第462話
文様は単発柄でも連続柄でも効果を発動する物と、連続柄でないと意味をなさないため効果を発動しない物との二種類があった。前世の表現で言うと、麻の葉の柄が前者で青海波の柄が後者だ。麻の葉の柄は単発でも麻の葉だと分かるけど、青海波の柄は単発だとWi-Fiの電波マークにしか見えないって感じだな。
魔法陣との違いでは、魔法陣は正確に書き写さないと効果が発動しないけど、文様は描き方の約束さえ違っていなければ多少歪んでいたり不揃いでも効果が発動する。
尤も、魔導インクや魔力を帯びた糸や絵の具を使わないと効果は発動しないんだけどね。
そして、オロール先生の教える古代エルフの刺し子の柄は文様の教科書に載っている柄とは違っていた。似た模様は有るけど別物だった。そして、同じ文様でも魔導インクで線を書いたり柄を描いた物と、糸を使って刺し子の技法で埋めていった物は魔力の通り方が異なる為、全くの別物扱いだった。恐るべし古代エルフの刺し子技法。
【魔増草】柄はあるけど【魔多々媚】柄は存在しないんだな。そして前世の唐草模様と言われていた物は触手の柄にされてました。唐草模様と言えば前世の記憶にあるのは泥棒が背負っている風呂敷だけど、異世界変換だと山賊・野盗が略奪した触手の柄のバックパックですよ。そうそう、唐草模様と言えば前世で【蛸唐草】と呼ばれる柄が有ったんだけど、それは異世界でも【蛸触手】って呼ばれてたわ。そこの感覚は世界が変わっても一緒なのかよ……。
【天河石】も仕上げ磨きをしなくては。【天河石】ことアマゾナイトは長石グループなんだけど、異世界でもそこは一緒だった。ムーンストーン、サンストーン、アマゾナイト、アイオライト、ラブラドライト、磨くと楽しいので俺の好きな鉱石類だったりする。異世界名だと【月光石】、【日光石】、【天河石】、【夜半石】、【黄昏石】。色味の濃い深い色のラブラドライトは【深淵石】で白いラブラドライトは【氷雪石】。あと、アンデシンが【曙石】だったよ。
勿論、強化石でもあるけれど、強化値=ゼロで綺麗なだけの石も多い。そして劈開、石の割れる方向の関係上割れやすく、研磨時に整形を間違うとムーンストーン特有のシラー効果、表面に現れる乳白色や青白い色をした光の輝きや、ラブラドレッセンスと呼ばれるラブラドライトに見られる虹色に輝く光学効果が出てこなかったりする。そう、残念な石になっちゃうのよ。
残念な研磨結果になった長石類でも黒変中のロードナイトが【終わりかけ】と呼ばれて利用されているのと同様、いい具合に意味をこじつけられて商取引されている。
まぁ、スキルで確認しながら研磨面を決めていけばそこまで劈開の悲劇は被らないはずなんだが。でもね、スキルが有っても裸石としてサイズが取れる方向と綺麗な光学効果が一致させられる訳ではないのよ。そこに劈開も参戦してくるのよ。
趣味とは言え前世でどれだけやらかしたか……。職業宝石研磨師の方々の苦労と言ったら……ねぇ。
あー、長石グループ研磨したいぜ!!
その前に目の前にあるアマゾナイトを片付けちまわないと。
それはそうと、最近はオロール先生から渡された【タケ】の仲間を研磨してみている。一日に十分〜十五分程度なので研磨しているうちには入らなさそうだけどな。アンディーは興味無さそうだけどカトリーヌは気になってるのかな?
俺が【妄想タケ】を手にするとプープー鳴きながら近付いてくるもん。流石にこれは食べられないぞ。
「あら、カトリーヌさん、それは【ラオー】ではないのよ」
プピッ?
「確かにカトリーヌが咥えたら【ラオー】じゃな」
「パイクお義祖父さま、フィオナお義祖母様、【ラオー】とは何ですか?」
「コレじゃょ、コレ」
パイクお義祖父さまはそう言いながら引き出しから一本の棒を取り出した。
「これはじゃな、煙草や薬煙草を燻した煙を吸って吐き出す時に使う筒じゃな」
あ、煙管の管の部分の事か。確かにカトリーヌが咥えたらそれっぽいな。煙も出るし。
プープー プープー
尻尾を振りながら【ラオー】に向かっていくカトリーヌ。それ、仲間だと思ってないか?
「これは薬煙草用の【ラオー】じゃよ。咥えてみるかの?」
プピッ プピッ
パイクお義祖父さまが面白がってカトリーヌの前に【ラオー】を差し出すと尻尾をブンブン振って喜びを表現。フンフンと臭いを嗅いだあとパクッと咥えた。
ヒョロ〜っと青白く細い煙が【ラオー】の先から出て来る。カトリーヌが【ラオー】を咥えたまま頭を振ると煙が四角や三角の形になる。
「カトリーヌちゃんがお絵描きしています」
「そうじゃな。他に何か書けるかの?」
プープー
カトリーヌの吐き出した煙がよく分からない形を取る。意味が有るのか無いのか分からないぞ。
(「ぶたさん ますたー すき かいてる」)
(「そうなの?」)
(「まじゅうの ことば」)
う〜ん、アンディーがそう念話で教えてくれるけど、それをパイクお義祖父さま達に伝えるわけにもいかず。何とも悩ましい結果に終わってしまった。
「何か意味のある事を書いているのか、後で養豚場に聞きに行ってきます」
「それがよいじゃろうな」
こうなったらドワーフ語を覚えて貰うのが一番早いんじゃないか?




