第493話
目が覚めたら枕元に新聞ならぬ手紙が置かれていた。中身はミケヲさんからの返事。相変わらず早い。そして新聞って掛け声は何だったのか。
ん?封蝋を押す箇所に [ 新聞 ] って書かれた封緘紙片が貼られている。何故に新聞よ。
「吾輩、何時でもよいのであるよ。
それこそ朝からお茶会でも。
返事を書いたら封筒に [ 新聞 ] と書かれたシールを貼って適当な空間目掛けて 「新聞ー!!」 と叫びながら投げてくれたら吾輩に直送されるので夜露死苦。
ミケヲ」
これ、謎の魔道具。でも何故に新聞? 時空や空間を無視して配達されちゃうの? 今度ミケヲさんに会ったら聞いてみよう。
コピョッ
「コカッ コカちゃんおはよう」
コピョピッピィ
流石コカコッコ、ヒヨコでも早起きなんだ。ドワーフより早起きって中々だろ。
でも、俺が身支度が済んでない。髭とツインテールだけサッと整えると、カーテンを開けて朝の日差しを部屋に招き入れる。餌用マジックバッグから初期飼料と適当に掴んだ草を取り出す。草を刻み初期飼料を二匙掬って混ぜる。そして味見。うん、それなりのお味だ、さほど美味くはない。土魔法『土器』で水入れを作り『汎用魔法』で『注水』。コカちゃんの朝ごはんの準備完了だ。
俺が一口食べてコカちゃんに与える。すっかり慣れたのかシッカリ食べてくれる。食べ終わると布団の所に戻る。今のうちに手紙の返事を書いて空間に投げ込まないと。
「お茶会のお誘い、ありがとうございます。醜聞が怖いのですが、夜中の訪問はいかがなものでしょうか?
今日の朝八時前でしたら時間を取れそうです。それ以降はいつまでも寝ていると怪しまれてしまいそうです。
ミーシャ=ニイトラックバーグ」
ほら、お茶室に居る間って肉体が無防備だから。アンディーが見守っていてくれる部屋で寝てれば安心だけど、誰かが訪ねてきたら面倒臭いことになるし。
封筒にこの [ 新聞 ] シールを貼って空間に投げ付ければいいのか……。
「新聞ーー!!」
投げた手紙がスッと空間に吸い込まれる。何処か遠くでガラスの割れる音が聞こえた。何故ガラス。
これ、猫獣人の発明品じゃないだろ。転生者の発案品じゃなければ上様由来の謎アイテムだな。
ムキュウ?
(「ますたー どちたの?」)
「あ、アンディーおはよう。起こしちゃった?」
(「ふちぎな けはい ちたの」)
(「ボクが三毛皇閣下にお手紙出したからかな?」)
(「おそら ゆれたの」)
(「ボク、もしかしたら三毛皇閣下と亜空間でお話し合いをするかもしれないんだ。その時は少し気絶してると思うからアンディーが見守っていてくれる?」)
(「わかたの」)
念の為、アンディーにお願いしておいた。
……ら、ものの十分程度で返事が来た。新聞の掛け声と共に手紙が現れるのではなく、天井付近の空間から糸の付いた紙コップが垂れ下がってきた。紙コップと言っても前世でお馴染みの形状ではなく折り紙で作られた紙コップだけど。で、何故ミケヲさんの仕業かと分かったかというと、紙コップに猫の模様が描かれていたからだ。
で、まさかの糸電話かよ。新聞の次は糸電話。これ、異世界の住人達ついて行けないだろ……。
紙コップを手に取り軽く開いて耳に当てる。
「もしもし、わたしミケヲ。今電話してるの」
そこで立夏ちゃん電話のネタ振りかよ!!
「イタズラ電話なら糸を切りますよ」
紙コップを口元に当ててそう伝えると「ごめんなゾウ」と慌てたミケヲさんの声が聞こえてきた。いや、巫山戯てるでしょ。偉い人じゃなかったらドツクところよ。
「ミーシャ君が問題なければ今直ぐにでもお茶会を開きたいところだが」
「分かりました。ボクとしても準備があるので十分後にお願いします」
「流石に四十秒では支度してくれないか」
「おや、破滅の呪文が聞きたいと?」
「バルサラない、バルサるとき、バルサれば……」
「あ、命令形を言ってもいいんですか?」
「言わなくていいので。では十分後にお茶室で待つ」
疲れた。オフの日に早朝から疲れてどうする……。
今の時間は朝六時。多分、意識が肉体から離れるのは三十分程度なんだろうけど、念の為アンディーとカトリーヌの餌を置いておく。野菜と果物と野草クッキー。野草クッキーなら水でふやかしたらコカちゃんも食べれるよね。
(「アンディー、後十分したら三毛皇さんの転移スペースに精神だけ移動してくるから。三十分くらい、遅くても一時間で戻ってくると思うんだけど、ボクが動かなくても死んでないから慌てないでね」)
(「わかたの ますたー まもるの」)
(「カトリーヌとコカちゃんにも慌てないでって伝えてあげて」)
(「わかたの」)
(「後、朝ごはんを置いておくから、カトリーヌが起きたら一緒に食べてね。コカちゃんが欲しそうだったら野草クッキーを水に浸して柔らかくしたのを分けてあげてね」)
ムキュウ!!
(「まかせるの!!」)
念の為、 [ 九時まで寝てます ] と書いた紙をドアの外側に貼り付けておく。オロール先生が突撃してきたら事だし、間違ってハーレー=ポーターさんが押し掛けてきても困る。
トイレを済ませて身支度を済ませたら準備完了。靴を脱いでベッドに横になって待つ。
程なく空間に金色に輝くお茶室が現れた。何時見ても…ってまだ二回目だけど悪趣味だよねぇ。
「それじゃあ行ってくるね」
ムキュウ
(「ますたー まもるの」)
フウッと意識が飛ぶと俺の意識体は躙り口の前に移動していた。




