第483話
「おっろー、ミーシャでねが。オレ、だよオレ。わがらねか?」
(訳:「あらあら、ミーシャじゃないか。私だよ私。分かるかい?」)
「オッ、オッロー……、オロール先生!?」
「なも、そったらに驚かねの」
(訳:「何も、そんなに驚かなくてもいいのに」)
ちょっ……、何で風呂にオロール先生がいるの!?
(共)「オロール先生、『スワロー』に戻られたんですか?」
「んだんだ。あ、通じねが……」
(訳:「そうそう。あっ、通じないのか……」)
里帰り中は古代エルフ語で話すんだろうからね、ユニークスキル依存の俺と違って急に共通語にするのも大変なんだろうなぁ……。
(共)「ついさっき戻ってきたよ。ラパンは馬車組合の厩舎に返してきた」
(共)「オロール先生おかえりなさい」
(共)「やっぱり『スワロー』は暖かくていいねぇ。『ブルー=フォーレスト』は寒くてダメだ」
うん、夢でも幻覚でもなかった。積もる話ばかりなのは分かっているけど、オロール先生ってどの辺りの話から知らないんだろう? アンディーは……炭焼きの時に出会ったからオロール先生は知らないんだな。そこの辺りから説明しなきゃいけない訳か。
(共)「何から話せばよいのやら……」
(共)「ボクもオロール先生に色々と報告しなきゃいけない事があります」
(共)「だろうね。何かと忙しかったんだろう?」
(共)「はい。でもどうして分かったんですか?」
(共)「そりゃあ、手習いポーチの上前があんまり入っていなかったからね」
そんなので分かるの!?
(共)「それより私の借りてる部屋に何かしたのかい? 一月そこそこでヤニ臭さがあんなに消えるものでもないし」
(共)「『汎用魔法』の『消臭』や『脱臭』の練習をしてみたのと、後は【手持ち豚】が駆虫と消臭処理をしてます」
「おっろ〜」
(訳:「あらまぁ」)
(共)「その話に絡んで従魔が増えた話に繋がります。長くなるのでお風呂から出てからにしませんか?」
流石にこのままお風呂で報告会を続けたら逆上せてしまう。それこそ何度目だって。何度も風呂で倒れていたら別の世界に転生してしまいそうじゃないか。
(共)「そうだね。それよりまだ髭は浮かないのかい?」
(共)「はい。なかなか難しいです」
(共)「髭を一本ずつ浮かせるんなら『浮多毛』が一番だけど、アレは魔力の消費量がネックになるからねぇ」
(共)「皆さん、不思議と使う魔法が違うんですよね」
(共)「そりゃあ『汎用魔法』だけに色んなアプローチの仕方があるからね。魔獣の使う『毛舞離』だったら比較的簡単かもしれないけど……」
まさか、魔獣も毛を浮かせる事が出来るだとぉ!? ワギュやアンディーに聞いてみるか。
(共)「魔獣も使うんですね」
(共)「体毛が濡れた時に発動させてるよ。ラパンにでも教わればいいじゃないか」
ちょっと待って、魔獣の身体が濡れた時に体毛をブワ〜っと逆立ててからブルブルと水を弾いているのって、あれって髭を浮かせる魔法と同じって事なのか!?
続きはお風呂の後で……と脱衣場に戻ってきたらオロール先生の大騒ぎする声が聞こえてきた。
「わい!! なして こさ カーバンクルがいるんだばって!!」
(訳:「うわっ!! 何故ここにカーバンクルが居るんだ!!」)
ムキュウ〜ン
(「あたち おるちゅばん」)
「オロール先生、わの従魔のアンディーだはんで」
(訳:オロール先生、ボクの従魔のアンディーです)
(共)「ビックリしたよ。ん…? あんたは騎士様か」
ムキュウ!!
(「なのなの!!」)
(共)「オロール先生、夕飯はまだですよね? サッと済ませてオロール先生の部屋で語りませんか?」
(共)「そうするのがいいみたいだね」
アンディーとカトリーヌは部屋で待っていてもらうことにして、先にサッと夕飯を済ませることにした。その後に二頭を連れてオロール先生の部屋で飲み直し……じゃなくて報告会だ。
(共)「取り敢えず、ミーシャの奢りで乾杯だな」
(共)「仕方ないです。オロール先生の無事な帰還に乾杯です」
(共)「やっぱり他人の奢りで飲むエールは美味しいねぇ……」
オロール先生、本音がダダ漏れしてますよ。
(共)「ちょっと見ないうちに食堂も新商売を始めたんだね。どれもお酒に合いそうなトーストだ」
(共)「はい、どれもオススメです」
(共)「暖かい部屋でこんがり焼けた暖かいトースト、そして温いエール。極楽極楽」
(共)「やっぱりもう『ブルー=フォーレスト』は寒いんですよね」
(共)「ああ寒い。寒いと言うか “ 寒い ” のよ。凍らさるね」
(共)「凍らさる?」
(共)「凍るって事だよ。【凍白長根】とか【凍マンナ芋】とかで使うだろ?」
(共)「それ、多分古代エルフ語です」
(共)「ちなみに商人言葉だと “ 凍てる ” になるよ」
まさかの言語指導、入りました。そしてオロール先生、お酒は他人にたかるのに、トーストは普通に買って食べてるんだけど。
(共)「そうだ、数日前に【双子豆】の収穫体験をしてきたんです。オロール先生と食べようと思って茹で豆を確保しておきました」
(共)「【土成り豆】、別名【祓い豆】だね」
(共)「古代エルフ語だとどんな意味なんですか?」
(共)「土の中で育つ豆、別名は邪悪を祓う豆だよ」
(共)「邪悪を祓う豆ですか?」
(共)「そうそう。ちょっぴり魔力を籠めてから邪悪な者に投げつけると、当たった瞬間に豆が破裂してそいつらを追い払うことが出来るんだよ」
(共)「まさか、この豆にそんな力が。でもちょっと勿体ないかも」
(共)「当たらなかったらね、拾って中身を食べればいいんだ」
(共)「えっ?」
言葉だけでなく古代エルフの風習は謎だらけです。




