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第421話

夫婦喧嘩とも何とも言えないやり取りを傍観するしかなかった訳で。俺のせいです、申し訳ない。



「それで、どういった流れで交渉や報告をしていくんですか?」


「基本は製造ラインを押さえていくところだな。上手く繋げていって、繋がらないところは『スワロー』に集積する」


「そして、『スワロー』郊外を開発する許可をマッキー女史から取り付けてしまえば、そこから先は早いわよ」


「『スワロー』郊外が稼働するまでが大変だがな。今一番大変なのがあちこちの街で活躍している(しょう)鍛冶師達だな。生活品の鍛冶に加えて連日タワシの講習会と製作だからな。タワシの素材集めも大変らしい」


「実はまだ公式発表はされていないのだけれど、近々、亜人・獣人で共同生産をする契約を締結するわよ」


「どうせ売る先はヒト族がメインなのだから、ヒト族以外が連合して共同生産をしてしまおうという流れになった」


「つまり、当初の登録案件でドワーフ皆で儲けようから、亜人・獣人皆で儲けように拡大してって事です?」


「簡単に言ったらそうだな。どうせ手が足りなくなるんだったら最初から巻き込んじまおうって算段だ」


「なかなか凄い話になってるんですね」


「そういう事もあってエーツ氏族が動く訳なの」


「凄いのは俺じゃなくて本家の血筋なんだが」


「そう言われない様にシッカリしてちょうだい。世間的には本家と分家が手を取りあって動く一大プロジェクトだと思われてるんだから」


「しかし、ミーシャをポーター氏族側に取られたのは痛かった」


「そうね、仕方ないわ。ミーシャ=ニイトラックバーグさん、エーツ氏族、しかも本家筋に加わりたかったらいつでも相談して欲しいわ。特典で『エイドパス鉱山』に入り放題、掘り放題になるわよ。それより従名誉猫獣人という肩書きが付いているのは何故かしら?」



久々に聞いたぞ、エーツ氏族加入特典の『エイドパス鉱山』に入り放題権。そして従名誉猫獣人の称号が見られてしまっている事実よ。



「それは……」



従名誉猫獣人の称号を得るまでの経緯をザックリと説明した。目を白黒させながらガックリと肩を落とすジョー=エーツさん。どういうことなのか?



「ああ…、つまり三毛皇(みけおう)様に気に入られ、記憶に残る異世界のアイテムの数々をミーシャに伝えて開発の手掛かりにして欲しいと言うことで良いのか?」


「そうみたいです。面白がってボクにネタ振りをしてくるだけなんだと思いますが」


「何にせよ、異世界由来風の新作が生まれる訳だろ?」


「そうなると思います」


「クソ…、また面倒が増える」


「あらジョー、そこは喜ぶべきところでしょう?」


「カーさん、ミーシャの発案品が増えると言う事はだ、更に根回しやマッキー女史に報告に行く仕事が増えるって事だぞ」


「そうよ。当たり前じゃない」


「カーさんや、俺はナオの事が心配で心配で……」


「あら、どうしてかしら?」


「ナオをカーン兄貴に預けるんだぞ!!」



奥さんに向けて熱烈に娘可愛さのアピールをするジョー=エーツさんの姿がそこにあった。確かにカーン=エーツさんの家に預けっ放しで不安になる気持ちは分かる。


そして悲劇のヒロインことナオ=エーツさんはホークおじさんと仲良くお喋りしていますよ。ホーク=エーツさんって意外にも子供に人気があるんだな。もしかして酒臭くないからとかか?



「カーン義兄さんは少し嫌だわ。そうだ、それならこうしましょう。カーン=エーツをミーシャ=ニイトラックバーグさんの専属商人にしてしまいましょう」


「カーさんでかした!! その手があったか」


「ボクの専属商人ですか?」


「本当に? カーン兄が聞いたら泣くよ」


「だから専任にするのよ」



一職人の専属商人になると、商品の販売から素材の仕入れ、在庫管理に宣伝、売り出し、物によっては季節商品の依頼、注文取りや顧客からの修理依頼を繋いだりといった業務の一切を担当する事になるのだ。製作で忙しい職人の代わりにマネジメント担当って事か?



「それだったら忙し過ぎて家にロクに寄りつけなくなるな。ホークも確かミーシャの専属だったよな?」


「まぁ俺は登録案件処理の専任ってだけだから」


「ホーク、あなたは商業ギルド職員でしょ? とにかくカーン義兄さんに仕事を回してちょうだい。ナオに毒虫を近付けたくないのよ」



カーン=エーツさんが毒虫扱いされてるし。まぁあの(ドワーフ)が悪い虫っぽいのは確かだ。



「いいんじゃない? 振り回される代わりに収入は良くなるもの。俺も休みが変則的になったけど以前よりは働きやすくなったからね」


「そうなんですか? ボク、ホーク=エーツさんにご迷惑をかけてませんか?」


「いきなり発案品が複数件飛び出すのには慌てるけど、他の雑務はしなくて良くなったから仕事自体は前より楽だよ。若干だけど担当マージンも貰えるし」



それを本人の前で言うのかい? どうやら “ マージンありがとう ” という表現は、担当する職人が優秀だという意味の褒め言葉らしい。カーン=エーツさんにとっても期待の新人の専属になる事は商人(あきんど)的には大抜擢された扱いなので口では 「嫌や!!」 と言っても実は喜んでるハズなので俺は気にしなくていいよ、と諭された。



「専属じゃないけどカーン兄はミーシャに振り回されてるよね……。今もバニーで忙しいもの。追加の辻占せんべいで泣いてたよ」


「バニーってヒト族向けの廃物(ウサミミ)活用案のか?」


「それそれ。気付いたら辻占せんべいの提携(コラボ)が増えてた」


「おい待て、それは聞いてなかったぞ」



それから【ハニー・バニー】専用の辻占せんべいの仕様から梱包、中身の印の隠し方から何から説明する事になった訳で…

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