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第474話

「そうそう、パラパラポンチ絵なんだけどねぇ、この二つが最終候補に残ったよお。試作段階だけどねぇ……」



そう言ってハーレー=ポーターさんが示してきたのはスケッチブックに描かれた絵を一枚ずつパラパラ落としていくタイプのパラパラ漫画と、筒状の物体だった。スケッチブックを動かす方は分かるけど、筒状のって何だ?



「これはねぇ、リングで綴じられた紙を上から一枚ずつ落としていく方式。一枚ずつめくり上げるのも試したけど落とす方式の方が安定してたねぇ〜」



ハーレー=ポーターさんがそう言いながら試作機を稼働させた。五十枚ぐらいをリングで綴じた紙束がパラパラと落とされる。内容はジョッキをぶつけて乾杯した後、注がれているエールが飲み干されて空になっていく内容だった。



「凄い!! ちゃんと動いて見えます」


「んふふ…わたしも研究したからねぇ。これは説明用だからこの程度しか絵を使ってないけどさぁ〜、デモンストレーション用なら最低二倍から四倍の絵を動かすよお」


「五〜六秒の動画ですね」


「動画?」



あっ……ヤバッ、つい動画って言っちゃったし。



「動く絵なので動画です。パラパラポンチ絵は機構の説明には分かりやすい表現ですけど、口頭で言うとなれば、何だか長いし格好悪いと言うかノリが悪いと言うか。提案したボクが言うのも変な話ですけど」


「いやいや、新しい表現は大事なことだよお〜。響き一つで売り上げが変わるよお。特にヒト族向けは面倒臭いですぅ……」


「それは分かります。それよりその試作機ですけど、紙の枚数が増えたら動かすのがキツくありません? 限度もありますよね」


「んふっ、んふんふ、よくぞ聞いてくれましたぁ!! これはねぇ、水車(ミューレ)組み上げ方式を利用してみたんだ。見て見て、ここが……」



ハーレー=ポーターさん的に聞いてもらいたかった箇所に上手くヒットしたらしい。何だか説明が止まらない。意見を求められても困るのでちゃんと聞きながら話し終わるのを待つしかない。


どうやら、バケツで水を組み上げる水車のシステムを利用した模様。バケツに相当するのがスケッチブックで、下から持ち上がり正面に来たら起動装置に設置。パラパラと絵が動かされ、紙束の最後の一枚が落とされると同時に次の紙束がパラパラと動き……が繰り返される。落とし終わった紙束は回収され、セット分の紙束が落とし終わるまで動画として再生される……か。これ、単発再生は勿論のこと、動力に使われている魔力エネルギーが尽きるまでエンドレス再生も出来るんだ。



「凄い!! これ、相当長い作品を見せることが出来るんですね。しかも単発だけでなく同じ内容を魔力が尽きるまで連続で動かして見れせるんですよね?」


「むふふ、御名答!! ミーシャはわたしの思い付きをちゃ〜んと理解してくれてるうう〜〜。流石、発案者だねぇ。ねぇ、これどう思う? 使えると思う〜? 予算貰えそう?」


「あ……、もう少しコンパクトに出来たら実際に使えると思います」


「んふ、ぐふっ、発案者のお墨付き頂きましたぁ!! ……ング…ホッ」



興奮のあまり過呼吸気味になってる!! 落ち着いて!!



「ハッ、ハーレー先輩、落ち着いて下さい!! 息を吐いて、落ち着いてからゆっくり吸って下さい、吐いて〜〜吸って〜〜」


「ひっひっふー、ひっひっふー……グェッホ!!」



違う、それは息を吐いてるだけ。しかも別目的というかアレだ、ラマーズの呼吸!!




プープー プープー


スライムバッグから顔を出したカトリーヌがほんのり甘くてスパイシーな感じの煙を吐き出した。スイーツ・シトラス・スパイシーって感じ?


プピッ プー


あ、これは不思議と頭がスッキリしてくる香りだわ。似た感じの香りは嗅いだことがある感じだけど、前世には無い効果が発動してる。言うならば魔力香ってやつだろうか?



「ぷ〜〜。これ、魔力香(ザゥヴァローマ)かなぁ?」


プープー


「ぷぷ〜〜、凄いなぁ。流石ミーシャの従魔だねぇ。ありがとうね〜〜。【魔増(マゾ)草】あげるよぉ〜」


プピープピー



これ、見えないけどスライムバッグの中で尻尾ブンブン振ってるやつだ。カトリーヌ、ちょっぴりドヤ顔してるし。



「ハーレー先輩、大丈夫です? 落ち着かれました?」


「あはは、だっ…大丈夫ぅぅ〜。基本形はこれにしてぇ登録しちゃうけどいい〜?」


「そうですね。そこから先は改良すればいいですし」


「うひょひょ〜〜。もう一つも試すねぇ。こっちは回転式。ヒントになったのは独楽(ジャイロ)だよお。ジャイロがあるじゃろ、くふふ……」



それ、独楽と言うより走馬灯です。



ジャイロがあるじゃろ と呟き続けてツボに入ったのか、再び過呼吸からのラマーズの呼吸で復活するハーレー=ポーターさん。ガチでヤバイ人だったよ……。おれ、この人と一緒にされたくない!!



「ゴメンゴメン、一人でウケてたぁ〜。これはパラパラさせる絵を繋げて長〜い紙にした物を高速で巻き取って、筒の正面の小窓で見れる様にしてみたんだよねぇ。欠点は巻き直さないと先頭に戻せない事だねぇ」



これ、ビデオテープっていうかフィルム映画と同じって事!?



「巻き直しは大変かもしれませんけど、水車式よりはコンパクトに纏まりますよね」


「これも捨て難いんだよお〜お〜。ねぇ、どう思う? どっちが良いと思う?」


「ハーレー先輩、どっちも登録しましょう!! 両方とも凄い機構です」


「本当? 本当に本当?」


「さっきも言いましたけど基本形というか基礎はコレにしておいて、そこから先は改良すればいいんですから。ボクの落書きがこんな凄い魔道具になって、ボクが一番ビックリしてます」


「嬉しい、ミーシャ大好きだよぉ〜〜」


「いや、ボクもハーレー先輩もオンナノコですよ……」


「んふふ…、その好きとは違うから安心していいよお」



ごめんなさい、どの好きでも嬉しくないッス。

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