第463話
【天河石】、完成!! 半透明の淡いターコイズブルーのシュガーローフカットの裸石が完成した。角度をつけて見てみると何となくシラー効果が出てる気がする。
木賊の限界を感じつつも出来る範囲での仕上げをした。トッププロというか凄腕の職人さん達はどんな秘密の紙ヤスリを使っているんだろう。俺もいつの日かそのスペシャリティーな木賊を使ってみたい。他にも研磨道具があれば良いんだけどな。
先日書いておいた四角ドングリ云々の解説を添えて【天河石】を職業ギルドに納品した。書類の処理はホーク=エーツさん。これを依頼主に納品に行くのはカーン=エーツさんだけどな。それを具に観察するナオ=エーツさんと【双子豆】の収穫依頼を請ける手続きに来ていたチーウ=エーツさんが居た。凄いや、エーツ兄弟妹姪揃い踏みだ。
「どうもー、何やシケた顔してますやん」
「あ、カーン=エーツさんこんにちは。授業で頭がパンクしそうになったので」
「あれやな、文様やら強化石やら魔法関係の面倒なやつやろ」
「そうです。複雑怪奇です」
「あれねー、ホンマ面倒なんですわ。面倒過ぎて講義を受けた後は商人言葉が出てこなくなるレベルですわ」
「錬金術師や職人は製造で使うから覚えなきゃいけないのは仕方ないですけど、よくよく考えたら商人さんにこそ必須の知識ですよね」
「せやでー。せやから毎年学園で講義は聞いとるんやで。たま〜に新しい内容が発表されんやるから敵わんわ」
「そうだ、あの【銘菓:ヒドラ饅頭】ですけど、三毛皇閣下に献上と言うか一緒に食べましたからね。それと、中に入っていたドラゴンスレイヤーと書かれていた木ベラですけど、あれをいたく気に入られた様でお持ち帰りされてましたよ」
「ホンマに? 買ってきた甲斐があったわ〜って、何してくれてますやん!!」
「何をするって、一緒に【ヒドラ饅頭】を切って食べましたけど」
「アカン、猫の人のおエライさんにアレ食べさせてもた…」
「アカン…って、三毛皇閣下にはめっちゃウケてましたよ」
「ホンマに? ホンマのホンマ?」
アレがイロモノだって事はちゃんと認識してたんだな。
「むしろ、ナオ=エーツさんの方がドン引きしてましたよ」
「アカン、おじ様、立ち直れへん……」
そのおじ様呼びさせようとするのが一番の問題点なんだけど……。おじ様呼びを許していいのは、何処ぞの小国のお姫様が世界を股にかける泥棒さんに対しての呼びかけだけだ!! と思っている俺がいるんですけどね。まぁ、おじ様呼びしてもらうのが憧れではあるのは分かるけど。
「そうだ、あの【銘菓:ヒドラ饅頭】なんですけど、どうせだったら箱に一度だけ発動する加熱の魔法陣とかを追加しちゃって、食べる前に魔法陣を起動させたら【ヒドラ饅頭】が加熱されて箱を開けたら湯気が上がる……とかでも面白いですよね」
そう、前世であった牛タン弁当とか、お酒が熱燗になる仕掛けですよ。異世界だと魔法陣仕様になりそう。
「なにそれ、面白!!」
「出来ることならドラゴンスレイヤーの木ベラで切った時に蒸気が上がれば最高に盛り上がりそうですけど」
「それ、絶対ウケるわ」
「それこそ、【ヒドラ饅頭・プレミアム】なんて名前にして……」
「ええですやん。それ、売り込みに行ってこよ」
「後ですね、そのドラゴンスレイヤーの木ベラも何種類か作ってコンプリート欲を煽るって作戦も有りじゃないかと……。季節限定版とかもあればコレクターはリピート買いすると思います。それこそコレクションボックスとかも別売りすれば部屋に飾っておけますよ」
「んなアホな……。まぁ一応伝えときますわ」
「変なお土産とか買ってこないでくださいね」
「変なのって酷いですやん」
「ボクは構いませんけど、ナオ=エーツさんがどう思うか……」
「アカン。自分、素敵なおじ様でいたいんよ」
「そうですよねぇ……、来月の職校の講演でも見てもらえば評価が上がるかもしれませんよ」
「あ、チェックしてくれてたん」
「聴講しようと思ってますから。カーン=エーツさんって実は凄い商人だったんですね」
「何や、気付いてへんかったん?」
「ただの胡散臭い商人だとばかり思っていました」
「嫌やわ〜酷いわ〜。まぁな、アホに見えてる方が警戒されないもんやしね。それにヒト族は海千山千がゴロゴロおるさかいに……」
下らない話の最中、ホーク=エーツさんが業務連絡しに割り込んできた。
「じゃあ今の【銘菓:ヒドラ饅頭】へ対する改革案を正式に文章化していいのかな?」
「えっ?」
「せやなー。悪いんやけどホーク、ササッと書いといてくれへん? 書き上がったら速攻で持って行くさかい」
「俺も初めて書くんだけどね、ヒト族の商品への改革案の意見書」
「ほな、ええ勉強になったやろ」
えっ、そんな大事なの!? 俺、『汎用魔法』を取得する時の、こんな事が出来たらいいのにね……的なノリで話しただけなのに。しかもウケ狙いのネタ話だよ。悪趣味に悪趣味を重ねてるだけだよ。
「その、コレクションボックスの話もいいと思うよ。将来的にオークションに掛けたりも出来る訳でしょ?」
「それやったら、プレミアムバージョンのドラゴンスレイヤーは木ベラやのうて本格的に作らせてもええんとちゃうん?」
「それこそ何本かに一本、本格仕様のドラゴンスレイヤーが入っている事にすれば購買意欲を煽りますよ」
トレーディングカードのホログラム仕様みたいなものですが。
「ちょっと待って……提案するネタを増やさないで!!」
「せやかて……」
【銘菓:ヒドラ饅頭・プレミアム】に付属するドラゴンスレイヤーがオークションの目玉商品になるのはまだ先のお話。




