表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

433/474

第431話

取り敢えず高さの足りない立方体にはなった。混ぜ墨で上面側に対角線を、側面の半分ぐらいの位置に一周ぐるっと線を引いておく。一応、ガイド線ね。前世では一回二回ぐらいしか研磨しなかった形だから自信は無いんだけど、折角色々研磨出来る環境に来たんだから楽しまないと勿体ない。これって、スキルが生えたらスルスル研磨出来る様になるかな?


シュガーローフ、砂糖の精製時の円錐形って意味だった記憶がある。つまり異世界では砂糖の塊だと説明が付かないな。四角錐って英語で何て言ったか……。ドワーフ語だとどうなるんだ?


あ! 四角ドングリなんだ。【クアド・エイコーン】。これなら勾玉と違って説明がしやすい。と言う事は、ホイップした生クリームを絞り出した形はエイコーンになるんだろうな。だとしたらソフトクリームはスパイラル・エイコーンの可能性有り。



そうだ、ドングリの花言葉って調べておかないと。恐らくこのアマゾナイトは例のバニーイベント用のアクセサリーになるんだろうから、マイナスイメージのある花言葉だったら困るんだよ。ドングリってリスが頬袋に詰め込んで、地中に埋めるイメージが強いし。後はお池にハマる童謡ね。袋に詰め込む=拉致、地中に埋める=証拠隠滅とかだったら愛のイベントに使えない!!


これは学園の図書館に行くべきか、農業ギルドの資料を閲覧に行くべきか。一応、職校にも資料はありそうだけど、どうするのが一番なのか講師の誰かに聞いてみねば。



「しかし、同じ石を削るにしても、俺らとは随分サイズが違うもんだ」


「そうですね。ボクは石を磨いて綺麗にするのが好きなので。それがたまたま小さいサイズなだけです」


「何だよ、大きな石も磨くって言うのか?」


「はい。大きな大理石(マーブル)とか磨くのって憧れます。大理石(マーブル)との柱とか、蛇紋岩(サーペ)の床材とか磨けば艷やかだし、同じ模様が二つと無いのって凄いです。それを組み合わせて作品にする職人さん達はもっと凄いです」


「おう、ちゃんと分かってるんだな。てっきり宝石研磨しかしないプライドの塊みたいな奴かと思ってた。悪いな、謝る」


「はは、気にしないで下さい。実際そう言う職人さんっていますもんね」


「ああ、面倒くさい奴らはゴロゴロいる」


「それは俺達も宝石ヤローもどっちも職人だから仕方ねぇんだけどな、やれそこの岩石にレア宝石が着いているから掘り出せとか、その角を切り落として渡せだの、こっちは宝石採掘師じゃねぇんだって」


「うわっ、それはマナー違反ですよ。宝石採掘の依頼で持ってきてもらった岩石ならまだしも。それって鍛冶師にも同じ様な事を言われません? そこの角にレア金属が埋まってるとか」


「あるな。ただ、鍛冶師連中は岩石丸ごと買い取りしてくれるから、俺達にしたら素材の調達が二度手間になるだけで損はしないから許すけどな。尤も、納期が絡む時はムカつくな」


「納期はそうですよね」


「納期はカアちゃんより怖いって親父が言ってやがった」


「クルラホーン呼び病の親父がか?」


「今の親父は納期よりクルラホーンが怖いらしいけどな」


「そのクルラホーンは集塵の魔道具が怖いそうです」


「マジか?」



作業しながらの雑談と言うより飲み会で下ネタ抜きの雑談っぽい。



「そうそう、今は切り出し作業しかやってねぇけどな、俺らは彫刻もやるんだぜ」


「本当ですか? 石像とか彫ります?」


「石像は専門職がいる」


「石柱の天辺を丸く球状にするとか、壁材にレリーフを彫るとかだ。その時に宝石ヤローが口煩く注文してくるのがムカつく」


「あの、ボクが将来家を建てるときに仕事をお願いしてもいいですか?」


「俺達にか?」


「はい。まだ先の話ですけど」


「そりゃぁそうだな」


「何でまた俺達に?」


「何度かここでご一緒しましたが、丁寧な仕事ぶりですし、『スワロー』開発に名前を残せる実力持ちなんですよね?」


「よせやい、照れるじゃねぇか」


「未来の石材王に施工予約です」


「覚えとくぜ」


「俺達の名前は教えてなかったよな? 見えてるんなら別だが」


「見ようと思えば見れますが、最初は教えてもらえますか?」


「おう。見えるんなら見て構わねぇがな」


「ボク、『無礼(ぶれい)コール』って名前の呼び間違いをする失礼回避の為のスキルだと思ってるんです。なので、知らない方の名前や肩書をコッソリ盗み見しちゃいけないと自制しちゃうんです」


「真面目だなぁ」


「物には躊躇なく鑑定を掛けちゃうんですけどね。人の姿をしている相手には二の足を踏んじゃいます」


「まぁ、いいんじゃねぇか?」


「ではボクから名乗ります。ボクはミーシャ=ニイトラックバーグといいます。先輩達お二人の名前を教えて下さい」


「おう。俺はランディ=ストーン。あっちのストーン氏族と違って俺は分家だ」


「俺はミハイル=ジョイソング。ソング氏族の分家が新しく氏族を興してジョイソング氏族を名乗るようになった。ミーシャ=ニイトラックバーグもその氏族名の長さは本家筋じゃないんだろ?」


「あ、ボクのニイトラックバーグは庇護氏族名なんです。庇護養親が一人、庇護保証人が一人います。ニイトは接頭語です。それぞれの氏族名を貰いました」


「庇護氏族名か……。苦労してきたんだな」



庇護氏族名持ちという事で苦労してきた人生なんだと勝手に誤解されちゃってるよ。俺なんかより、お父さんがアルコール依存症でストーン氏族の説明が必要なランディ=ストーンさんの方が大変なんじゃないのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ