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第88話

「そもそもパイク=ラックさんはどうやって秘匿魔法を会得したんですか」


「あれは……昔、儂がまだ若くて小さな木賊(とくさ)を……、そうじゃ、山で採取した木賊(とくさ)とアケビ蔓を持ち帰る時じゃったか。植物が枯れぬ様、木箱に入れて風を当ててやったら箱の中が冷えておったのじゃよ。それからというもの、植物採取の度に面白がってそれを繰り返しておったらな、いつの間にやら冷却魔法を会得しておったのじゃよ」



あ、それって採取植物の葉から蒸散したところに風当てちゃったんじゃない?



「それって、植物から水分が蒸発してきて、そこに風を当てたのが発端だと思いません?」


「恐らく」


「原理的には濡らし陶板に風と同じじゃな」


「つまり、濡らし陶板に風を繰り返し当てていたら、俺達も冷やしエールが飲める様になるという事だな!!」



え〜〜、魔法取得の目的が普通じゃないよ。冷却魔法を取得したらしたで、毎日冷酒を飲んで皆の総魔力量が増え続けていく未来しか見えないし。



「実験するのはいいですけど、ちゃんと記録して学園と商業ギルドに報告して下さいね」



ホーク=エーツさんがイライラしてるよ。



「俺、思ったんだけど、汗をかいた身体に風が当たって、その風が身体から熱を奪った為に身体が冷えたってことは、風の力が身体から熱を除去したって事だよね」


「マリイン=リッジ、説明が回りくどいが、多分そうなんだろ?」


「除去系統でもいけそうな気がしない?」


「除去系統って回復魔法の範疇じゃないのか? 解毒とか解呪とかから冷却が生えると思うか?」


「ドレインじゃないのか? エナジードレインとかの系統」


「デバフは違うのか? 熱が活性状態だとしたら冷却はデバフにならないか?」



ヤバい、皆で段々とおかしな方向に議論が向かっているんだけど。



「いやまてよ、ミーシャが『汎用魔法』で『有害金属除去』を使ってたな。それも除去系統になるのか?」


「だーかーら、研究するのも実験するのもいいけど、検証と報告は絶対でお願い!!」


「ミーシャ、『熱除去』を試してみないか? 生えるかもしれないぞ」



まさかの除去系統を指摘してくるとか。凄ぇなドワーフ。酒が絡むと、とことん突き進むわ自重しないわ(笑)



「はい、ボク試してみますね」



土魔法『土器』でジョッキを作り、『汎用魔法』で『注水』する。そこに『熱除去』をイメージする。掃除機で吸い取る感じ? それとも熱を抜き取る? 熱源分離?


何度か試すと、成功はしていないけどそれなりの量の魔力が消費される感覚はあった。これ、もっと回数を試すと多分生えてくるやつだ。下手に成功させて生やしたら面倒くさいことになりそうだから、無理だったフリして一回止めよう。



「成功はしてないです。もっと試しても成功するかどうかもボクには分かりません」


「そうか。機会があったら試してみてくれ。エールを冷やす為だ」



これって、秘匿魔法だったものが、気付いたら一家に一台状態になるんじゃないの? 遠い未来に『ドワーフはエールを冷やすためだけに冷却魔法を研究し、殆ど全てのドワーフが冷却魔法を会得するまでになった』 『しかも、複数の魔法系統より派生が可能であった。これは魔法の派生においては極めて異例であり、ドワーフの酒に対する並々ならぬ執念によるものである』とか歴史書に書かれる予感しかしないよ。

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