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第432話

「そうだ、ランディ=ストーンさん、ミハイル=ジョイソングさん、職校の図書館、もしくは資料室に花言葉の載っている本があるかどうか知ってますか?」



この二人、花言葉とかに全く縁がなさそうだけど、何か情報を持ってるかもしれないけれど聞くだけ聞いてみることにした。



「花言葉か?」


「ボク、ドングリの花言葉と言うか樹木言葉を知りたいんです」


「ん? 樹でも植えるのか?」


「いえ、今【天河石(テンガ)】の研磨を始めるところなんですけど、完成形がドングリっぽくなるんです。なので、ドングリに悪い意味が無いか知りたくなったんです」


「なるほどな。それなら草花と樹木の図鑑に載ってるだろう。多分、各ギルドに置いてあると思うぞ。それか建築ドワーフか農業ドワーフに聞く手もある」


「ミハイル、そういうお前ん所の氏族は興してそう経ってないが建築ドワーフなんだろ? 大口叩いてるけどドングリの樹木言葉は知ってんのか?」


「当然だ。ドングリの樹木言葉は “ 慈愛 ” と “ 献身 ” だ」


「あ、教えて下さりありがとうございます」


「なんだ、知ってんじゃねぇか」


「ソング氏族から分離する時に祖父(じい)様が必死に勉強した内容が伝わってるだけだがな」


「そうなのか。そのソング氏族は何やってたんだ?」


吟遊詩人(バード)だ。冒険者でバフを盛る仕事がメインだな。神々を讃える歌も歌う。時には酒場で歌ったりもしたそうだが…って、知らん顔のお前も知ってるだろうが」


「んん〜〜、何のことだ?」



ニヤニヤしているランディ=ストーンさんを横目にミハイル=ジョイソングさんが言葉を続ける。



「俺達は一応親戚だからな。ランディの母方にソング氏族の出がいる。それで知らない歌でも聞くと覚えられるスキル持ちだ。それはソング氏族に発現する吟遊詩人(バード)由来のスキルだ」


「それで勇者の体操の歌を覚えていたんですね」


「そう言う事よ。便利なんだか不便なんだか」


「神様へ捧げる歌を暗唱出来るんだから便利だろう? 土地の神様とか森の精霊とかに開拓のお伺いをたてる歌を知っているといないとでは仕事の安全度合いが変わるんだからな」


「暗記して暗唱は出来るけどな、即興は無理だ。即興で歌えたら神様にサプライズで喜んで貰えるんだろうけどなぁ」


「それは本家筋のスキルだから無理だな」



ドワーフの吟遊詩人(バード)!! イメージが湧かない。それってハーピーとかシルフとか百歩譲ってサテュロスの職業(ジョブ)じゃないのか? それとも俺が前世のファンタジーイメージに囚われているだけなのか?



「ドワーフの吟遊詩人(バード)って珍しいとかはないんですか?」


「珍しくはないな。冒険者になって外に出ていくのが種族全体の二〜三割だろ? 個人の資質もあるがドワーフに不適職業(ジョブ)は特に無かったハズだ」


「ソング氏族は応援歌(ヴァン=カーラ)を歌いながら敵に斬り込む氏族で有名なんだぜ」


「歌いながら斬り込むんですか?」


「そりゃぁ、歌いながら回復とか斥候とか魔法の詠唱や狙撃は無理だろ?」


「あ、そうですね」


「楽しそうに歌いながら特攻してくるドワーフは恐ろしいらしいぞ」


「それは嫌です」


鎮魂歌(レクイエム)を歌いながらアンデッドを殴り倒すとかだな。戦場がまるで宴会場の様だと言われたものだ」


「過去形なんですか?」


「ヒト族に拒絶されたらしい」


「えーっっ、強いのに」


「そこはよう、別嬪な姐ちゃんが後方支援してくれる方が士気が上がるからだってな。酒臭いドワーフが上機嫌で歌いながら先頭で武器を振るうのはウケねぇってよ」


「あ…、ヒト族もワガママですね」



でも、やっぱり見目麗しい女性(レディ)応援歌(ヴァン=カーラ)を歌ってもらった方がやる気にはなるよなぁ。もしくは幸薄そうなイケメンとかだな。



「強いと言えば、ドワーフ、古代エルフ、クルラホーン、サテュロス、竜鱗族(レプタリアン)の混成パーティーで、吟遊詩人(バード)を含む編成は強いぞ」


「ん!? それって酒臭くないですか?」


「臭いな」



竜鱗族(レプタリアン)は所謂、爬虫類系の亜人の総称だ。蜥蜴人(リザードマン)亀人(タートリアン)鰐人(クロコダリアン)、蛇系亜人のナーガ、ラミアが含まれる。 竜人族(ドラゴニュート)竜鱗族(レプタリアン)の上位種族だ。



前述の混成パーティーの強さの秘密は酔っ払って口々に歌う歌が相乗効果をもたらすからだという。吟遊詩人(バード)のスキル『大合唱』や『戦闘行動・合唱付き』によって吟遊詩人(バード)職業(ジョブ)でない者が歌う歌でも一定のバフを乗せることが出来る。


酔っ払いの調子に乗った合唱や輪唱は思いもよらぬ効果を生み出すらしい。



「それはそうと話は戻るが、花言葉や樹木言葉は勉強しておいて損はない。職校(ここ)だったら図書館や資料室にも置いてあるけど、手っ取り早いのは裁縫科の刺繍用資料を買うことだぞ。確か教科書になってたな」


「刺繍用の資料ですね」


「刺繍は文字を刺す他は植物柄が殆どだろ? そこに意味を忍ばせて……と言う事が多々あるから裁縫科は花言葉や樹木言葉に詳しいんだ。ヒト族だったら貴族の家庭教師に聞くのもアリだ」


「ありがとうございます。帰りに教科書の在庫が残ってないか聞いてみます」


「買えたらいいな」



まさか裁縫科に情報が有ったとは。言われてみたらハンカチの隅に刺繍の柄でメッセージとかあるもんな。裁縫科と言えば最近は指貫でお世話になったけど、今、無性に【魔増(マゾ)草】の花言葉が知りたくなったわ。

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