第501話
コカちゃんを迎えに行った。
「コカッ、コカちゃんお迎えにきたよ」
コピッ
コカちゃんは俺の事を認識するとコピョコピョ鳴きながら後を付いてくる。カルガモのお引っ越し状態とも言う。
「タッキー、チャーモ、ありがとうね。また明日も宜しくね」
コカコッコー
コカッコカッ
コカちゃんを見ると、生みの親よりテイムの親なんだなぁ…と改めて思う訳よ。
コカちゃんをスライムバッグに入れ養鶏場を後にする。背中にアンディー、両肩にはカトリーヌ用とコカちゃん用のスライムバッグ、そして餌用マジックバッグ。鞄下げすぎ問題だ。まぁ、餌用マジックバッグの中身を次元収納に移したとしても、今の所スライムバッグは二つ要る訳なんだけど。コカちゃんが成体になったら自走してもらえばいいけど、その頃はその頃でまた何かしらの従魔が増えてそうで怖い。
職校のお風呂に入りに行ったらオロール先生が居た。これは報告やら何やらで食堂でエールを強請られるからの部屋飲みパターンだな。
「オロール先生、おかえりなさい」
「ミーシャか、まだ通じてたかな?」
「はい、ドワーフ語です」
【翻訳コニャック】の効果っていつまで続くんだ? まさか酔いが覚めないとずっといけるのか?
「いつ戻られたんです?」
「昼過ぎだねぇ。飲んで飲んで飲まれて飲んで、朝風呂で飲んで……市場で買い物をして、それからは部屋で寝てたよ」
ワイルド過ぎるだろ!!
「す……凄いですね」
「愉快な仲間達だったよ。 「飲みバフでほろ酔いの重ね掛けだ!!」 とか言い出してねぇ……。途中からホールに居たクルラホーンをテーブルに呼んで、彼らに無理矢理飲ませて大宴会さ」
ほろ酔いって重ね掛けするものなのか?
「大丈夫なんですよね?」
「言葉が通じてるって事は軽〜く酔ってるんだろうねぇ。授業でやったら校長に怒られるから明日からは明るい時間は共通語だよ」
「ほろ酔いって重ね掛けするとどうなるんです?」
「初めのうちはプラス修正が入ってるよ。重ね掛けすると、そうだねぇ…人によるけどリバースからのマイナス修正になって、更に重ね掛けすると行動不能になるよ。行動不能が数日間続く場合もあるし、最悪死ぬね」
「はははは……危険ですね」
「適当なところで留めておくと強いんだけどねぇ」
聞いてみたけどただの危険な宴会だったよ。リバース、酩酊、昏倒、急性アルコール中毒からの死亡。俺の酒が飲めないのか!! って事は無いそうなので自己責任なんだけど。
「それより【翻訳コニャック】って何の目的で生まれたんです? 共通語が使えたら特に困らないのでは?」
「それはね、古代エルフ同士で言葉が通じないからだよ」
「え…?」
「私も『ブルーフォーレスト』西側の都市に住む古老とは会話できないからね」
実は『ブルーフォーレスト』は大まかに分けて西部、東部、北部の三つのエリア、(厳密には西部エリアも西側と中央とで構成されている)に分かれており、それぞれの言葉が違うため八割方言葉が通じないのだという。
オロール先生はその三つのエリアの交点の地域の出身なので、全域の古代エルフとそれなりに会話出来るそうだけど。
特に東西地区の古代エルフ同士は仲が悪いそうで、会えば喧嘩腰になるものの、飲めば仲直りするそうなので、それは途中で【翻訳コニャック】が入って言葉が通じる様になるからに違いない。
「実は凄いことになってたんですね」
「まぁ、そこは酒の力でなんとかなるものさ」
流石に醤油こと【粗相豆】の大型種の取引についての詳しい話は教えてもらえなかった。一応、機密事項だしな。俺が教えて貰えたのは大型種は輸入になる事と、栽培小型種の種を分けて貰ってドワーフ領内で育てる事になるという内容。栽培小型種も累代していけば大きくなっていくそうなので、年数を掛けてドワーフ領内向けの品種に育て上げろという事だ。北方で育てると最終的には大型化の品種に変化するそうなので、そのまま植えてもドワーフ領内では環境に合わないのだ。折角植えても枯らしてしまうのは醤油に忍びないのでそこは仕方ない。幸いドワーフはそこそこ寿命が長いので俺が生きているうちには大きな醤油容器が採れる事を願うだけだ。
その他のエルフ野菜も輸入が決まった模様。先ずは古代エルフと取引をし、ドワーフの間にエルフ野菜の素晴らしさが伝わった所でエルフと輸入交渉をする模様。早いところ安く天ぷら蕎麦が食べられる様になって欲しい。ゴボウとニンジンのかき揚げの乗った暖かい蕎麦が日本円換算で五千円以上なんだよ。それは駅前の立ち食いそば屋だったら五百円以下じゃないのかい?
「そう言えばオロール先生はクルラホーンとセンベロ酒場で飲んでたって言ってましたけど、古代エルフとクルラホーンは良好な関係なんですか?」
「良好も何も、クルラホーンは陽気な飲み仲間だよ。酒を奢れば何時までも飲みに付き合ってくれるイイ奴らだからね」
あ……、そういう関係なのね。ドワーフ以上にクルラホーンを引き寄せる種族だ。
「あの、ボクもクルラホーンの知り合いが居るんですけど、今度一緒に飲みません?」
「ミーシャが奢ってくれるんなら何時でもいいよ」
「向こうにも伝えておきますね」
「でも何でまたクルラホーンと知り合ったんだい?」
「それは……」
オロール先生にアルチュールさんの話を説明したら 「それはいい職人と出会えたもんだね」 と言ってもらえたよ。




