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第426話

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」


「さて行くか。ミーシャは【プラントオーク】の養豚場は見に行ったことは有るか?」


「無いです。【プラントオーク】、美味しいですよね」


「今から行くのは【プラントオーク】の養豚場だ。そこに【手持ち豚】もいるからな」


「えっ!? まさか【手持ち豚】も食卓に……」


「流石に【手持ち豚】は食用には回さないぞ。飢饉になったら食うかもしれないがなぁ」



食用じゃなくて良かった。【プラントオーク】と同じ所で飼育するのは、単に豚を飼育するのに適した環境だからだった。それに【手持ち豚】がいれば害虫も寄り付かないので【プラントオーク】の飼育的にも良い。



街の三時方向の入り口側、その南側エリアに養豚施設はあった。時計盤で言うと四時から五時あたりの外壁側だ。いくらスライムで排泄物や敷き藁、残餌を処理できるとは言え衛生的な観点から畜産関係の施設は街の外側に作られている。『スワロー』の郊外エリアか完成したらそちらに引っ越す予定なのだとか。


【プラントオーク】の豚舎は農業ギルドの管理下に置かれているが、併設されている【手持ち豚】の豚舎はエーツ氏族が管理権を持っていた。あくまで鉱山用って扱いなんだな。どんなに育っても夕張メロン一玉程度。手乗りサイズが成体サイズだ。胴に専用ハーネスを付ければランタンの様に手持ちする事が出来る。名前の由来は背中の皮を摘んで持ち運び出来ることから付けられた。背中の皮を摘んでも【手持ち豚】は痛みを感じていないと言うことだけど、見た目がチョット痛々しいので専用ハーネスを装着する事が求められている。親猫が仔猫を運ぶ時みたいなやつ?


豚舎からはブヒブヒ、プギーと【プラントオーク】の声が聞こえてくる。改良品種なので肉質は柔らかく脂も甘い。原種の猪と違って独特の臭みも無く性格も温厚。品種名にオークと付けられているけどオークのイメージは微塵の欠片もない。PLANT−Orc 略して P−Orc(ポーク) か。(Pork)じゃなかった。この豚さん達の枝肉がお肉の錬金術で【アルケミート】の牛肉に変化するんだから凄い話だよなぁ。


最初に光魔法の『浄化』をかけられる。『汎用魔法』の『浄化』と違い、浄化、殺菌、カビ除去等が一気に掛かるお得な魔法だ。習得人数でいったらヒト族のヒーラー職より農業ドワーフの方が多いというのが何とも。


そう言えば養鶏場ではコカコッコが突いて殺菌とかしてくれたな。


本来ならアンディーは事務所でお留守番になるのだが、そこは金級従魔、同行が許可された。その代わり『浄化』を掛けられていたけど。病気の原因を [持たない・持ち込まない・持ち込ませない] が徹底されていた。大事なことだよね。



【プラントオーク】の豚舎をザッと見学し、目的地の【手持ち豚】の豚舎にやってきた。同じ方向を向いて数匹ずつ等間隔で並んでいる。そして大きく開けた口からモワモワと煙が発せられている。もう、めっちゃ可愛い。餌は何を食べるんだろう?



「巡回、ご苦労さまです」


「こちらの施設では順調に生育しているか?」


「はい。特に問題はありません」



エーツ氏族、本当に【手持ち豚】の管理権限を持ってたわ。



「今日は購入希望者を連れてきた」


「そちらの方ですか。テイマースキルはお持ちでしたか?」


「確か無かったよな? その割に何頭も従魔を保有しているのが不思議だがな」


「そちらは金級従魔でしたか。珍しいカーバンクルを所有しておられる」


「初めまして、ボクはミーシャ=ニイトラックバーグと言います」


「初めまして、私はこの施設長のキートン=パルマと申します。波長の合う子をお探し下さい」


「ありがとうございます。ところでこの【手持ち豚】さん達は何を食べるんですか?」


「雑食ですので何でも食べますよ。一般家庭で飼育されるのであれば、皆さんの召し上がる食事から少し取り分けた物に野菜や野草を追加して頂ければ十分です。あと、少し引き締まった体型に育ちますが、野草クッキーだけでも大丈夫です」


「分かりました。あと、豚さん達が口から煙を出しているのは?」


「あれは【虫来ず草】を食べさせると口から虫除けの煙を吐くのです。食事とは別ですのでオヤツとして与えて下さい。草のままでも固形飼料でも、どちらでも構いませんので」



そう言うと施設長のキートン=パルマさんが【虫来ず草】と【虫来ずクッキー】を手渡してくれた。【虫来ず草】は前世のヨモギだったのは知ってる。と言う事は固形飼料はヨモギクッキーか?



(鑑定)


【虫来ずクッキー】: 前世のヨモギ、【虫来ず草】を練り込んだクッキー。ヨモギの爽やかな草の香りのするクッキー。



あ、【魔増(マゾ)(そう)】を練り込んだ偽抹茶クッキーと違って普通にヨモギクッキーなんだ。安心して食べれるな。


プープー

プキッ

プピッ


豚さん達のオヤツを手にしているせいか、皆が俺に注目している。触れ合い動物コーナに来たみたいだ。



「はい、どうぞ」



寄って来た【手持ち豚】に【虫来ずクッキー】を与える。ついでに俺も味見だ。


うん、爽やかなヨモギ味だ。甘みは殆どしない。小麦の味とヨモギの味のシンプルなクッキーだな。これにバターを入れたら酒のツマミになりそうな気もする。そして草大福が食べたくなった。



プープー プープー

プキプー

プキピプ プー



俺が【虫来ずクッキー】を口にした事で【手持ち豚】達が興奮し始めた。これはアレだよアレ。定番のアレって事だよな?



「ミ、ミーシャ…」


「シンプルですけど、美味しいクッキーですね」


「【虫来ず草】を食べて平気なのかね?」


「あ、大丈夫です」



理解できないって顔のキートン=パルマさんと、又かよ……な顔のジョー=エーツさん。



「煙は吐かねぇよな?」


「無理です」



その後、ザワつく【手持ち豚】達に餌を与えること三十分。白い毛をした可愛い個体が俺の後ろを付いて歩くのに気付いた。

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