第444話
今回もカーン=エーツ視点の回です
♪ 亡国の夢も 神世の泡沫も 人の世の夢も 今は彼方に…
掴め!! 砕け!! 駆け抜けろ!!(おー!!)
ゆくぞ、我ら 啼哭過激団〜
ゆくぞ、我ら 啼哭過激団〜 ♪
『啼哭過激団のテーマ』のサビが流れ、緞帳が閉じられた。
ふぅ、久々に『啼哭過激団』はんの演目を観た訳やけど、何度観ても面白いわ。今回の演目は [ 遅れて来た守護神 ] 。単独で馬車移動していた『守護神カーク』が宿に合流しそびれる事で道中出会った町娘(主に茶屋や一膳飯屋の看板娘)を助ける話や。単独言うても見えない位置でコッソリと『投擲槍のヤッシー』はんが護衛してたり、ご隠居様のいる本隊では相変わらず『道化師エイト』はんがウッカリやらかしたり、『陽炎ユミル』はんがお色気を振りまいたりするんやけどね。
堅物の『守護神カーク』はんがチョッピリやらかすのがファンに人気の演目や。『投擲槍のヤッシー』はんが投擲槍やのうて何投げはるんやろ? って期待させるんのもウケるとこやし。今回は花の付いた枝を投げてたわ。絶対そこ見えとるやろ!!って位置に『投擲槍のヤッシー』はんがいて、それに気付いていない『守護神カーク』はんに観客席から 「カーク、後ろ後ろ!!」 って掛け声入れるんも名物やね。
今回自分が『啼哭過激団』はんに売り込みに来たネタはやね、『反省のポーズ』や。今一番『道化師エイト』にやらせたいネタ・堂々の一位(当社調べ)や。まぁ、当社調べも何も、自分のアタマん中の投票やけど。
「まいど。今日はエイトはんにピッタリなネタを持ってきてんやけど」
「あっしにですか?」
「せやせや。『ハポン=ヤポン』国内で、エイトはんが使うのが一番お似合いなネタや」
「それはどういったネタですか?」
「こうや、反省!!」
という訳で、渾身の反省ポーズを取ってみせたんやけどな、新ネタの説明してへんから伝わらへんわ。
「これは、最近、『ネオ=ラグーン』領内で流行り始めたポーズで、何かしらやらかした時に取るポーズやねん」
「ほうほう。やらかした後の反省ポーズですか。それは面白い。何か試しにツッコミ入れてもらえます?」
「せやな……、こらっエイト、また饅頭つまみ食いして!!」
「で、ここで 反省 と」
「せやせや。上手上手。この添えた手の角度や下げた頭の角度とかは研究してな。素直に反省するもよし、言い訳をして窘められてからの反省でもええし。エイトはんの持ちネタにして観客に広まった所で他のメンバーが反省してもええんやで」
「これ、あっしの為のネタじゃないですか。そして派生も出来るのはいいですね。間をもたせる小ネタは有難いです」
「これな、若い嬢ちゃんが言い始めたネタなんやわ。登録されてからは、飲み過ぎて “ 反省 ” 、博打でスッて “ 反省 ” 、この辺りがよく使われとるね。まだヒト族領には広まってないと思うんやけど。せやからエイトはんに真っ先に伝えなアカンと思ったんよ」
「ありがとうございます。これ、明日の舞台から早速使わせて頂きます。して、情報料はいかほどで?」
「コレ、タダで使うて」
「ええんですか!! ってカーンさんの言葉が移りましたわ」
「ええんやで。発案者が広めたいって言うてたし」
「太っ腹なお嬢さんだ」
「太った腹はエイトはんや」
「ははは、それも良いですね。すみません、ユミルを呼んできます」
ツッコミ担当を呼んでくるんやな。明日の演目でどの辺りに差し込むか決めたりするんやろし。
「こんにちは。今日は凄いネタをプレゼントしにきたって聞いたわよ。それも、恋多き男がエイトにプレゼントだって。モテなさすぎて宗旨変えしたの?」
「してへんわ!!」
「まぁいいわ。その新ネタを教えてちょうだい」
ユミルはんの前でもう一回『反省のポーズ』の説明をしたんやけど、今回はエイトはんが動いてくれるさかい、分かりやすくてエエんやわ。ホンマにマジで反省が似合うし。 “ ミスター反省 ” って追加の二つ名が付きそうや。
「どうですユミル、明日の舞台のどの辺りに?」
「そうね、カーク待ちで宿屋にいる時に向かいの屋台で饅頭を余計に食べてご隠居に指摘される所か、道中にお菓子を摘み食いしているのがバレるのを追加するかかしらね。明日は仕方ないにしても、今度から反省に繋げるシーンも考えなきゃいけないわね」
「それこそ、同じ演目でも反省の前振りを変えれば観客を飽きさせませんね」
「それよ!! 毎回お色気も飽きられるし、エイトの反省はマンネリ打破にいいわよ」
「たまに反省せぇへん回もあるんやろ?」
「そうですね。何十回に一回程度で私が反省しない演目も有りですね」
「それでやけど、もう一つ “ 反省 ” ネタに続きがあるんやけど教えたるわ。『啼哭』はんってお抱えのテイマーっておるん?」
「いるけど、テイマーがどうしたの?」
「続きネタはやね、 「反省だけならゴブにも出来る!!」 って言うねん」
「ゴブってゴブリンですよね?」
「せや。テイマーにゴブリンを連れて来てもろうて、そのゴブリンに『反省のポーズ』をしてもらうんよ。エイトはんのネタが喰われる演出やね」
「それは導入するまで少し時間がかかるわね。テイムしたゴブリンに内容を理解してもらわないといい舞台にならないわ」
「せやから、そのゴブリンが育つまではエイトはん単独で『反省のポーズ』を流行らせてーな」
「分かりました。あっし、明日からブイブイ言わせますよ」
「それはしなくていいわ」
それから急速に『反省のポーズ』がヒト族の間で大流行したのは言うまでもなかった訳なんやけどね。それと、密かにテイマーの間でも流行りだしたとかなんとか。それも、従魔に諭されたテイマーが『反省のポーズ』を取るのがテイマー流なんやって。




