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第418話

収蔵品を堪能。じっくり観察する時間が無いのが残念だ。職校と違って学園は五の日は原則授業はお休みなので、五の日は収蔵品や書物を閲覧したくても許可が出ない。職校も五の日は作業を休んで構わないけど皆休んでいない気がする。四の日や九の日に閲覧するのが一番いいのかなぁ。中途入学のせいで授業が微妙になっちゃってるからな。収蔵品の閲覧は、博物学の自習に加算してくれるとのこと。書物の閲覧は対応する授業の自習扱いだ。自習で得られる補習単位は累積自習数が貯まってから、つまり数年後に効いてくると伝えられた。


収蔵品の閲覧は魔導ガラス越しとはいえ本物を観察出来るのが良い。標本の鑑定も可能なので造詣も深まるし。今度、標本をスケッチしてみようかな。観察日記ならぬ魔導標本観察ノートだ。



学園ってドワーフ以外の種族の生徒いるんだ……。廊下でエルフの生徒とすれ違ったよ。


流石に獣人種は見かけないものの、エルフやヴィーゼ・ラウファーは偶に見かける。妖精種がいるかは不明。基本的にヒト族より寿命が長い種族が学んでいる訳ね。

エルフやダークエルフは学問好き。座学以外、つまり戦闘でもバンバン魔法を利用してくる種族なので学習意欲は貪欲なのだとか。体術を学ぶため冒険者ギルドにも登録しているそうだし。エルフは文武両道の好戦的な種族だった。ただし、魔導機構や魔法陣の開発は得意だけれど魔道具を実際に製造するのは苦手なのでそこはドワーフに丸投げしてくる。


ヴィーゼ・ラウファーは集中力にムラがあるものの魔力値は高い方なので魔法を学びたい者は学園の門戸を叩く。ただ、実践系なので魔道具協会や錬金術ギルドにはほぼ所属していない。魔道具を作ったり開発したりは苦手って事だな。好奇心の強い種族なので魔道具の試運転を頼むと快く引き受けてくれる。逃げ足の速さと解錠能力の高さは有名で、開かずの金庫もヴィーゼ・ラウファーからは裸足で逃げ出すと言われる程だ。目に付いた鍵を勝手に解錠するのもしょっちゅう。ただ、誰かの物を盗み出したいと言う悪意も悪気もない様で、単に何が入っているか気になるので確認したい、解錠に挑戦したいだけらしい。知恵の輪を与えてみたらどうなるのかな? 小柄な身体なので冒険者パーティーだと斥候(スカウト)及び盗賊(シーフ)ポジション。敵から見つからない位置に陣取って飛び道具や魔法を撃ってくる。敵に回したくない種族ナンバーワンだ。



「あら、貴女、珍しいベジタリアンのドワーフなのかしら?」


「えっ、ボクですか? 違いますよ。普通にお肉好きですし」



さっきすれ違ったエルフの学生が俺に声を掛けてきた。俺がベジタリアンって何故だ?



「おかしいわ、野草クッキーの匂いと魔増(マゾ)臭がするのにベジタリアンじゃないなんて……」



マゾ臭って、とっても響きが宜しくないです。誤解を生む響きです。出来れば使わないでいただきたいものよ。



「貴女、見ない顔だけど学園の生徒なのよね?」


「はい。先月から入学しました。職校と学園を行ったり来たりなので先輩がボクに遭遇したのは初めてだと思います」


「あら、向こうにも通っているのね。珍しいわ」



いや、ドワーフ領で学園に通うエルフもそれなりに珍しいと思いますが。それもプラチナブロンドの美少女です。前世で言う所の世界トップレベルのモデルさんにしか見えないし。でも、確実に俺よりも歳上だよね、エルフなんだし。



「先輩はどれぐらい学園で学ばれてるんですか?」


(わたくし)はかれこれ七年くらいかしら。時々里帰りするから授業はそこまで進んでなくてよ」


「そうなんですね。改めてご挨拶させていただきます。ボクはドワーフのミーシャ=ニイトラックバーグです。背中にいるのはボクの従魔のアンディーです」


(わたくし)はエルフでグェン=ヴァン=ネッコですわ」


「もしかして、由緒正しいグェン氏族ですか?」


「由緒正しいかどうかは分からないけれど、古い家ではありますわよ」


「何か違いは有るんですか?」


「そうね…、少しだけしきたりが面倒だとか、ベジタリアンの傾向が強いとかかしら。遠征の途中や戦争中であれば肉も口にはするけれど」


「そうなんですね。グェン先輩、エルフのベジタリアンってどんな植物を召し上がるんですか?」


「珍しくもないわね。【強情菊(ゴンボ)の根】や【マンナ芋】の練り物、【角麦(つのむぎ)】に様々な豆類、穀物は麦の他は【(ミエ)】。様々な山菜や野草、【死神の実】も好むわね。後は、栄養補給で【魔増(マゾ)そう】を口にするわ。【叫ばずマンドラゴラ】も好むわよ」



おお、これぞイメージ=エルフだ。二昔ぐらい前の世代の前世の日本人の食事って感じかな? ゴボウにコンニャク、蕎麦に豆や雑穀、リンゴ。【魔増(マゾ)そう】も食べるんだ……。オデンなんか提供したら食べるのかな?


あ、もしかしなくてもグェン先輩と仲良くなったらエルフ食材を融通して貰えるとかワンチャンあるかな?



「わぁ、凄い!! 美味しそうな野菜や豆類、穀類ばかりですね」


「あら、普通ドワーフはそんな事を言わないものよ」


「ボク、古代エルフに知り合いがいるので野菜の話は色々と聞きました」


「まぁ、酒乱の祖が知り合いにいるのね。相変わらず塩を飲んでいるのかしら?」


「あ、はい。酒も塩も煙草も嗜む方ですよ」


「仕方ないですわ、あれはそう言う種族ですもの。付き合うのは構わないけれど、気を付ける事ですわ」



うわー、エルフ、古代エルフに対しての評価が辛辣だよ。これは敬遠したくなる気持ちも分かる気がする。

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