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第448話

ネコ車の魔改造大会を嬉々として語り出すハーレー=ポーターさん。魔道具とか魔法陣を介してるだけで、この人マッドサイエンティストだったわ。いや、異世界だからマッドアルケミストか?



「これ、この辺りに水平維持の魔法陣を組み込むだけで転倒防止出来るよぉ」


「それがですね、この手押し車は小回りが利くのがウリでして、若干傾かせる事で一輪車を自由自在に動かします。なので完璧に水平を取ってしまうと小回りが利かなくなる恐れがあります」


「これ、使う場所って鉱山や土木現場なんだよねぇ?」


「はい。畑でも使いそうですけど」


「鉱山で水平を意識するならトロッコを使えばいいからねぇ。トロッコのレールを敷けない場所で使ったり、トロッコ設置をケチったりする場所で使ったりする訳かぁ」


「どこかに魔道具としての機構を組み込むのは有りだと思いますが、基本的には手動で動かす道具です。そもそも三毛皇(みけおう)閣下は魔法の存在しない世界から転生してきたそうですし」


「魔法のない世界!! うわぁ〜、わたしがもしそんな世界に転生してしまったら一体どうすればいい? 魔法を使えばいいのかなぁ?」


「いや、魔力の素が無いのでは…」


「無理無理無理無理ぃぃ!!」



いや、ハーレー=ポーターさんなら前世の日本に飛ばされても意外と馴染んでしまいそうなイメージですが。



「ハーレー先輩、落ち着きましょう」


プープー



スライムバッグから顔を覗かせたカトリーヌが爽やかな柑橘系の煙を吐き出してくれてる。



「ふぁ…いい香り。あれ〜? ミーシャってば豚さん飼ったのお?」


「はい」


「そうかぁ。はい、拭き草あげるよお」


プキッ プキッ



いや……、いきなり拭き草渡すの?



「この子、毛色が白っぽいからプリマ系でしょ? プリマ系って拭き草好きな子が多いんだよねぇ。これが毛色が黒いソックス系だと拭き草じゃなくて芭蕉紙が好きなんだけど……」



それは知らなかった。でも、拭き草も芭蕉紙も与えたくない気持ちではある。



「カトリーヌ、はい【野草クッキー】。アンディーも食べるよね」


プープー


ムキュウ

(「ますたー あげるの」)



アンディーがいつもの様に俺にも【野草クッキー】を手渡してくる。



「ふふ…、ミーシャそれ食べるんだぁ」


「ハーレー先輩も食べます?」


「いいの? わたしにも一つ分けてもらえるかなぁ…」


「はい。お好きでしたらまだまだ有りますよ。それこそ【魔増(マゾ)草クッキー】とか【虫来ずクッキー】とか」


「その辺りのクッキーって、味はともかく魔力回復するから便利だよねぇ」



まさかの【魔増(マゾ)】仲間発見!! いや、これは素直に喜べないのではなかろうか……。



「そうそう、今度豚さん連れてポニーの厩舎に行ってみたらいいよお。喜ばれるから」


「はい。カトリーヌ、お出掛けしようね」


プープー


「アンディーは背中でボクを守ってね」


ムキュウ……キュ

(「ますたー ちんぱい なの」)


「ははっ、仲良しなんだあ、いいなあ」


「ハーレー先輩は従魔を育てたりしないんですか?」


「わたしはねぇ、【棘の木(カクト)】も枯らしちゃうからなぁ。従魔は誰かの子を触らせて貰うだけでいいかな」



ハーレー先輩、サボテン枯らす女子かよ。



「それよりコタツなんですけど……」




仕様書というか落書きというか、俺の知ってる “ なんちゃってコタツ知識 ” を書き綴ったメモ用紙を食い入るように見つめるハーレー=ポーターさん。ちょっとだけ心苦しい。いや、ちゃんと説明しているつもりだけどね。ミケヲさんの故郷では床に座って使う事、大昔は火鉢に炭を入れて暖を取っていた事、掘り炬燵がある事、赤いヒーターが付いた事、脚が伸びた事、ヒーターが取り外し可能になった事……等々。


天板をひっくり返すと麻雀用の緑のフェルトが貼られているとか、保温を利用して納豆が作れるとか、七色に輝くゲーミングコタツの話は書いていませんよ!!



「これ、暖を取れるテーブルなんだあ」


「そうみたいです。中綿の入ったテーブルクロスを使って保温効果を高めるそうです」


「大昔は火鉢に炭を入れて使ったって事は、基本的に魔道具じゃないって事だよねぇ〜。保温の魔道具と組み合わせたら再現するのもきっと簡単だろうねぇ」


「それこそ、今ハーレー先輩が手掛けられてる恒温調理器具の機構を使えますか?」


「調整は要ると思うけどねぇ。簡単なのは発熱の魔法陣を書いて小さい魔石を使う事かなぁ? 直ぐにコタツが再現出来るよぉ。まぁ、魔石の消費が激しくなるけどねぇ……。ねぇミーシャ、このコタツと冷やしエール、どっちに小さい魔石をより使うと思うぅ?」


「それは多分、冷やしエールなのではないかと」


「だよねぇ〜。樽を冷やすのもコタツを暖めるのも温度の差があるだけで……、ああ、そうか……」


「ハーレー先輩、何か閃いたんですか!?」


「うん。コタツのテーブルの上に樽を冷却させる魔道具を置いて、樽の中のエールから奪った熱でコタツを暖められそう……」


「でも、それだとコタツで暖まりながら冷やしエールを飲む為だけの魔道具ですよ」


「だよねぇ〜。冷やしエールの魔道具に保温のオプションは付けないよねぇ……。せめて蓄熱出来たらいいんだけどさぁ……」



まさかの冷やしの魔道具とのコラボというか合体と言うか。エールとコタツのツープラトン攻撃か……、それはドワーフを駄目にする魔道具だ。古代エルフもクルラホーンも住み着く。



「ハーレー先輩って冷やしの魔道具の開発もしてたんですか?」


「冷やしエールの為の機構はねぇ、錬金術師や魔道具開発や研究をしているドワーフ全員が手掛けてるよぉ〜。それこそ様々なシステムを構築しようと皆が躍起になってるねぇ」


「そんな事になってるんですか? まさか魔法と魔道具関連の技術者総出で開発してるなんて……」


「そうだよぉ〜。焚き付けた張本人がそんな事言っちゃ駄目だって知ってたぁ?」


「えっ!? え……ボク……、ボクが悪いの?」


「開発は楽しいし面白いけど皆泣いてるねぇ。犯人は()()



ヤツ(イコール)俺かよ!!

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