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第423話

「そうだ、忘れてた。カーン兄からミーシャ宛に荷物が届いてた。取ってくるから待ってて」



数分後、俺の目の前に提示されたのは【銘菓ヒドラ饅頭】と書かれた二段の箱と【テンガ】と書かれた小箱だった。ヒドラ饅頭は菓子なんだろうなぁ……って予想が付くけど、テンガって何? 響きのせいで前世のナニカを思い出すんだけど、いくらなんでも前世の商品名のソレとは違うよね? 同じだったらセクハラじゃねぇか!! 前世でも頼んでないのに送ってこられたらセクハラ認定されるブツだぞ!!



「あの、これは?」


「カーン兄がミーシャにお土産を買ったみたいだよ」


「これは…お菓子?」


「【ヒドラ饅頭】って、あのヒドラ伝説のヒドラか?」


「カーン兄、何でこれを買ったんだろう? 俺宛ならまだしもミーシャにこれ?」


「ボク、ヒドラ伝説ってよく分からないんですけど…」


「それはだ、酒好きのヒドラが酒をしこたま飲まされて討伐された昔話だな」


「だから下戸の俺に送ってくるならネタ菓子なんだけど、ミーシャ宛でしょ?」


「面白がらせようとしただけかしら? 開けて確認しましょう」



箱を開けると、七房のバナナの形をした饅頭が入っていた。



「これ……」


「これ……が、ヒドラ」


「これがヒドラ饅頭?」


「【甘芭蕉(バ・ナーナ)】ソックリよ」


「ご丁寧に切り分け用の木製ナイフが入ってるな。しかもドラゴンスレイヤーって書かれているんだが」


「これ……」



仕事先で何やってるんだよ!! 全員心の中でツッコミを入れていたのは言うまでもない。



「あの、二箱あるので一箱は三毛皇(みけおう)閣下に退治してもらいません? 三毛皇(みけおう)閣下って面白い物が好きみたいなんです」


「それって大丈夫なの?」


「多分。ボクが勧めたら大丈夫だと思います」


「食うなら一箱あれば十分だしな」


「パパ、私がヒドラを討伐したい」


「いいぞ。それともミーシャが斬りたかったか?」


「いえ、ボクは遠慮しておきます」



ナオ=エーツさんが小さなナイフ型の木片を手にしヒドラ饅頭をカットする。切った断面からは真っ赤なジャムがドロリと流れる。この饅頭、かなり悪趣味だぞ。



「パパ、気持ち悪い」


「無駄にリアルだな。ナオでなくても子供(ガキ)が泣くぞ」


「カーン=エーツさん、趣味悪いですよね」


「それ。カーン兄がモテない理由の一つだよねぇ……」


「いいかナオ、このヒドラ饅頭を買ってきてくれたのがカーンおじさんだ。変なおじさんだろ? いいか、近付くんじゃないぞ」


「はい、パパ、分かった」



味は普通に饅頭というかモッサリしたスポンジケーキというかパンと言うか。中のジャムも甘くなくて残念。ネタ菓子認定だな。菓子と言うよりワインに合わせるパンっぽい何かと言った方が多分正しい。ミケヲさんにはウケそうなので腐らない様に次元収納の魔道具に仕舞っておいてもらおう。



「あの、もう一つの【テンガ】って何でしょう?」


「ん? 【テンガ】は【テンガ】だろ。【テンガ】は便利だから皆けっこう使うんだよ」



だから、響きが嫌なんだってば。



「【テンガ】は強化石の一種だよ」


「あ、鉱石なんだ」


「カーン兄が素直に強化石を送ってくるとは思わないけどねぇ…」



テンガ違いで良かった。箱を開けるとそこには半透明の水色をした三センチ四方で厚みが二センチ程度の鉱石が一つ入っていた。咄嗟に鑑定する。俺、石に対しては反応が早くなった?



(鑑定)

【テンガ】: 天河石(テンガ)。前世のアマゾナイト。天河=天の川ではなくて “ 空と河の様な色 ” をしているので天河石(テンガ)と呼ばれている。緑色の濃い鉱石も存在する。

強化石の場合、心身の強化作用がある。強化修正の入らない物はアクセサリー用に回される。強化石の特性から、告白をサポートする石と呼ばれたり、絆を深める石と呼ばれたりする。


強化値=無し




これ、アマゾナイトか!! 半透明の水色って事は前世だったら少し品質が良い石かな? よく知られているのはエメラルド色っぽい不透明の緑色のアマゾナイトだ。それはパワーストーンとかに回される品質。俺もタマゴ型に研磨した事がある。長石グループなので不透明でもちょっとだけキラキラしたりする。それも手伝ってそれなりに人気のある石だったな。そして補正数値ゼロ。綺麗なだけで強化石ではなかった。



「天と河でテンガなんですね。そして綺麗なだけみたいです」


「そうだな。ただの鉱石だな」


「ん? メモが入ってるな」


「え……、  “ これもアクセサリー用に研磨して欲しい。早うしてなー ” って書いてありますよ」


「これもって、前にアクセサリー用に何か研磨したのか?」


「【黒薔薇】に変化しかけの石を研磨しました」


「じゃあ仕事を押し付けてきたな」


「楽しそうだからやりますよ。石はタダですし、売却益はお小遣いにします」


ムキュウ!


「アンディー、この石だったら作業中に魔力を注いだりしないから大丈夫だよ」


ムキュウ?


「心配性だなぁ…」


ムキュムキュ

(「あたち ちんぱい」)



俺、信用されてねぇ!!

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