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第417話

学園で魔法学の教科書を購入する手続きを踏んだ。入学式直後だったら何冊か在庫が残ってるけど、年末が近い時期だとほぼ残っていない。本は手書きで写本するのが基本だけど、ゴーレムによる写本の魔導書記も存在する。ゴーレム写本はコストは掛かるけど原本を丸写し出来るので写し間違えたら困る内容物はこれ一択。魔法学の教科書は勿論ゴーレム写本だ。書物に落書きがされてあると落書きごと丸写しされてしまうので原本の閲覧時は細心の注意が必要だ。なんでも、大昔の転生者の書き残した文章を魔導書記し保存しているとか何とか。ポエム満載・黒歴史ノートやムカつく相手の名前を羅列した死神ノート(偽)なんかだったらどうしよう。身バレはしてないとは言え、俺も気をつけておかないと死後に辱めを受けてしまう可能性大。


写本でも持ち出し可能や販売可能な物はあるので、それらを写本申請して買っておかないと。俺自体はチートスキルで記憶は出来るけど、他人に説明したりする時の事を考えたら資料は手元に持っておきたい。自分で手書きしてもいいけど写し間違いが怖い。


教科書代は授業料に含まれているらしく特に請求はされなかった。有り難いな。個人の所有物になるので書き込みも自由なんだけど、書き込みで汚すのも何だか気が引ける。……って言ってもスライム学の教科書にパラパラ漫画を描き込んだ身としてはそこまで大口は叩けないのだけれども。


そして強化石の合同授業が行われる事が決まったみたいだ。職校で行われる強化石の出張講義が終わったあとに受講希望者を募るのか。強化石って言っても、研磨依頼の発注側と研磨作業の受注側との違いがあるからなぁ。それぞれの意識の差とか感覚の違いを知るのは大事だもんね。面白そうなので絶対受講する。今から受講予約したいぐらいだ。


そうだ、石つながりで従魔石についても調べておかなきゃ。




折角学園に来たので素材保管室を見学させてもらう事にした。ちょっとした博物館並みの収蔵物があるとのこと。オラ、ワクワクすっぞ。案内されたのは意外にも小さな部屋だった。見た目が何だか前世のハイテクお位牌堂っぽい。魔導ガラス製のスクリーン的な板に収蔵物リストと簡単な紹介画像、サムネイルっぽいものが表示されている。手元の切り替えボタンで表示一覧が変わる。すげー、パソコンかスマホの画面みたいだ。ダークエルフで異世界転生者だった大賢者のコマンダー=タスクが伝えた技術なんだとか。コマンダー=タスク、漢字で書いたら駒田(こまだ) (たすく)とかかな? きっと凄腕のSEさんだったに違いない。


ボタンを触ると画面が切り替わる。見たい収蔵物を選び決定するとウィーンという音と共に右側壁面に作り付けされている棚の扉が左右に開き、その中に魔導標本が現れる。大きい収蔵物は反対側の左側壁面から出てくるんだな。


最初に選んでみた収蔵物は【魔増マゾっぽ(そう)】。見てみたかったんだからしょうがない。全草標本なので葉っぱの先から根っこまで完璧。確かに【魔増マゾ(そう)】に似ている。よくよく観察すると葉っぱの葉脈が赤味がかっているとか、茎に細かい毛が生えているとかの違いが認められる。根っこの差異はそもそも【魔増マゾ(そう)】の根っこを見たことがないので分からない。そうか、【魔増マゾ(そう)】の魔導標本も観察すればいいのか。


同時に三点まで魔導標本を取り出して閲覧可能なので、追加で【魔増マゾ(そう)】も閲覧する事にした。


改めてマジマジと見比べると結構な差異が認められるものだな。根っこも違う。と言うより根っこがかなり違う。これは悩んだら根本を掘り起こして根っこを確認すれば良いわけか。ちなみに根っこは【魔増マゾ(そう)】はタンポポみたいに太い根が中心に一本あり、そこから細い根が分岐している。凄く細い根が枝分かれして生えた細ゴボウって感じだ。標本の根っこの長さは三十センチメートルぐらいある。一方、【魔増マゾっぽ(そう)】の根っこは瘤の付いたひげ根だ。いわゆる雑草の根っこといった見た目で所々に瘤が付いている。地上部の草体はかなりソックリなのに根っこは全くの別物だ。これは標本で全草を比較するから分かる訳であって、口伝や書物だけで覚えると、間違って覚えてしまう可能性がある。


ちなみに【魔増マゾっぽ(そう)】の味は青臭いものの本物と比べて苦味は少なく救荒植物として扱われている。味はともかく食えなくはないって事だ。何故【魔増マゾ(そう)】に似ているかというのは植物に聞かないと分からないが、恐らくは動物による食害を防ぐ為ではないかと推測されている。そっくりな見た目を利用してヒト族が囚人の尋問時に【魔増マゾっぽ(そう)】を眼前にチラつかせ、 「これを食いたくなければ真実を話せ」 と脅す時に使われているのだと。


この収蔵システムごと魔導標本が欲しい!! これ、コレクター垂涎のシステムでしょ。本物を劣化させることなく収納場所も取らない。整理整頓も完璧なので標本が迷子になることもない。でも絶対高いよね……。頑張ってお金を稼ごう。


()魔増(マゾ)(そう)】はゴボウっぽい根が二本で【超弩(ちょうど)魔増(マゾ)(そう)】はゴボウっぽい根が三本生えていた。そして両方共に草体が【魔増(マゾ)(そう)】より大きく茎が太かった。葉の味は【()魔増(マゾ)(そう)】が気持ち大味で【超弩(ちょうど)魔増(マゾ)(そう)】の方が苦味が強いらしい。三草ともゴボウみたいな根っこが状態異常薬の材料の一つだった。魔力回復の力が強いのが【魔増(マゾ)(そう)】の葉なので、名前に “ ” の付く二種は魔力回復用と言うより繊維用に利用されているのだった。

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