第452話
「リベート云々はさておいて、【星の輝く夜】はヒト族領の宝飾店で中々の人気店だ。特に店長のミーティアが死に損ないというか死に戻りというか、まぁ産まれて直ぐ死にそうになったという事で、そのせいか冒険者達には験担ぎで御守りが人気だな。試験前の学生とか、プロポーズの前に御守り代わりにアクセサリーを買う者も多いんだとよ」
「そうなんですね。それは験担ぎでアクセサリーも売れそうです」
「そうそう。そこにあんな面白物語の付いた “ 終わりかけ ” が運び込まれたらどうなると思う?」
「めっちゃウケそうです」
「そうそう。向こうさんは研磨師を探してたみたいだぜ。まぁ、ノートに記載はしてあったけど、何処のドワーフまでかは分からねぇだろうしな」
「そこにたまたまカーン=エーツさんが別件で営業に行って、研磨ノートに目をやった時にボクの名前に気付いた……とかですかね?」
「多分そうだろうな。そこからギルド経由で指名依頼って所だな。で、何を指定してきた?」
「コレです。まだ研磨途中なんですけど……」
そう言いながら【 天河石】と研磨ノートを手渡す。まだ仕上げの研磨はしていないので艶は無く表面はザラザラしている。まぁ、それでも水で濡らすとどんな感じに仕上がるかぐらいは分かるんだけどね。
「へぇ、【テンガ】か。綺麗だけど強化値は無し。強化値無しの石はよく御守りに加工されてるぞ」
「それは知らなかったです」
「知らないクセにいい具合に解説を付けてんなぁ」
「流石に毎回怪しげな物語は書きませんよ」
「いやいや、これはこれでウケるぞ」
俺としては、前世のパワーストーンショップの商品解説にしか見えないんだけどね。金運上昇は夢があって良いけど、ダイエットに利くとかは嘘臭いと思ったもんな。その石で足ツボマットを作ればいいと思ったけどね。そんなアイテムは売ってなかったな。
「この仕事って、商業ギルドに納品すればいいんですよね?」
「なになに、商業ギルドと職校の両方に依頼が回ってくるとか普通聞かねぇな。でも何でまたカーン=エーツが送ってきたんだ?」
「それは……」
繰り返される【銘菓・ヒドラ饅頭】物語。その流れでジョー=エーツさん御一家や専任任命の下りも語られてしまう訳で。
「それ、完全に無駄な自腹じゃねぇか」
「指名依頼もタイムラグになってしまって、ボク、依頼票が有るなんて知らなかったから、貰った石を直ぐ面白がって研磨しちゃいましたからね」
「そいつは仕方ねえか。次から気を付けた方がいいな。不安だったら商業ギルド開封確認してもらうといいな。まぁ、滅多にある話じゃないね」
「そして、花言葉や樹木言葉の勉強が必要な事を知りました」
「それは学んでおいて損はない。刺繍や挿絵に使うし、家具なんかでも装飾に意味を持たせたりする。武器防具だって装飾を入れることも有るだろ?」
「言われてみればそうでした」
「後は装飾に使うといえば文様があるな。あれは一種の魔法陣だね。しかも錬金術師泣かせだ」
「そう言えばラルフロ=レーンさんって魔道具師でしたね」
「言われてしまった。これでも一応、簡単な魔法陣は使うんだぜ」
どうやらコタツ修理ぐらいはしてもらえそうです。
「それと、魔石の質問をしていいですか?」
「ん? どんな質問だぁ?」
「大きい魔石なんですけど……」
「中々一般庶民とは縁のないサイズの魔石の事だな。買うのか?」
「買いません。ハーレー=ポーターさんから大きい魔石の話を聞かされまして、少し質問が浮かんだもので……。ラルフロ=レーンさんが答えられなかったら学園に質問に行きます」
「挑発的じゃねぇか。どれ、言ってみろ」
「大きい魔石は魔力の通りを整えるために表面を磨いて整えたりするって聞きました」
「まぁ魔石は天然物だからな。どうしてもツルンとしている訳じゃねぇ。なので、魔力の通りを良くするために部分的に表面を研磨する場合が多い」
「全部研磨しなくてもいいんだ」
「全部研磨したら逆に危険なんだよ。運良く表面が整ってる魔石が手に入ったら研磨しなくてもいいしな」
「研磨するのは誰がしているんですか?」
「そりゃぁ錬金術師だな。一部の魔道具師も研磨するけどな、そんなデカい魔石を使うって事は大抵が錬金術師に回ってくる仕事だぜ」
そう言う事なんだ。錬金術師がチェックしながら不要な箇所を研磨して落としてるって事か。
「大きい魔石の魔力の再充填も錬金術師のお仕事なんですよね?」
「まぁ、使った奴らが補充するのが筋だからな。魔力充填のバイトもあるけど勧めねぇぞ」
「そんなお仕事が?」
「三日ぐらい錬金術ギルドの秘密の部屋に缶詰になって、【魔増歪ジュース】が飲み放題って仕事だ……。うぷっ…思い出したくねぇわ」
ラルフロ=レーンさん、体験した事があるんだ。【魔増歪ジュース】飲み放題ってお茶会か?
ムキュウムキュウ
「ははは…、アンディーちゃんは【魔増草】食べるから平気かもな」
ムキュウムキュウ
(「ますたー おちごと じゅーす のめるの」)
ヤバイ、魔石に魔力充填するバイトを試してみたい気分。
「それと、再充填した魔石も表面が荒れるんですよね?」
「人為的に魔力を注いでも天然物でも、表面には滲み出た魔力がこびり着くってこった」
「原理は解明されてるんですか?」
「いや、解明はされていない。中型サイズはギリギリ再充填に耐えるが、小さいサイズは使い捨てて魔導ガラスの材料行きだ」
「小さな魔石って磨って使ったりはしないんですか?」
「小さすぎるのは目くじら立てるほど魔力が滲み出てねぇからな」
「それでも整えてみる価値はあるのでは?」
「それ、試した錬金術師がいたハズだな。小さくなって魔石を無駄にしたとか、爆発したとかは聞いた事があるぞ」
「それはちょっと……」
「だから、小さい魔石は余計な事はしないのが一番使い勝手がいいってこった」
うーん、そうなると俺が『関所の集落(仮)』で小さな魔石滓を研磨した物に魔力を注いでしまった事が謎すぎる。あれは回収されちゃったからなぁ。多分、錬金術ギルドのお偉方が検証してるんだろうけど。
でも、その話は聞くに聞けないじゃないか……




