第57話
「この木賊はの、儂が品種改良したんじゃよ。元々の種類は一番荒いものだけじゃった」
「品種改良しただなんてパイク=ラックさんって凄い人です」
まさか改良品種だったとは。異世界あるある的なご都合主義な存在じゃなかったよ。
「ミーシャも分かるじゃろうが、最上級の仕上げ砥を使うには儂には資格が足りぬし、木工品の仕上げをするのに薄く割った砥石では使い辛い。唯一使える木賊は荒目が一種類のみ。ならば作るしかなかろう?」
熱弁を振るうパイク=ラックさんに頷いて答える。
「幸い、百年掛からず品種が固定できてな。この時ばかりは儂がドワーフで良かったと心底思ったのぅ…」
「凄すぎます!! 表彰ものです!! ボクも見習わなきゃ」
パイク=ラックさんに感動の眼差しを向けると、パイク=ラックさんは孫を見る時の様に嬉しそうに微笑んでいた。
「儂は【樹精の加護】持ちでのう、その加護のお蔭で色々と植物からの恩恵を受けてきたんじゃ。品種改良も加護がなければ短期間では無理じゃったろう」
パイク=ラックさんが自身の秘密を教えてくれた。どうしよう、この雰囲気の中では冷凍トマトの話をし辛いぞ。
「儂を見習うのは構わぬがの、ミーシャ、お前さんは氏族名を持っていない代わりに氏族由来の家業やしがらみに縛られて生きなくてよいんじゃから、やりたい事を我慢したり諦めたりしてはいかんのじゃ」
そうだった、マリイン=リッジさんがパイク=ラックさんは家業を継ぐ為に本当にやりたい事を諦めたって言ってたな。そして俺が今一番やりたいことは、冷凍トマトを作ってもらう事です。
「ボクのやりたい事を……」
冗談はさておき、俺のやりたいことは異世界でのんびり鉱石研磨をすることなんだよなぁ。
「じゃがのぅ、好きなことを仕事にせんほうが人生楽しめるものじゃな。好きなことは趣味にしておいた方が、それを嫌いにならないもんじゃ」
あ、それ、趣味を仕事にしちゃいけない理論だ。何でだろう、それをドワーフに言われるとめっちゃ説得力があるんですけど。
「ボク、やりたいことが沢山あるんですけど……、その中の一つがパイク=ラックさんのことを “おじいちゃん” って呼びたいなーって」
ゲホッゲホッ……!!
パイク=ラックさんが噎せる。ヤバい、またパイク=ラックさんの寿命を縮めそうになっちゃった…(汗)
「おっ、驚かされたわい。ま…まぁ、儂もミーシャのことは孫みたいに思っておるぞ。尤も、悪さばっかりやらかすじゃじゃ馬でお転婆な孫じゃがな」
カッカッカッと笑われてしまった。
「研磨が好きなら思うままに何でも磨いてみることじゃ。今までもそうしてきたんじゃろ?何年ぐらい “遊んで ” きたんじゃ?」
「鉱石磨きは五年くらいです」
「それであのスキル構成じゃとは。ミーシャ、お前さんは研磨向きなんじゃな。それを中心に “ 何を学ぶか何で遊ぶか” も大体決めているんじゃろう? 若造共の戯言には騙されるんじゃないぞ」
「はい、パイク=ラックおじいちゃん」
ゲホッ!!




