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第400話

今回は上様こと上位存在の視点の回です

まさか、日本食が奉納されるとは思わなかった。この世界の住民たち、主に多神教を容認している住民たちは信心深く、お祀り事もしてくれればお供えの品を奉納もしてくれる。


それでだよ、日本食大量奉納キターー!! 我と同郷の、つまり元日本人転生者が下界に現れると日本式のお供えが現れる。生玉子やマヨネーズが奉納された時もいたく感動したけど、今回は宴会メニューだよ。忘年会だよ。下界でお供えされた量は微々たる量だが、神界に届くと圧縮データが解凍され、実際に饗されている量が顕現する。とは言え神界は精神世界、出現するのはバーチャルな状態だがね。それでも我ら神々はちゃんと触れる事は出来るし味わう事も出来る。まぁ神の不思議パワーの一環という事で、その辺りのアレコレを突付くのは無しにしてもらいたい。



「あら上様、ご機嫌ね」


「レミ神か。期待の新人がミケヲ君と接触したからな」


「あらあら、それはおめでとうございます。【樹樹菜(じゅじゅな)】好きの子よね?」


「レミ神的にはその感覚か」


「研究熱心な子よ。大胆な料理も繊細な料理もこなせるし。転生者って受け止めれない子も多いけど、あの子は平気そうで何よりだわ」


「まぁ、我の居た国の出身者ならば年齢にもよるだろうが、いきなりの転生にも対応出来そうではあるがね」


「あら、そうなの?」


「宗教感が薄くそれでいて多神教。新しい文化を取り入れては魔改造…いや、原型を留めないまでに改良し昇華させるのが得意だ。何故か物体を極小化させるのが好きだったり、可愛らしいものを愛でるのが好きだったり、歴史上の偉人の性別を逆転させて創作物を書いてみたり、何にでも生命を吹き込んでみたり………」


「特異な民族なのね」


「それこそ奉納された一本【樹樹菜(じゅじゅな)】料理を擬人化して性格付けする様な民族だ」


「まぁ、素敵ね」


「今日の良き日に乾杯しようではないか。我には懐かしいが皆には新しい料理だ。神界全域に届けよう」



各地の住民たちから奉納された品の数々を分配するのならばさほど神力を使わなくても済むのだが、今回の様に限定的に奉納された品を複製し分配するのにはいささか神力を消費する。それでも故郷の味を皆に体験させたい気持ちの方が強いのだが。



「ウェ〜イ上様、飲んでる〜?」


「皆に配ってからだな」



反応が早いのは酒神。他にも火の神や風の神などはせっかちだ。我が任命しなくとも下界で祭り上げられると神格が生じ、新しい神が生まれたりもするのだ。神として司るカテゴリーが細かすぎると統合したりグループ化したりするが。先日もタイヤの神という者を生み出そうとしていたので車輪の神の異姿にし、更に馬車の神に統合しておいた。将来的には車の神、いや乗り物の神に格上げされるであろう。


神々の担当業務変更は珍しい事ではない。最近では戦神トオルが武術を司る神状態だ。種族間で小競り合いはあるものの大きな戦争も無いし、武力行使と言っても冒険者や兵士が野獣や魔獣を狩る、野盗や悪漢共から街や住民を護る程度。戦勝祈願より武芸の上達や防衛祈願される方が多くなってきている。今の戦神トオルが振るうのは奪う為の力ではなく護る為の力なのだ。



「そのうち武具の神になりそうだな」


原因は武具を作っては奉納するドワーフのせいなのだが。戦はなくとも鍛冶師は仕事をする訳であって、彼らが出来の良い業物を奉納するとトオル神に届いてしまうからな。


最初に鐘が届いた時は仰天したそうだが、最近では鎧の亜種であると認識したらしい。



「上様、この程ドワーフから但し書きと共に斯様な武器が奉納されました。見たことも無い武器です」


「どれ……」



見れば輪ゴムだ。どう見ても輪ゴム。添えられた但し書きには


「戦神・トオル神へ


この程新しく完成した【伸縮(エラス)(・リング)】を奉納致します。これは使い方を誤ると大変に危険な武器となってしまいます。現状では防止策は取りましたがいつ解除してしまう者が現れるか分かりません。『ハポン=ヤポン』の平和の為にもトオル神のお力をお借りしたく存じ上げます。


この武器は打ち出す武器であり、スリングの様に引き伸ばす部分にも使えれば、この

伸縮(エラス)(・リング)】自体を射出する事も可能です。物理攻撃である為、魔法を乗せることが出来ます。この武器が悪用されない為にもトオル神にお届けいたします」


と書いてあった。確かに輪ゴムに魔法を乗せたら銃火器だな。



「確かに使い方を誤れば大変な事になる武器だ。我々神がこの武器が下界で悪用されぬ様に気を配る必要があるだろう」


「そこまで神経質にならなくてもよいのでは? 所詮は使う者の意識次第ではないか?」


「それはそうだが、使い方を誤ると下界の者が全滅するやもしれぬからな。我々を祀ってくれる者が消えてしまえば困るであろう?」


「それもそうか。勝手に作って押し付けられた感は否めないが仕方あるまい。それも転生者の差し金か? 勝手に作っておいて迷惑千万よ」


「いや、作ったのは転生者ではないな。むしろ危険性を指摘してくれた」


「何と。この世界に無いものを生み出しては撒き散らし、迷惑をかけるのが転生者なのだとばかり思っていたが違うのか」



それは否定出来ないな。彼らも悪気が有るわけでは無いのだ。昔の記憶がある故に快適さを満たしたくて、この世界にとってのオーバーテクノロジーを生み出してしまうのだから。



「我も神界に居なければ同じ事をしていただろうよ」


「上様もか。ならば諦めよう」


「それはそうとトオル神、今宵はお供え物の料理が沢山届いているのだがね。我にとっては懐かしい品だらけだ」


「ほう、上様の前世の世界の料理と言う訳か。美味いのか?」


「美味いぞ」



さて、前世の料理をプレゼンしようではないか。



「上様、この串刺しの肉は美味いな。首級(しるし)焼きか?」


「いや、ネギマの焼き鳥だ。ネギと鶏肉を交互に刺して焼いた物だ。これの盛り合わせは宴会の鉄板メニューだ」


「これは? クラーケンの子供か?」


「ぷっ……、タコさんウインナーがイカになってる。それはソーセージの飾り切りだな」


「美味い、美味いな。上様は此処に来る前は何時もこの様な品を食されていたのか?」


「毎日ではないが……いや、一品二品は食べていたか。特に珍しくもなければ上品な料理でもないからな」


「そうなのか。つまり、あの猫人もドワーフも?」


「だろうな。彼らの中身は中年男性だから間違いなかろうよ」


「これはいつでも奉納してもらいたいものだな」


「そのためにも『ハポン=ヤポン』中に広めてもらわなくてはいけない。国中に広まれば常に民衆から神に向けて届くだろう」


「上様、神託だ。美味かったと伝えてくれ」



仕方ない。どれ、礼文をしたためるとするか……かと言え、お供え物が美味かったとは露骨には書けぬしな。


[ 馬勝った 牛負けた  (by.上) ]


これで伝わるか?

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