第471話
よく見たら床に【プルモシート】が敷かれていた。その上に【魔多々媚】の葉が散らされている。【プルモシート】ってブルーシート的な使い方が出来るんだな。ピクニックの時に敷物代わりに使えそう。
そして登場、魔道具【霧誕砲】。ピストンの着いたジョウロ風の噴霧器って感じだな。これ、ホースを連結したらスプリンクラーみたいに霧吹きを回せないかな? タイヤや輪ゴムの材料のチューブワーム素材を流用出来るよね。う〜ん、それだと前世で見たことのある、背中に背負う農薬散布器具みたいにならないか?
「それでは作業を開始します。【ネコスライモ】希釈液を散布しますので、散布後は手揉みの方を宜しくお願いします」
作業が始まった。魔法と魔道具を併用して希釈液が散布される。【ネコスライモ】の分泌液は柔軟剤の一種と言う事で、原液をガン飲みしなければ害はないと言われた。って言われても物が物だけに飲みたくないけどな。なので、作業後に手洗いをすれば大丈夫だった。まぁ、草臭くなりそうだからキッチリJSSトリプルコンボに『消臭』を掛ける予定よ。
「ミーシャねぇね、葉っぱをやさしく揉みます」
「ありがとう。ボク初めてだからちゃんと出来るかな?」
「まぁ、力まずに揉んでおれば何時かは完成するものじゃな」
「じぃじは上手なのです」
「慣れじゃよ、慣れ。糸縒りや縄綯いにも通ずる作業じゃな。将来、魔導糸を扱う予定があるのじゃったら、ここで慣れておくのがよいじゃろう」
「あ、あるかもしれないです。ボク頑張ります」
それで髭無しの手伝いが推奨される作業なんだ。将来どの道に進むにしろ様々な基礎を体験させてくれるってのは素晴らしいぞ。
黙々と【魔多々媚】の葉を揉む。揉む。揉む。更に揉む。
いつの間にかアンディーが背中から離脱していた。念話を飛ばしたら天井にいたよ。天井と言うか梁だね。天井周りが気になったのでチェックしに向かったのか。単に梁で遊びたかっただけなのかもしれないけど。
ドワーフ建築は基本的に石造りだけど、屋根周りだったり二階以上ある建物なんかだと木材も使われている。ヒト族領に建築作業に呼ばれて出稼ぎに行ったり、エルフの家を建てにいったりもするので木造建築が出来ない訳ではなかった。まぁ、ドワーフ的には石造りの家の方が魂が鉱山を思い出すのか精神的に落ち着く訳なのだが。まぁ、鍛冶で炉を使うなら難燃性の石の家を選ぶって理由は有るんだけど。
俺の家はどうしようかな……。地下室は勿論石造りにするけど、地上部分はどうしたものか。一階は石造りで、二階は木造にしようか。それとも一階も二階も木造か……。
(「ますたー やねのしたの きが われてるの」)
(「後で場所を教えて」)
(「わかったの」)
まさかの梁破損報告。後でアンディーに梁が壊れている絵を描いてもらおう。念話持ちバレを防ぐ為とはいえ少々手間だな。
そして、この葉を揉む作業、地味にキツイ。疲れてきたら体操とかストレッチをしないと体が固まりそうだ。
「はい、皆さん、そろそろ疲れが溜まってきた頃ですね。腕回し体操をして肩凝りを解しましょう。皆さん、葉っぱから手を離して立ち上がりましょう」
何処からともなく 「フゥ〜」 「ゥアア〜」 等といううめき声にも似た溜め息が漏れ聞こえる。
「はい、脚を肩幅に開いて腰から前に軽く傾けます。肘を曲げて穴掘りをするみたいに前方にグルグル回して下さい」
これ……前世で画伯でピッチャーの人がやってなかったっけ?
「♪ 揉んで 揉んで 揉んで 揉んで
回して 回して 回して 回すぅ〜ぅ〜ぅ〜 ♪」
参加者が腕回し体操をする姿に合わせて間の抜けた歌詞の歌を歌いだす指導員。まぁ、肩甲骨を剥がす体操にソックリなので疲労回復にはなっていると思う。
「はい、疲れは剥がれましたか? 水魔法もしくは『汎用魔法』で水を出して飲んでから作業を再開して下さい。そしてこの地味でキツイ【魔多々媚】の葉を揉む作業ですけど、完成した【魔多々媚の揉み葉】は高値で取り引きされます。取り引き先は猫の人限定ですが、作る傍から完売します。ここだけの話ですが、二年待ち・三年待ちは当たり前だそうです」
「マジか?」
「これ、完売してるの?」
「猫の人って変なの」
「素材はただなの?」
「でもお高いんでしょう?」
「ドワーフがお酒に目がないのと同じぐらい猫の人は【魔多々媚】に目がないんです。皆さんも新しい【魔多々媚】製品を生み出すときっと大儲けできますよ」
「マジで〜?」
「本当なの?」
「猫の人って不思議」
「素材はただなの?」
「でもお高いんでしょう?」
「そうですね、今日は作業の参加者に【魔多々媚】細工の第一人者にして名誉猫獣人のパイク=ラック氏が来ています。パイク=ラック氏ぐらい有名になると、簡単な【魔多々媚】細工をその場で作って猫の人にお土産として手渡すと大喜びされるんですよ」
「いやはや、お恥ずかしいのう……」
「正直な話、食べるのに困ってはいませんよね?」
「そうじゃな。依頼を片付けるのが大変なのじゃ」
「マジなんだ」
「本当なんだ」
「猫の人専用か〜」
「素材はただなのよね?」
「それがお高くなるんでしょう?」
そうだった、パイクお義祖父さまって【魔多々媚】細工の第一人者だったよ。
「パイク=ラック氏は何をもって猫の人に【魔多々媚】細工師と認定されたのですか?」
「うむ、儂が猫の人に認められたのはじゃな、【魔多々媚】蔓を編んで椅子を作り、その椅子の背もたれに【魔多々媚】織り込んだ布で作ったクッションを取り付けたからじゃよ。そしてそのクッションの中に収めたのがこの【魔多々媚の揉み葉】なんじゃ」
まさかの大物製品!! それは認められるわ。ミケヲさん他に目をつけられて当然だわ。




