表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

481/543

第478話

髪飾りにも出来る髭飾りが完成した。シンプルでノンセクシャルで使えるデザインだ。まぁドワーフ以外は髭飾りは使わなそうだけど。


牛革と違って縁、革の切り口を滑らかに整えるコバ磨きも不要だった。今回は【バサルトタートル】の革同士を貼り合わせたけど、他の革と貼り合わせることも可能なんだって。



「バサルトタートルって天然物もありますよね。やっぱり天然物の方が質がいいとかなんですか?」


「いや、俺としては養殖個体の方が品質は安定していると思うね。そうだな…久々に座学をやるか。おーい、全員黒板の前に集合しろ!! ノートを忘れるなよ」



いきなり始まるバサルトタートルの革講座。俺にとっては有難い話です。



「今日は一年生が髭飾りを習いに来たんだが、俺が選んだ革はバサルトタートルだった訳だが、理由は単純明快だ。持ち込み素材がコカコッコの羽根だった。これが鷹や雉といった通常種の羽根だったら牛革や羊革を使う訳は分かるな」


「師匠、マッドフロッグを使わなかった理由は何ですか?」


「吟味不要と端材在庫の保有数だ」



鍛冶の担当講師には親方と呼びかけていたけど、皮革の担当講師には師匠と呼びかける決まりなんだな。



マッドフロッグは魔獣種の蛙。全身の革が使える代わりに部位ごとに柔素材と硬素材に分けなければいけなかった。牛革と同じで腹の革が軟らかくよく伸びる。そのせいで腹の革は高級素材にはならない。バサルトタートルは背中だけでなく腹側も甲羅に覆われているので素材として革を回収出来る部位は頭、四肢、尾の六点のみ。利用可能部位は少ない代わりに全てが同じ硬さだ。


ちなみに、マッドフロッグの亜種にマッドバルーンフロッグという魔獣がいて、そちらは名前の通り風船の様に膨らむ蛙だ。こちらの蛙革は全身が軟素材なので注意。利用方法としてはフイゴの空気ポンプに使ったりする。そしてレプラコーンは成体になったばかりのマッドバルーンフロッグを捕まえ、綺麗に皮を剥いだ後、麦藁(ストロー)を挿して膨らませて遊ぶのだとか。レプラコーン、恐ろしい子!!


バサルトタートルは全ての革が硬素材に分類される代わりに大きい革が採れない。そして端材が多く残る。上手く接ぎ合わせれば一枚革より丈夫になるそうだけど。バサルトタートル専門の革細工職人もいるんだって。



「バサルトタートルとオーク革の相性は……」


「尾の革ですが、獣の人用の兜の耳部分に使う方法を教えてください」


「軟化処理について聞きたいです」


「リザード素材との組み合わせ方はどうするんですか?」



質問攻めになる講師。そして俺には何が何やらさっぱり分かりません。



「分からない奴も多いと思うが、そのまま聞いてろな。こういった知識はだな、何年かしたら役に立つもんだ」


「師匠、そろそろ天然物と養殖物との差について解説お願いします」



当たり前だけど、養殖個体は生まれてから出荷されるまでの全てを飼育員が管理している訳で、出荷時のサイズもほぼ均一に揃えられている。餌も管理されているので素材の質も良く殆ど傷も付いていない。これが野生の個体だと当然サイズにバラつきは有るし、どこかしらに傷が付いている。更に下手に解体されてしまっていたら歩留まりも悪い。


ドワーフの間では【バサルトタートルの素材】は養殖物を使うのが一般的なので、採取した天然物の革を加工する事は少ないのだけれど、ヒト族の間ではまだまだ天然物信仰が盛んらしく、時折、天然バサルトタートルの革や甲羅が持ち込まれてくる。甲羅は天然物の方が品質の良い物もチラホラ有るけれど、革については……。それでも、討伐した個体で装備を整えたいというオーダーは請けてナンボなので快く引き受けるのがプロの仕事人だ。



「……とまぁ、天然物は手間が掛かる分、面白いんだけどな。傷の部分をどうカバーするかが職人の腕の見せ所だ。ミスリルや魔鉄鋼のスタッズを使ったり強化石を使って装飾と補強とを兼ねる場合もあるし、小さい傷なら魔(ニカワ)処理だな。掛け接ぎも出来なくはないが、どうしても作業に時間が掛かるからコスト面がネックになる」


「師匠、それなのになぜ掛け接ぎの技術が存在するんですか?」


「それはほら、ヒト族のお貴族様や高ランクの冒険者が自己満足する為に決まってるだろ? 鹿の頭を剥製にして部屋に飾るのと同じ感覚だ」



天然物が珍重されるのは魔石の存在もあるからなんだけどね。後、肉質が違う。天然物は歯応えがあって味も濃厚。養殖物は肉質が柔らかく、程良く脂も乗って食べ応え抜群。まぁ、そのあたりは各人の好き好きという事で。天然物だろうが養殖物だろうが、肝を食べると下半身が “ ギンギン行こうぜ!! ” しちゃうのは変わらないぞ。



「そして、バサルトタートルの革を使った最高級の鎧がスケールアーマー、もしくはラメラーアーマーだ。これなら端材も使い切れるし、パーツの一つ一つに強化石や甲羅を付与する事も出来る。時間と素材のある時にパーツを作り貯めておけばオーダーが入った時にすぐ採寸して作り始められる。欠点はヒト族、特に騎士職に人気が無い事だな。防御力でいったら色々弄るとプレートアーマーよりも上に出来るんだがなぁ……」



まさかの防御力がプレートアーマー超えも可能です発言なのかよ。軽くて非鉄素材なので魔法職や盗賊(シーフ)系には人気があるのだった。


そう考えたら俺が拾った甲羅は……うん、考えちゃ駄目だね。いい意味で記念品だけども。



「春になったら養殖場の見学があるから希望者は今から申し込んでおけよ。今期で卒業する生徒で一度も見学してない奴は必ず申し込んでおけ」



【バサルトタートル】は冬季に冬眠こそしないものの活性が落ちる為、出荷は春になってから。その出荷時期に合わせて見学が予定されていた。あ……つまり【バサルトタートル】解体ショーの見学って事か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 んんー、いくら非金属でもシーフ系はラメラーもスケールも着ないんしゃないかな?  スケールは鱗みたいに破片を重ねて縫い付けるから、破片同士がぶつかり擦れてジャラジャラ音が出る。隠れて潜みたいシーフ系が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ