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第519話

そうそう、職校から出て来る前にハーレー=ポーターさん宛に三の日の午前中に相談に行く旨を書いた紙を渡してもらう様にお願いしておいた。午後からは梁修理の見学。グェン棟梁目当てで外部の職人や学園からも見学者が来るみたいだよ。


慌ただしい中、スムーズな研磨の為にも今日のうちにジョンノ=レーンさんにいいアドバイスを貰わねば。


だってほら、水難防止の強化石だよ。おお、我がお風呂の友よ!!




「リンド=バーグさんがお勧めするアクセサリー職人って誰か居ますか?」


「その二石をアクセサリーに加工か……、俺なら安直だけどラルフロ=レーンの工房に持ち込むな。ああ見えてもあいつの腕は確かだからな」


「あの(ドワーフ)、装備仕様でアクセサリーを作るのが得意なんだよ」


「そう言えば【星留(ホシル)】使いの装備品を作ってましたね」


「単に装飾品としての細工ならヒト族の関係者に渡せばオシャレな物を作って貰えるが、そこに冒険者仕様というか装備品としての機能を持たせるならドワーフやオーガなんかの方が適任だな」



力の一号、技の二号? 俺は別にオシャレ感を求めている訳でもないからなぁ。やはりラルフロ=レーンさんの所に持ち込みなのか。



「でもラルフロ=レーンさんって 「良いモノ持ってるな。それくれないか?」 って言ってくるのが苦手で」


「それ、あの(ドワーフ)の口癖だから。褒め言葉だよ。大丈夫、言うほど取ってこないから」


「そうなんですか?」


「そうそう。触ってみたいだけだから」


「あいつは本気で欲しい物だったら金を積んででも買い取ろうとするからな」


「本当ですか? だったら安心なのかなぁ?」



どうしてもアンディーの石を狙っているイメージしか無いんだよなぁ。



「見せに行くんなら私も付いて行こうかな」


「俺も付いていくか」


ムキュウ

(「あたちも いるの」)



護衛が二人と一頭。なんと心強いことか。



「そうだ、強化石繋がりでジョンノ=レーンさんに見せに行ってみてもいいですか?」


「多分喜ぶと思うよ。先に行こっか」





「おお、これはウォーター・ゴブリンの強化石!!」



誰に見せても予想通りの反応が返ってくる。レア素材は見るだけでも心躍るって事で。



「先日、ボクの知り合いの古代エルフの方がウォーター・ゴブリンと模擬戦の報酬として獲得したものを譲られました」


「いいね。しっかりとしたサイズ感で色味もいい。これは強い個体の強化石だね」


「オロール女史は古代エルフ格闘術の優れた使い手だからな、群れのトップに認められたんだろう」


「それをポンとミーシャちゃんに渡してくれるんだから凄いよね」


「それなら尚更、大切に身に着けないといけないよ。【シリマ石】は無理な研磨をしなければ大丈夫だよ。どこを石の正面にするかは好みでいい」


「この強化石の効果って水難防止と筋力増強ですよね。普段使いで問題無いですか? 外した時に反動が出るとかありますか?」


「そこまで強化されないから大丈夫だよ。いつもより少しだけ重いものが持てる様になるとか、その程度だよ。むしろ外した時に身体が軽く感じるかもしれない」


それ、リストウェイトとかアンクルウェイトとかと呼ばれる手首や足首に巻き付けて使うトレーニング器具と同じ部類なんじゃ? 筋肉をサポートしながら筋力を付けてくれるんなら嬉しいかもしれない。それも装備するだけで非力な魔法使いもムキムキになってモテモテになるとか? 



「それと、こちらの【ウォーター・ゴブリンの皿】なんですけど」


「皿も持ってるんだ。レア素材が二つも見られるなんて、なんて日だ!!」


「それもオロール先生が?」


「これはラパンの戦利品みたいです」


「こっちも丁寧に研磨するだけでいいよ。あまり薄くすると割れるから気を付けて」


「アドバイスありがとうございます。アクセサリーに加工するのにお勧めの工房ってありますか?」


「身内贔屓じゃないけどラルフロかな。その素材だと喜んでアクセサリーに加工してくれると思うよ」



そこまで推されるなら仕方ない。ラルフロ=レーンさんに頼むか。





「なぁミーシャ、その石、俺によ〜く見せてくれねぇか?」


「見せるだけですよ。売りませんからね」


「片方だけでも売ってくれたら嬉しいんだけどなぁ……」


「駄目です。売らないけれどアクセサリー加工は依頼したいんです」


「ミーシャ用か?」


「はい。ボク用です。工賃は弾みますので」


「そうか……売らないのか。でも触らせて貰えるんなら加工してもいいぜ」


「いいんですか?」


「べっ、別に、欲しくないんだからなっっ!!」



欲しいんですね、分かります。



「どっちもペンダントトップに加工した方がいいですよね?」


「指輪だと作業に邪魔になったりするからな。後は腕輪か。サイズ的にピアスには向かないぜ」


「お風呂に入る時に付けたいので、水濡れに強い素材でお願いします」


「まぁ、確かに風呂用だよな。それなら錆や燻しに強いほうがいいのか」


「そっちの皿は?」


「護身用なので落としにくい仕様にしてください」


「護身用……ミーシャ、アンディーちゃんの石は持ってるよな」


「はい」


「それ、研磨したか?」


「まだです」


「どうせなら【ウォーター・ゴブリンの皿】と【カーバンクル石(カーバンクライト)】を一緒に付けようじゃねぇか。拉致防止と認識阻害、イイ感じだと思わねえ?」


「えっ? アンディーの石もですか?」


「どうせなら尖った仕様にしちまおう」


「あー、それ面白そう。ミーシャちゃん、やっちゃえ」


「えっ、えっ???」


ムキュウ ムキュウ!!

(「ますたー つかって つかって」)


「ほら、アンディーちゃんもイイぜって言ってるぞ〜。だよな?」


キュウ

(「なの」)



そこに俺の意思は介在しないのか……。でも、良く考えたらラパンが俺を護る為に勝ち取った皿にアンディーの石を合わせてアクセサリーを作るのは理に適っているじゃないか。



「分かりました。それで依頼したいと思います。でもまだどれも手付かずなので、研磨し終わってからになりますけど」


「早目にやってくれよな。遅れれば遅れただけ危険度が増すだけだからな」


「危険……って」


「ほら、溺れるとか溺れるとか溺れるとか溺れるとか、あとは間違って拐われるとかだな」



そこか……。確かに完成が遅れるだけ風呂で溺れる危険は付き纏うわな。

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