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第453話

「ところでその胸元の袋の中の別嬪さんは誰なんだい?」


プープー


「先日お迎えしたカトリーヌです」


プキップキッ


「カトリーヌちゃんか。その毛並み、プリマ系だと拭き草か?」


プープー



白い毛並みの子は拭き草好き確定なのかよ!!



「おいミーシャ、睨むなよ。拭き草って言ったってヤバイ品質の物を与える訳じゃねぇんだから……」


「そりゃそうですけどイメージが……」


「それ、拭き草の茎を食う奴に言われたくないセリフNO.1だぞ」


プーププー?



あ、カトリーヌが俺の事を拭き草仲間だと認識してないか?



「そのですね、前に【手持ち豚】は淹れ終わった後の紅茶の茶葉を食べるって聞いたんですけど、それって本当ですか?」


「食うぜ。豚ちゃん達は茶葉好きだ。そうだな、今日はこの後時間は大丈夫なのか?」


「はい」


「この前ブレンドした茶葉を試していかねぇか?」




ガラス製のティーポットにサラサラと紅茶の茶葉が入れられる。そこに白いドライフラワーと赤い実が加えられた。沸かした湯が入れられ、蓋をしたティーポットに布が掛けられた。そしてラルフロ=レーンさんがおもむろに砂時計をひっくり返した。



「砂時計もな、こんな時ぐらいしか使わなくなったもんだねぇ…。昔は売れたって聞いたぜ」


プープー プープー


「カトリーヌちゃんは俺の紅茶の良さが分かるみたいだな」


プキッ


カトリーヌがいつの間にかスライムバッグから出てきていた。



ティーポットの蓋を開けるといい具合いに抽出された紅茶から甘く爽やかな香りが漂う。そこにラルフロ=レーンさんが秘密のエキスを一垂らしすると更に爽やかな香りが周囲に漂った。紅茶が三客のティーカップと浅い小鉢に均等に注がれた。



「アンディーちゃんはティーカップでいけるだろ。カトリーヌちゃんは小鉢の方が飲みやすいだろうな。火傷しない様に飲んでくれよ」


「アンディーとカトリーヌにも紅茶をありがとうございます」


「まぁ飲んでくれや」



一口目を口に含むと、ふんわりと甘い香りが鼻腔に突き抜ける。特に砂糖や蜂蜜を加えた訳では無いので単純にブレンドされたドライフラワーやハーブの効果なんだろう。



「半分ぐらいになったら水飴を入れるといい」


「水飴ですか?」


「ミーシャ印の水飴な」



いや、黄金虫(スカラベ)印です。



「砂糖や蜂蜜じゃないんですね」


「それは高いからなぁ…。そこは安価に楽しむなら水飴だろ? アンディーちゃんとカトリーヌちゃんの紅茶にも入れてやってくれや」



少し甘味料が加わるだけでグッと風味が増した。甘い香りがより甘く感じられる。前世ではコーヒーも紅茶もブラック派だったけど、甘い紅茶も悪くないな。



「何というか、少し甘くなるだけで香りも豊かになった感じがします」


「俺としては最初の一口、二口はそのまま飲んで、残りは甘みを足してやったほうがより紅茶を味わえると思うね」


「お酒は垂らさないんですか?」


「それは店仕舞いしてからだな」



オススメはブランデーとジャムとを混ぜ合わせた物を一匙加える事だとか。それと、この紅茶に合わせるべきお菓子は……普通のクッキーかな? メレンゲを焼いた物とか良さそう。いや、いくら俺でもここで野草クッキーとかは出さないぞ。



「そして残った茶殻はカトリーヌちゃん用だ。食べるよな?」


プープー プープー



千切れんばかりに尻尾をブンブン振り回すカトリーヌ。それでも茶殻に向かって突進しない辺りはお利口さんだよ。



「紅茶の茶殻を与えていいって聞きましたけど、本当なんですね」


「ヒト族の貴族のお茶会なんかだと茶殻処理とアロマ係で豚ちゃん達が大活躍するらしいな。ドワーフ領だと鉱山で飲んだ茶殻処理だ。鉱山だと煙を吐くってよりは灯火係に回ってるけどな」



ちなみに鉱山で飲まれる紅茶は、濃い目に出した紅茶にバターとブランデーを加えた物をよく振ったものだ。前世のチベットのバター茶に酒を入れた感じかな?



「この紅茶に足したドライフラワーって何ですか?」


「あ、白いのはカミツレッツの花で、赤いのはハゲブッテだ。茶葉は何種類かを混ぜてる。最後に垂らしたのはホルンダ・オイルだな」




〜ぶって を使った文を作りなさい


あの人はハゲ振っている

ハゲを()ってはいけません


いや、違うだろ。ハゲブッテ。



こういう時は茶殻を見ながら鑑定だな。とりあえずカミツレッツとハゲブッテが何か知りたい。



(鑑定)


【カミツレッツ】: 前世のカモミール。ハーブティーに使われる菊の花を乾かしたもの。


【ハゲブッテ】: 前世のローズヒップ。薔薇の実を乾かしたもの。



あ、どちらも前世で聞いた事がある。特別珍しい物でもなかった模様。ホルンダ・オイルは鑑定しきれなかった。



カトリーヌは小皿に移された茶殻を幸せそうに食んでいる。茶殻を食べ紅茶を飲み、時々プピプピ鳴いている。見ていて飽きない。



「ハーブティーの出涸らしも与えて大丈夫ですか?」


「大丈夫だな。尤も、個体毎に嫌いなハーブがあるみたいだ。与えた中に入っていた場合は選んで残してるな」


「結構繊細なんですね」


「繊細かどうかは知らねぇが、ヒト族の貴族の家で【手持ち豚】を飼う理由の一つに毒対策が有るのは知らねぇだろ?」


「毒!?」



ヒト族の貴族が毒を仕込まれる場合は遅効性の物が多い為、【手持ち豚】が毒見係になっているのだった。ヒトより体の小さい【手持ち豚】は致死量となる毒の量も少ない為、その身をもって毒の混入を知らせてくれる。死なくとも毒化して毒煙を吐くことでやはり毒入りの物が提供されたことを知らせてくれる。亡くなってしまった豚さんには申し訳ないが、毒化した場合は治療出来るので殺処分しなくても良かった。


カトリーヌは毒化させないぞ。その為にもコカちゃん(仮)には手伝ってもらわねばならないな。

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