえい競馬に出るタイプの【運魔】もいるんだろう。馬と【運魔】の見分け方はとても簡単。額に魔力を帯びた宝石が有れば【運魔】だ。カーバンクルの額の宝石とかと同じだと思えばいい。ちなみに魔石ではないので、欲を出してくり抜いても良いことは一切無い。
あ、ユニコーンとかバイコーンとかペガサスも【運魔】の仲間になる。【運魔】は魔獣だけど準家畜なのでテイムとか従魔登録とかは不要。お【運魔】さん便利です。似た魔獣でスレイプニルやケルピーやヒポグリフは別枠扱いで、どちらかと言えばモンスター寄り。こっちを運用したかったらテイムしてから要・従魔登録だ。
そして、馬獣人から見たら【運魔】は愛すべき隣人だという。犬獣人から見た犬みたいな感じなのかな? ペットにもなる頼れる相棒とのこと。でも種族が違うので交配不可。亜人と魔獣のカップルにハイブリッドは産まれないのです。
【運魔】達はモリモリと飼い葉を食べていた。飼い葉はちゃんと積荷にして持ってきているとのこと。朝食が終わったらスキンシップしたいな。折角だし鬣を編み込みしてあげようかな。
「おはよう。なんだ、ポニーを見に行ってたのか?」
「ファイン=ロックさん、おはようございます。だって気になるじゃないですか」
「後ろから近付くんじゃないぞ」
「はいっ」
蹴られちゃうよ。
「ブラッシングしてあげたいんですが、大丈夫でしょうか?」
「騎乗訓練が終わったらしてやるといい」
そんな会話をした後、皆で【サモントーヴァ】入り麦粥を啜る。何とか起きて姿を現したホーク=エーツさんは眼鏡を掛けていた。
「おはようございます。ホーク=エーツさんって眼鏡を掛ける人だったんですね」
「ホークは飲み過ぎた翌日は眼鏡なんだよ」
焦点が合わなくなるとか、目が霞むとかだろうか? 何だか面白い判定基準だ。飲んだ翌日でしか確認出来ないのが勿体ないけど。
「あ、麦粥って皆さん口の中を火傷してるのに出してしまってたけど大丈夫ですか?」
昨夜は口の中の火傷のことをすっかり忘れて提案しちゃった。パイク=ラックさん以外、全滅してたんだった。
「そこは、まぁ…」
「ポーションなんて物があるからな」
ガルフ=トングさん曰く、火傷はポーションで治し辛い怪我だけど、口の中がベロベロになる程度なら、一分程度ポーション液を口に含んでから飲み込むと治るんだって。鍛冶師がよくやる指先や腕の火傷は患部を水で冷やした後、ポーション液に指を漬けたり患部に何度も塗ったりして治すものらしい。まぁ、処置が面倒くさいのとポーションが勿体ないのとで自然治癒に任せるほうが多いみたいだけど。
「ホーク、状態回復ポーションを飲んでおけよ。審査官が役立たずだとマズイだろ」
「兄貴、すまん………」
「状態回復ポーションですか」
「ヒト族用の一番効果が弱いやつだけどな。ドワーフならそれで悪酔いは治る」
ジョー=エーツさん曰く、極稀に他種族、主にヒト族がこの辺りに迷い込むことがあるそうで、その時はここの『関所の集落(仮)』に招いて酒盛りを仕掛けて酔い潰してしまうんだとか。確かに余計な詮索や諜報活動をされる前に意識を刈り取れる。そして翌朝、この効きの悪い状態回復ポーションを飲ませて追い出すんだって。




