第458話
アルチュールさんがジョッキと格闘中なので、その間にポーション瓶と【粗相豆】の鞘殻にお酒を詰めてもらった。冒険者ギルドなので空のポーション瓶が在庫として置いてあるのには助かった。後、ドライフルーツを『生命之水』に漬け込んだ物も有ったので売ってもらった。これは汁漏れしない様に蝋引きされた芭蕉紙で作られた二重袋に入れてもらえた。飴と一緒だな。これ、更に外側をプルモシートで巾着の様に包んでやればかなりの防水効果が見込まれるのだとか。
「これな、ハーフジョッキを【甘み蔓】で飲んだら何杯でも飲めそうな気がするな」
「だったらそれも商業ギルドに報告してくださいよ。流石にドワーフでは使い勝手が分からないので」
「だな。中空の蔓で飲み物をチュ〜ッと飲むのは中々に楽しいぜ」
「アルチュールさんだけにチュ〜ッと」
「ミーシャ、酔っ払ってるかぁ?」
「そこまで酔ってませんよ」
酔っ払いの戯れ言ではなく、ただのオヤジギャグです。飲み屋のおっさんです。ベタベタを通り越して氷魔法が発動するレベルで寒いギャグです。出来ることなら 「アルチュールさんがアルコールをチュル〜ッと」 まで言いたいところなんですけどね。
憎しみで人を殺せたら、と言うセリフを聞いた様な記憶があるけど、オヤジギャグでエールを冷やせたらいいのに……。
「はい、これは報酬です。お酒とドライフルーツです。ドライフルーツはお酒に漬けてあったものなのでお嫁さんに渡してあげて下さい」
「おうっ、いつも悪ぃな。嫁さんが甘くしたワインをいたく気に入ってたぜ。ドライフルーツも喜びそうだ。ミーシャのお陰でラブラブよ」
「それは良かったです」
「待ってろ、今飲み終わる。その前に肉を一口、パンを二口……」
ムキューウ
(「ますたー おやちゃい のこるの」)
「少しサラダが多かった? カトリーヌもお腹いっぱい?」
プピップピッ
「勿体ないからボクが食べちゃうね。うん、これ美味しいサラダだ」
「おい、ミーシャ………」
ううっ、つい従魔の餌を口にしてしまった。そしてアルチュールさんの視線が痛い。めっちゃドン引きされてる。
「あ、このサラダですけど毒のある草は使われていません。全部ドワーフが食べても大丈夫な野草や野菜でしたよ」
「いや、それでもな……【魔増草】と【モクモク草】が入ってんぞ」
【魔増草】の呼び名はどの種族でも共通して【魔増草】なのか。【モクモク草】は【虫来ず草】、つまりヨモギのクルラホーン語だった。
「それ、結構美味しいんですよ」
「ソレ食えるんならエルフと語り合えるんじゃねぇか? まぁ、それだから従魔に懐かれるんだろうけどよう」
「そう…なのかな? トモダチと同じ物を飲んだり食べたりするのって普通の事じゃないです?」
「そんな感覚なのかよ。まぁ、そうだろうな。じゃなきゃクルラホーンと連んで酒は飲まねえわ」
まさか、従魔の前で餌を一緒に食べる行為とクルラホーンと酒盛りをする行為が感覚として同じものだったとは……。
「また誘うんで一緒に飲みましょう」
「よしっ、決めた。俺はミーシャの家に住み着くぞ。出て行けって言われても住み着くからな。ミーシャの家なら死ぬまで酒を飲みっ逸れねぇわ」
「賑やかになりそうですね。今から楽しみです」
「♪ 家 YEAY 家 YEAY YEAY
酔う 酔う 酔う 酔う
家 YEAY 家 YEAY YEAY
酒 BAR DANCE
酒 BAR DANCE
飲むぞー!! 」
アルチュールさん、サバイバルな飲み会ソングを歌う……。ご機嫌なんだな。
飲んだ後は商業ギルドでアルチュールさんが登録だ。中空の蔓を使って液体を飲む行為が珍しがられた。いや、麦藁で液体を飲む行為は当たり前に知られてますよ。ただ、折れるし丈夫じゃないだけで。折れた個所から液漏れするしな。蔓なので自由に曲がるのがウケてました。まぁ植物素材なので折れたら液漏れはするけれど、麦藁よりは折れても液漏れしにくかったよ。ただ、【甘み蔓】はそこまで太い蔓ではないのでドワーフだと液体を吸い辛かった。毒がなく太めで中空の蔓を探すことになるのかな?
そのうちストローの一部が蛇腹になって曲がるストローになるんだろうなぁ。
それと、俺がアルチュールさんに木賊の加工を依頼している話も伝えておいた。それと鋼製の平鑢を注文している話もだな。トラブル防止というよりはアルチュールさんが仕事を請けてくれていますアピールだね。
毎週一の日はホーク=エーツさんがお休みの日なので、知った顔は受付さんや支部長ぐらいだ。ホーク=エーツさんは今日はナオ=エーツさんと買い物やら何やらをしているのだろう。チーウ=エーツさんも一緒かな? 女性パワーに負けてそうな予感。
そして商業ギルド支部長さんにはネコ車とコタツの開発をハーレー=ポーターさんに委託した事を報告した。




