表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

443/474

第441話

そうこうするうちにミケヲさんが退席する時間になった。まぁ、コタツの仕様は様々出しておけばいいか。ミケヲさんが帰り際に俺の手の中にそっと何かを握らせてきた。そのままコッソリ『キーボックス』に仕舞い込む。



「それでは諸君、又会おう。ミーシャ=ニイトラックバーグ、コタツ開発の件を宜しく頼むよ」



猫獣人、フリーダムだよ。ここは近所の居酒屋か? そして商業ギルドの奥に消えていった。つまり商業ギルドには転送陣に関する何かがあるって事だろう。



三毛皇(みけおう)閣下って自由奔放なお方なんですね」


「まぁ、猫らしいと言うものじゃよ」


「それより、コタツの開発だけど」


「はい。熱源は炭火の代わりに保温の魔道具でいいと思います。エール用だと温度が低いかもしれないです。今ボクの発案品の開発を担当してくれているハーレー=ポーターさんに相談してみますね」


「うん、そうして。他に浮かんだ事とかは?」


三毛皇(みけおう)閣下の話にあった座卓仕様ではなく、椅子と合わせるテーブル仕様でないと使い勝手が悪いと思います。高さを変える事が出来るか保温部分を取り外し可能にするか…ですよね?」


「うんうん」


「手元でオン/オフが出来るとか、低温と高温の切り替えが出来るとかも有れば便利だと思います」


「取り外し可能はいいと思うよ。生産ラインも分けれるし。はい、これはハーレー=ポーター宛の書類。職校経由でいいのかな?」


「はい。職校に届けておきます」



そして、部屋に帰ろうとした矢先、ドタドタと小走りな足音が廊下の方から聞こえてきた。



「ちょっ、ちょい、あっミーシャはん、まだおったわ。あれ、何ですの、専属商人って」


「あ、カーン兄、見たままの意味だよ。カーン兄は昨日付でミーシャ専属になったんだよ」


「なんでやねん!! 嫌やないけど、ミーシャはん専属って大変やん」


「そうだね。おめでとう。出世街道まっしぐらだね」



遠い目をしたまま棒読みで祝いの言葉を告げるホーク=エーツさん。それは社交辞令ですらないよな。



「その言い方、何ですのん。心がこもってへんわー、嫌やわー」


「言い方を変えます。エーツ氏族から商業ギルド支部長を輩出して下さい。兄さん、宜しくお願いします」


「何や腹立つわ。まぁええわ。ホーク、自分がミーシャはん専属って事は、こないだの【銘菓・ヒドラ饅頭】と【テンガ】は経費に出来るん?」


「無理でしょ。辞令交付前だし」


「やっぱアカンか。期待したんやけど」


「あの、カーン=エーツさん、渡された【天河石(テンガ)】ですけど、指定納期は有りますか?」


「早目でお願いしたいわ。それと、こないだの “ 終わりかけ ” めっちゃ評判良かってん。アクセサリー職人はんが 「これ、面白(おもろ)いわ」 って喜んではったわ」


「ありがとうございます。良かった、ストーリー付けした甲斐がありました」


「特別感があるさかい、他のストーリー無しのアクセサリーと混ぜて出したら目を引いてええんやて。アレのお陰でガツガツとしたナンパ師以外も “ 終わりかけ ” のアクセサリーを見ていってくれてはるし、【愛の囁き】もいつも以上に売れとるって言うてたわ。次からもお願いしたいって言うてたわ」



えっ、そんな事になってるの?



「評価されるのは嬉しいですけど、ボクはまだ学生の身なのでそこまで大量に研磨品を卸せませんよ」


「せやねん。それやから、アクセサリー職人さんには 「この研磨職人は学生やさかい、学業優先なんやて。時々、魔道具屋のラルフロ=レーンに研磨品を持ち込んどるさかい、そこを通してや」 って言うといたで」


「窓口が有るのは有難いですけど、ボクはラルフロ=レーンさんとは専属契約は結んでないですよ」


「そこはええねん。どうせ自分とラルフロ=レーンとミーシャはんで何時もの様につるむだけやし」



結局のところいつも通りでいいらしい。必要なのは適当な解説やバックストーリーを添えるぐらいだな。



「はいはい、業務連絡ついでに俺からもカーン兄に伝える事が。つい一時間前に新商品の開発が決定したんだ。はい、今から馬車ギルドに仕様書を持っていって下さい。魔道具ではないです。『スワロー』郊外開発に使用できるので大至急で開発してもらうことになりました」


「いま来たばかりでもう仕事せなあかん。少しぐらい休ませてーな」


「はい。水」


「水やのうて、も少し美味しいモンはあらへんの?」


「はい、美味しい水」


「ありがとさん…って結局、水なんかーい」



ぷっ……、面白い。あっ、そうだ、ヒドラ饅頭のお礼を言わないとな。



「カーン=エーツさん、【銘菓・ヒドラ饅頭】ありがとうございました」


「礼はええねん。面白(おもろ)かったやろ?」


「はい。あまりの悪趣味さに姪っ子さんのナオ=エーツさんがドン引きしてましたよ」


「そう、ナオが……つて、ナオちゃん来とるん?」


「来てる。明日から商業ギルド見習いで我が家で預かる」


「おじちゃん、挨拶したいわー」


「はいはい、そんな時間があったら馬車ギルドに出向いて」



キビキビとカーン=エーツさんに指示を出すホーク=エーツさん。凄いや、こんなに頼り甲斐のある姿を見るのは初めてだよ。



「はて、こんなにシッカリ者じゃったかのう…?」



パイクお義祖父さま、それは言わない約束よ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ