第74話
【緋茄子】ジュースのエール割り、前世でいうところのレッド・アイが完成する。ここはやはり一番最初に飲んでもらうのはパイク=ラックさんだろう。
「ん~~、美味いのう!!」
皆、パイク=ラックさんの感想を待たずに【バーサーカッター】をフル稼働させ始める。はやる気持ちをグッと堪えつつ、しっかりとジュースにしている辺り流石は酒に妥協を許さないドワーフといったところか。
「【緋茄子】とエールがこんなにも合うなんて」
「俺、【緋茄子】は気持ち悪い野菜だとばかり思っていたんだよ。今日から認識を改めるぞ」
「【空茄子】の肉詰めの後に【緋茄子】のエール割り。それこそ無限にいけるやつだぞ」
皆、レッド・アイにハマった模様。それでは次に冷凍トマトを擦り下ろしたものをエール割りにしてもらおう。
「パイク=ラックさんにお願いしておいた冷凍【緋茄子】、これを擦り下ろしたものをエールと混ぜたいと思います」
冷凍トマトは皮を剥かずにすり下ろせる。冷凍前にヘタだけ外しておけばいいのだ。ミキサーが無くてもおろし金があればジュース状に出来る。しかも少しだけかき氷的なシャリシャリ感が楽しめるのだ。
「ふおっっ!? これは霙雪的な喉越しじゃ」
「何だと!? 俺も飲むぞ!!」
「おろし金が足りないじゃないか!!」
仕方ないので土魔法『土器』でこっそりと陶製おろし金を作っておいた。
「美味しい〜」
俺もやっとレッド・アイが飲めた。今のうちにトマトジュースを作っておこう。それよりトマト、足りるかな?
「これ、ドハマりしちゃうなぁ」
「生も冷凍もどっちも美味い」
「しかし、【緋茄子】ジュースのエール割りは呼ぶのに長い」
「名前を付けるか」
「そうじゃのう……『血祭り』はどうじゃ?」
「いいんじゃないか?」
うわ〜、レッド・アイが物騒な名前にされてるよ。
「今度からこれを飲む時は「血祭りにあげてやる!!」と言いながら飲まないとなぁ」
「それはいいな」
「おい、【 緋茄子】が足りないぞ」
マジかー!! 結構用意してあったんだよ。トマト、まだ畑に生ってたよね?
「俺、畑からもいでくる。それと誰でもいいから『生命之水』を持ってきて。あと、大麦パンも」
トマトはマリイン=リッジさんに任せたら安心だな。『生命之水』と大麦パンはファイン=ロックさんが取りに行った。ピーマンの肉詰はあるけど、どうやら野菜料理だけでは気持ち食べ足りなかった模様。今のうちにブロッコリーの一本造りを分解してペースト状にしておくかな。偽ジェノベーゼを作ってパンに塗ってもらおう。
実はこっそり、【バーサーカッター】に何度も『汎用魔法』の JSSトリプルコンボをかけまくっていた。偽ジェノベーゼを作った後は念入りにJSSトリプルコンボを掛けておいた。
そして『生命之水』ってことはアレか? 俺が何も言わずともブラッディ・メアリーを作る気なのか!?
「お待たせ!! 完熟【緋茄子】はこれしかないからね。完熟じゃないのは畑にまだ六〜七個残ってる。今から俺が【緋茄子】割りをアレンジするからね」
マリイン=リッジさんが蒸留酒とトマトジュースを合わせる。やっぱりブラッディ・マリーだったよ。
「これは濃いな」
「うむ、エール割りもいいが『 生命之水』割りも良い」
いや、あなた達、アルコールなら何でもいいんでしょうが。
「これは『 血祭り』とは違うな」
「こっちにもイカした名前を付けなきゃ」
「……『 血の海』だな」
「それ、採用!! 今度からこれを飲む時は「血の海に沈めてくれるわ!!」って言って飲まないと」
「ブッ…!!」 「…………!!!!」
誰ともなく吹き出した声が漏れ聞こえた。




