第489話
感動のご対面と言う名の育ての親の刷り込み儀式も終わり、従魔登録に移る。『雛仔ランダム』による性別チェックによるとコカちゃんは雄でした。卵を産まない代わりに蹴爪が貰えるな。繁殖させるならお嫁さんを貰って繁殖させるか、繁殖に貸し出し謝礼として雛を貰うかのどちらか。管理が楽なのは当然種親として貸し出す方だ。
暫くは毎日養鶏場に顔出ししてコカちゃんを預け、タッキー&チャーモ夫婦に子育てを手伝ってもらう必要がある。餌の取り方とか鶏の誘導の仕方とか、コカコッコとして生きていく為の指導をしてもらうのですよ。コカコッコ的にはどうなのかというと、品種改良中に “ 半分は人に育ててもらうもの ” という認識が本能に植え付けられたらしく特に問題は無い模様。たまに子育てを丸投げすると、高確率でスパルタ式子育てをするのだとか。
コカコッコとしてはサッサと雛を人に渡してしまって次の卵を産みたいんだろう。年間産卵数は平均八個だそうだから、サクサク渡してサクサク産みたい気持ちは分からなくもない。
コカちゃんはまだ雛なので尻尾の蛇は生えてきていない。……のでタッキーの尻尾の蛇の頭部を見せてもらいました。
尾羽根の中にコッソリ埋もれている蛇さん。凄くやる気が無いんだけど……。
チャーモに生えてる蛇の尾は更にコッソリと埋もれていて、コカコッコの特徴を知らなければ気付かない可能性アリ。
コレが猛々しくて殺る気満々だったら先祖返りなので即報告しなきゃいけない蛇か……。コカトREスですな。
コカコッコの従魔証は基本足輪になっている。ごく稀に鶏冠や喉ヒダにピアスタイプの物を装着している個体がいるけど、そんなパンクな個体を目にしたらちょっと引いちゃう自信がある。
職員さんからコカちゃん用の初期飼料を分けてもらった。柔らかく煮た豆類・穀類を潰したものに貝殻の粉や魚粉を混ぜたペースト状の餌だ。これをスプーンで一杯くらい取り、野草や葉物野菜を細く刻み同量混ぜたものを作り一日数回与える。粟粒や稗粒など小さい粒の穀類であれば特に煮る必要もなく、少し混ぜてあげれば食い付きのよい餌になる。水は新鮮なものを与える。トイレの使い方は親から教わる他にも他種の従魔がいれば見様見真似で覚えてくれるので、部屋飼いでも特に困ることは無い。
で、推奨される野草がご存知【鶏餌草】。コカコッコや鶏を飼う人は通常、草樹魔法の『発根』『発芽』等を用いて種から好みのサイズにサッと育ててあげ新鮮な物を毎日与えるんだけど、生憎俺は覚えてないんで使えないからね。養鶏場にお願いして分けてもらうことにしました。野草の発芽直後のものを与えられたら最高なんだけどなぁ……。サラダにトッピングも出来るし。
初期飼料、別に変なものが入っている訳ではないな……。鑑定結果にも人が食べても害はないって出てるし。これは一口味見をしたいところ。
しかしコカちゃん用なので量が少ない。ぐぬぬ……。
「どうかなされましたか?」
「あ、そのですね、この雛用の初期飼料ってどんな味なのかなぁ…? って考えていただけです」
「味ですか?」
「ええ。コカコッコや鶏の可愛い雛達がどんな餌を口にしているのか興味が湧きまして」
「そういう事でしたら試食されますか?」
「いいんですか?」
「我々が食べられないものではないですし、食べて確認される方もおりますので」
「ありがとうございます。試食させて下さい」
おおっ、まさかの試食タイム発生。そして職員さんの、こいつまた鶏の餌を食うのかよ……な視線。
基本の初期飼料のみを口にする。貝殻の粉と魚粉が入っているから口の中が少しザラつく。甘くない豆の餡っぽい何かだ。餡というよりは、硬めのずんだ餅のタレか? 枝豆の風味なんか一切ないけど。
まぁ、マッシュポテトとマッシュビーンズを足して煮干し風味にした物だな。美味くはないけどまぁ食えなくはない。そこに刻んだ【鶏餌草】。青みが加わると食べた時のサラダ感が増す。これ、貝殻の粉を脱いてマヨネーズと塩胡椒を加えればサンドイッチの具に出来るだろう。
うん、この初期飼料だったらコカちゃんと一緒に口に出来るわ。
ウンウン言いながら初期飼料を味わう俺を見て苦笑いしている職員さん。気にしたら負けだ。
良く混ぜた初期飼料をスプーンで掬い、コカちゃんの口元に持っていく。大きく口を開けるのでそっと口の中に入れてあげれば
ゴクッと飲み込む。餌が無くなるまで繰り返せばOK。流石に親が給餌する場合はスプーンは関係無い。
そのうち自力で餌を摂る様になるので、スプーンで与えるのはそれほど長い期間ではない。
俺用に餌を一口二口食べてから、残りをコカちゃんに与えた。餌を飲み込んだ後、俺の指先に小さな嘴をスリスリしてきた。可愛いけどどんな意味があるんだ?
「あの、この行為の意味は?」
「親に餌を強請っている時に見られます。コカちゃんはミーシャ=ニイトラックバーグさんを育ての親だと認識して甘えてきてます」
「そうなんですね。コカちゃん、信頼してくれてるんだ。はい、沢山食べて大きくなってね」
「与えすぎると吐き戻しますので、程々でお願いします」
「あ…、気を付けます」
お腹が一杯になったのか、目を細めて眠ってしまった。小さな籠に保温の魔道具を置き、その上に布と藁を乗せコカちゃんをそっと収める。本来なら親鳥の下で暖めてもらうんだけど、親から離して育てる場合は保温の魔道具が必需品だ。
特に難しい機能のついた魔道具ではなく、魔力を注ぐと数時間暖かくなる魔道具だった。充電式カイロみたいな感じだ。
魔道具名が【ホカホカ懐石】。そして何とこの魔道具、鶏の勇者ケン=タツキの発案品でしたよ。




