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第473話

魔増(マゾ)草クッキー】が取り持つ縁でグェン棟梁とめっちゃ仲良くなれました。つい、調子に乗って野草クッキーも出してみた。



「ソレは食えなくはないがな、俺は【魔増(マゾ)草クッキー】が好みだね」


「【虫来ず草】も有りますけど」


「嬢ちゃん、あんたそれを食うのか!!」


「あ、はい。ボク、【強情菊(ゴンボ)の根】も好きです」


「益々気に入った!!」



これはもしかして、エルフ野菜を手に入れるチャンス到来!?



「グェン棟梁は『スワロー』に暫く滞在されるんですよね?」


「だなぁ。たま〜にゃ自宅に戻るけどな、現場があるから『スワロー』に厄介にならぁ」



四方山話に盛り上がる俺達。ドン引き講師は遠巻きに俺たちを見ていた。大丈夫、【魔増(マゾ)草クッキー】は勧めないので安心して。



「そうさなぁ…、そこの梁なんかは今直ぐ直せなくはねぇんだけどな、どうせなら授業に組み込んじまった方がいいんじゃねぇのか? 継ぎの実習に使えんだろ」



と言う事で十二の月に入ってから補修作業の実演をする事になった模様。木工や建築を学んでいる生徒は勿論、見学希望者も参加出来る事になった。俺も予定を空けて見学しに行こう。



「俺は四時エリアにある宿の『闇鍋亭』に泊まってるからな」



グェン棟梁はそう言うと手をヒラヒラさせながら去っていった。


『闇鍋亭』は種族も職業も気にせず泊まれる宿だ。とは言え、最低限の身分保障が要求される。ギルド証や冒険者登録が無い者は宿泊出来ないとも言うので、実は誰でも彼でも泊まれる宿ではなかった。


そして『闇鍋亭』は各地に支店がある。名前の由来はその昔、転生勇者の所属するパーティーが薄暗いダンジョンの中で手持ちの食材を一品・二品取り出して鍋を作り食したという故事を元にしたのだとか。勇者の前世の故郷では、鍋をつつくという行為は仲間の結束を確かめる行為だったのだと伝わっている。そして種類を問わぬ寄せ集めでも暗がりの中で鍋物にすると不思議と何とか仕上がった……のだと。 “ 鍋物はさながらパーティーそのもの ” という事を現した話なのだという。


入れる食材は食べられるものであること。鍋の中から掴んだ食材は必ず食べる。と言うルールがあるそうだ。これが “ どんな種族でも役に立たない事はなく、どんなスキルも必ず役に立つ ” という意味を含んでいるのだとか。


いや、前世の闇鍋を知ってる身としてはですね、嘘つけどんなこじつけだよ……なんですけどね。闇鍋ってのは学生時代の興味本位の黒歴史だぞ。俺も若気の至りでやった事があるから言えるけどさっ。俺から言えることは 「パイナップルとシュークリームは止めとけ」 だ。



そして勇者、薄暗いダンジョンで闇鍋するんじゃありません!! 何というか、学級委員長ならぬ聖女が 「ちょっと勇者ー、巫山戯ないでよー!!」 って文句言ってる姿が脳裏に浮かんだんだけど……。



ムキュウ?


「アンディー、今日はありがとうね。カトリーヌもお疲れ様」


プープー



思い出に浸るのもいいけど、念話の繋がる従魔の前で長い沈黙は適当に誤魔化さないと心配させちゃう……のか。そうだ、【魔増(マゾ)草クッキー】と野草クッキーを補充しておかないと。こうなると作った方が安上がりにさえ思えてきた。




魔多々媚(マタタビ)】の葉の加工作業実習の終了報告をしに行ったら、ハーレー=ポーターさんからの伝言が渡された。中を確認したら、パラパラポンチ絵の報告で至急案件だった。まぁまだ夕飯になるまで時間もあるから顔出ししてこよう。お風呂はまだだけどJSS(浄化清浄殺菌)トリプルコンボを全身に掛けておけば大丈夫だろう。



「んわ〜、早い。もう来た」


「さっきまで【魔多々媚(マタタビ)】の葉の加工作業の実習でした」


「あ、あの大変だけど実入りのいいバイト」


「大変でした。もうやらなくていいかな……」


「そうだよねぇ〜。わたしもミーシャも小銭には困らないしぃ〜」


「体験という意味では大事な事ですけど」


「でもさぁ〜、【ネコスライモ】とか【霧誕砲(キリタンポウ)】とかはさぁ、あのバイトぐらいでしか見られないからねぇ〜」


「そうだ、その【霧誕砲(キリタンポウ)】ってノズルと本体を中空の【履筒(タイヤ)】で繋げば面白いと思いませんか?」


「チューブワーム素材で繫ぐの!?」


「はい。好きな方向に動かせますし、その気になったら遠隔操作で噴霧できますよね」


「ワオ、それ採用!! 採用するのはいいけどさぁ〜、毒物を撒かれたら厄介にならない?」


「あっ……、危険です。ダメだ」


「でもねぇ、遅かれ早かれ誰かが考えついちゃうよお。んふ、先手を打っちゃおうかぁ〜〜」



そう言うとハーレー=ポーターさんは紙にサラサラとデザイン画と仕様を書き始める。



「凄い、ハーレー先輩って【霧誕砲(キリタンポウ)】のシステムを暗記してるんだ」


「うん。だってそれはフィオナお祖母様の作品だからねぇ。一族の発明品は全部仕様を覚えてるよぉ〜」


「それ、フィオナお義祖母さまの作った魔道具なんですね」


「旦那さんのパイク=ラックさんの為に開発したんだってぇ。ラブラブだよねぇ、いいよねぇ」


「そうだったんだ」


「これはわたしがギルドに提出しておくよぉ。何箇所か毒物対策を組み込んだらチューブワームで繋いでも悪用されないと思うけどねぇ……」


「【霧誕砲(キリタンポウ)】だと毒物噴霧には使われていないんですよね?」


「うん。自爆というか使用者自身が被弾しちゃうも〜ん」



どうやら農薬噴霧器にはならない方向で改造されるらしい。

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