第63話
「いやー、面白かった」
「ボクは微妙です。最上級の砥石を使わせてもらったのは嬉しい誤算でしたけど」
「いや、な、ミーシャが木賊を育てると言っただろ。木賊の液肥に【スライムの死核】の研磨時に出る廃液は最適だから覚えておくといいぞ」
「そうだったんですね!! どの【スライムの死核】でもいいんですか?」
「基本的にはどれでもいいな。色とか質とか、拘りたかったら拘ってみればいい」
【スライムの死核】を水に濡らしながら砥石で擦った時に溜まる水が木賊に最適の液肥だった。微細に砕けた【スライムの死核】と砥石の成分とがゆっくりと 木賊に吸収されていくんだって。凄いな、異世界の木賊。
本気でエルフ相手に商売しようかな(笑)
「ボク、初めて【スライムの死核】を触ったんですけど、元が何か知らなければ綺麗ですよね。ましてここまで研磨したら冗談抜きにエルフの宝石ですよね」
と言いながら光に翳す。うん、マジで綺麗。元がアレだけど、ウラン鉱石や辰砂しんしゃ (硫化 第二水銀 )なんかと比べたらずっと安心安全。
「遊びはこれぐらいにしておこう。その【赤スライムの死核】とこっちを交換だ。砕いた物だが数があった方がいいだろう?」
そう言うとリンド=バーグさんが様々な色の【スライムの死核】の砕片を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ミーシャにその研磨済みの【赤スライムの死核】を預けておいたら、また何かやらかすかもしれないからな。それこそ料理の隠し味にとか………な。だから大人が預かっておく」
「ボクのイメージって……」
「冗談だ」
二人で大笑いした後、リンド=バーグさんの家を後にした。集中しすぎてお昼ご飯を忘れてた。きっとオヤツの時間帯だ。仕方ないから家に戻って大麦パンを齧ろう。薄くスライスした大麦パンにオイルを塗って岩塩を振って、……野菜を挟むか。
野菜サンドはぶっちゃけ全然嬉しくなかったので、土魔法『土器』ですり鉢を作り、パイク=ラックさんから貰った擂粉木棒で葉野菜と食べられる野草をすり潰す。潰れてきたら少しずつオイルを垂らし更に擦り、岩塩を少々加えたら偽ジェノベーゼソースの完成です!!薄切り大麦パンにタップリ塗ったら………、まぁこんなもんだよね。残った分は夜に芋に塗って食べよう。
 




