第502話
オロール先生にミケヲさんの話をしなきゃいけない。流石にお風呂で話す内容ではないので夕飯後にオロール先生の部屋で伝えることにした。
「オロール先生、夕飯後に部屋にお邪魔してもいいですか? 相談したい事があるんです」
「難しい話でなければね」
「ボクの知り合いの『重魂』に関する話です」
「流石にその話をするのはここでは無理だね。いいよ、聞いてあげよう」
「ありがとうございます」
ミケヲさんの話も取り付けた。あ、家を建てる際にオロール先生が泊まる為の部屋を作ろうと計画している話をしてないや。是非とも遊びに来て貰いたいし。まぁ、風呂と酒を用意しておいたらホイホイされちゃう気もするが。
従魔達に餌を与える。アンディーを筆頭に部屋でお留守番してもらう。コカちゃんもすっかり慣れた様で、アンディーに暖めてもらったりカトリーヌの後を付いて歩いたりしている。カトリーヌの後を付いて歩くコカちゃん、この二頭がお散歩する姿を見るとメッチャ癒されます。
そうだ、三頭が餌を食べている間にスライムバッグの清掃をしてしまおう。生体を仕舞うことが出来るスライムバッグ故に内部が汚れる事もある。魔法や薬品で清掃する事も出来るのだが、一番手っ取り早いのが本来の利用者であるスライムを利用する事。スライムは綺麗好きなので自身が入れられる場所を浄化する習性がある。なのでトイレの便槽もスライム甕も清潔そのもの。その気になったらエールを飲めるレベルで清潔だ。いや、飲まんけど。
従魔用トイレに居るスライムに『浄化』をかけてやる。これは『汎用魔法』でも光魔法でも何でも種類は問わない。スライムに『浄化』魔法をかけてやると今居る場所から移動させる合図になる。スライムがチカチカと輝いた後に入れたい場所に入れてやればOK。入れられた場所が汚れていれば綺麗にしてくれる。
と言う訳で、カトリーヌ用のスライムバッグの清掃をしてもらい、同様にコカちゃん用のマジックバッグも清掃してもらった。最後にトイレに戻してあげて、お礼の乾燥牛糞のペレットと水をあげれば清掃作業は終了。
赤スライムに糞便以外の清掃を頼むと魔力や体力を消耗させてしまうので、終わった後には乾燥牛糞と水を与えないといけない。いや、すぐにトイレで用足しをするんなら乾燥牛糞を与えなくても構わないけど。
ちなみに乾燥牛糞は焚き付けにも使えるので持っていて損はない。
そしてスライム浴という洗浄法がある。その名の通りスライム風呂だ。スライム浴を使う時は肥溜めに落ちたとか、馬糞まみれになったとか、そんな不幸な事故に遭った時の浄化法ね。ヒト族だったらスラムにいる浮浪者の浄化時にも使っているとか。
スライム浴のやり方は至って簡単。木桶に清掃対象の人物を入れ、そこに赤スライムを二〜三匹入れるだけの簡単な入浴法です。黙って座っていれば赤スライムが勝手に全身隈無く掃除してくれる。古い角質とかも食べてくれるらしく、ヒト族貴族にはコッソリとスライム浴を嗜む者がいるとかいないとか。
まぁ、このスライム浴のお陰で不衛生なスラム住民という者が少ないので、公衆衛生に一役買ってるそうな。
そんなヒト族領ではトイレから脱走した野良スライムが帰る場所が分からなくなり街中を彷徨ったりしているとかいないとか……。前世の玄関から飛び出てしまった野良お掃除ロボットじゃないんだからさぁ。
ちなみに野良スライムは見つけたら何処かのギルドに持っていくと無料で回収してもらえる。特に報奨金は無い。それは、ほら、報奨金が有ったら人様のトイレからスライムを拉致してギルドに持ち込む輩が発生しちゃうからね。スライムは人類・亜人類の宝なのだよ。
俺のスライムも年明けに健康チェックしてもらわないとな。大きくなり過ぎてたら分割処理が必要だし、逆に生育不良なら乾燥牛糞のペレットを定期的に与えないといけない。便利だけど飼いっ放しには出来ないのがスライムだ。前世ではサボテンを枯らす女子なんて言葉があったけど、ここ『ハポン=ヤポン』ではスライムを逃がす輩がそれに相当する。
スライム以外の生物を入れているスライムバッグは、入れる生体の種類やサイズにもよるけど五日毎もしくは十日毎にスライム浄化をするのが一般的。個人でスライムを保有していれば休みの日に行うし、保有していなければ日を決めて依頼するだけだ。
スライムをトイレに戻し乾燥牛糞と水を与えた。早く自家製スライムの死核を研磨してみたいなぁ……。あ、【魔ボヤ】の外殻を研磨してないわ。【魔ボヤ】ランプ製作の為にも一度、魔導ランプの講習を受けないと。灯芯に相当する箇所回りの構造さえ分かればアレンジ出来るだろうしな。魔導ランプには嵌め込んだ小型魔石を直接光らせる物と、小型魔石を電池代わりに使用して電球状の魔導ガラスを光らせる物の二種類がある。スライムの死核を使うには後者のアレンジだと思う。
流石に魔導ランプぐらいならハーレー=ポーターさんに頼まなくても自作出来るだろ。レベル的には多分、工作キットだ。前世だったらヒア・ウィー・ゴー スキーム社の五十巻分冊の “ 〇〇を作る ” シリーズになるやつだ。初回価格だけ妙に安いやつな。
【魔ボヤ】ランプを作る・全五十巻。初回は【魔ボヤ】の外殻と土賊の三枚セットが入って来て限定価格:銀貨三枚。
あ……、これ、売れないわ。
遊んでないでオロール先生と夕飯を食べてこようかな。




