第467話
掘りたての落花生ってもっとこう、泥と言うか土がこびり付いている認識だったんだけど、魔法って恐ろしいな。まぁ、個人が少しお持ち帰りする分しか処理してないだろうから、最終的にはタワシのお世話になるんだろうけど。
洗浄処理は掘りたての豆を茹でる前に必要な行為なので、乾燥させている豆には必要ないのに何故大量のタワシの発注が……と思ったんだけど、別に落花生だけ洗う訳じゃなかったよ。ニンジンとか大根とか、タワシのお世話になる野菜があったよ。ゴボウも……と思ったけど、あれはエルフ領の野菜だ。エルフにタワシを紹介したらウケるかな? 植物素材のタワシは獣毛ブラシよりもエルフに人気が出そうだ。
あ、ロクロ等の回転器具にタワシを取り付けた洗浄機械とか産まれてそうだ。人力で回してもいいし、単純な機構だから魔道具化しやすいだろうな。回転ブラシ、馬車用の洗車機……は無理か。
それより何より、今の俺は蟻から貰ったガーネットの事で頭が一杯なのです。今直ぐにでも研磨したいレベルですよ。鑑定結果では【蟻石】。蟻と書いてアーマイゼと読む。蟻だけに “ 甘いぜ ” ってか?
アンディーからもガーネットを貰ったけど、アリさんからもガーネットを貰ってしまった。
職校に戻る前に『ママの豆・豆のママ』に寄っていかないと。もしかしたら他の畑で収穫された【双子豆】が入荷してるかもしれない。ハーレー=ポーターさんにお土産で渡す分と俺が食べる分を合わせると今日の報酬分では絶対に足りない。俺とアンディーとカトリーヌとで食べたら無くなっちゃう量しか貰えてないもん。まぁ、ガッツリ食べたかったら店で買えって事だよな。
寮の部屋でお留守番をしてくれているカトリーヌが気になるから早く帰りたい。
そうそう、帰りに公衆浴場の入湯券を貰えました。土埃を流して帰れって事だね。ドワーフ、お風呂に理解あり過ぎだよ。俺としては有り難い事だけど。職校のお風呂も良いけど外のお風呂も良いものだ。だが学園、お前はダメだ。
◇◇◇◇◇
「わっ、初物の【双子豆】だぁ〜。それも生。自分で茹でなきゃいけないやつだねぇ……」
「ご迷惑でしたら持ち帰りますが」
「いや、最高!! 自分で茹でた方がさぁ〜、好みの仕上がりになるしぃ〜。ぐふふ……」
「それなら良かったです。貰った分だと足りなかったのでお店で買ってきた分もあります。袋は分けてあります」
「えっ、えっ、いいのお?」
「ボクもガッツリ食べたかったですし、アンディーとカトリーヌの分も要るので」
「そうだ、お礼に『アールトゥード』の海塩をあげるよお。茹でる時に使えばいいと思う」
「ありがとうございます。それ、有名な海塩ですよね」
「塩売りが「ア〜ル トゥ〜ドの塩!!」って叫ぶので有名だねぇ。それより何処のお店で買ってきたの?」
「『ママの豆・豆のママ』です。そこで【鶏遭遇豆】を買っているので」
「そこは良心的なお店だよお。面白いのは『豆メイド』かなぁ…」
今日は特にコタツ等の進展報告も無いみたいなのでサッサと退散する。ハーレー=ポーターさんは面白い人だけど、クセが強いから疲れるんだよ。
部屋に入ると仄かに漂う紅茶の香りと、スピースピーと寝息を立ててお昼寝中のカトリーヌ。これ…俺も眠くなりそう。
カトリーヌが寝ているうちに学生用の調理室を借りて落花生を塩茹でしてきた。流石に食堂用の厨房は貸してもらえないからな。熾き火は鍛冶場の炉から分けて貰えるけど、やっぱりツマミを捻るとパッと火の着くコンロが欲しいわ。ガスをどうするんだろう? って思ったけど、そもそも火魔法はガスとか関係ないじゃないか。
【双子豆】を茹でる時は鍋に塩を加えた水を注ぎ、殻付きの【双子豆】を入れて火にかける。湯がポコポコ動きだしてから弱火で三十分、火から下ろし茹で汁に浸すこと十分で完成だ。味見と称し、茹でたてホカホカの殻を割り薄皮ごと中の豆を口にすると、しっとりと茹で上がった豆は甘く、ほんのりとした塩味がいいアクセントになっている。味見のつもりだったけど、これは後を引く!! ヤバイ、エール飲みたい!!
これ、暖かいままの方が美味いんじゃないか? という事で餌用マジックバッグに仕舞い込む。今日いっぱいぐらいは暖かいハズだし。夕飯時に食堂に持ち込んでエールと一緒に楽しむんだ。その前に部屋でアンディーとカトリーヌに食べさせてあげよう。
ムキュウ ムキュウ
(「ますたー おいちいの」)
プープー プープー
「本当、これ美味しい!!」
部屋で食べ始めると、あっという間に茹で落花生が消えて行った。そして、山盛りの殻だけが残された……。
「ヤバイ、美味し過ぎて一気に食べちゃった」
ムキュ〜ウ
プキィ
「これ、ワギュにも食べさせたいな。また買って来ようかな」
キュウキュウ
まぁ、掘りたてを洗っただけの生の殻付き落花生はコッソリ『次元収納』保存しておくとしよう。ミケヲさんにもご馳走したいし。それとは別にバターピーナッツも食べたい。甘いピーナッツバターも捨て難い。
食堂に行ったら塩茹で【双子豆】が一皿銀貨一枚で売られていた。しかも一人一皿までの制限付き。誘われるままエールと一緒に注文してしまった。食事のメニューはボイルしたソーセージとマッシュ【茄子花芋】と大麦パン。全てお腹に収めて余は満足じゃ。




