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第399話

魚の形の醤油入れを目の当たりにして固まるミケヲさん。よりによって赤いキャップまで付いてるからな。



「この様な豆が生えてるのか」


「自然の神秘としか言い表せません。この魚の形の容器は豆の鞘でして、中身を使い終わった後に鞘を浄化すればポーション瓶の代わりになるのです」


「神の戯れとしか言い表せぬな」


「はい。ボクもそう思います」



上位存在が後々転生してくるであろう元日本人に気を遣ったか、はたまた(からか)いたかっただけなのかは謎だが。


唐揚げとフライドポテトを揚げる。櫛切りにした【リモー】を添える。レモンを掛ける掛けないという単純にして根の深い争いは今回は勃発するのだろうか?



「今日はソーセージを意匠を凝らした形に仕上げようと思います。今から焼いていきますが、面白いと思うので見ていて下さい。このソーセージはあらかじめ茹でてあります。先ずは中央で二つに切り分けます。切った側でない端の方に切れ込みを二箇所、矢印の様に入れます。断面側は三サンチミートル程度の長さで縦方向に切れ込みを入れます。ソーセージの太さにもよりますが、四つ割りか六つ割りにすると仕上がりが綺麗です」


「飾り切りじゃな」


「はい。それでは熱したフライパンに油を敷き、ソーセージを炒めていきます」



ジュウジュウと音を立てながらソーセージに火が入ってゆく。次第に切れ目が広がっていき、矢印は開き縦に入れた切れ目はクルンと反り返る。タコさんウインナーならぬイカさんウインナーだ。まぁ異世界だからイカと言ってもクラーケンなんだろうけど。



「飾り切りを入れたらソーセージが別物の姿に変化しましたね」


「はい。イカっぽくしてみました」


「イカか。これまた随分と可愛らしいクラーケンだ」


「商業ギルド支部長、これは初じゃ……ぞ」


「流石はミーシャ=ニイトラックバーグバーグ、三毛皇(みけおう)様の前で新案を披露するとは」


「そうなのか?」


「クラーケンの(トリコーン)が無ければ【プルモニア】の花に似ておるのう」


「して、この料理名は?」


「えっ、クラーケン焼きだと完全に勘違いされちゃいますし、クラーケンソーセージも勘違いされそうですよね」


「ミーシャ、何も考えておらんかったのじゃな」


「はい……」


「ならば吾輩の意見なのだがね、ソーセージに突き刺すピックを槍型や剣型にしてみてだ、【クラーケン・スレイヤー】や【クラーケン討伐部隊】といった名前にしてみたらどうだろうか?」


「よいですな。三毛皇(みけおう)様が命名されたとなると人気が出そうです」


「面白い、実に面白い。吾輩、ミーシャ=ニイトラックバーグをいたく気に入った。実は吾輩、今日の来訪前に考えていたのだがね、ミーシャ=ニイトラックバーグに従名誉猫獣人の称号を与えようと思ったのだよ」


三毛皇(みけおう)閣下、なんですと!!」


「いや、名誉猫獣人の養子に従名誉猫獣人の称号を与えても何の問題もなかろう?」


「確かに名誉職ですからのう」



来たよ、従名誉猫獣人の称号。まさかこのタイミングでぶち込んでくるか。昨夜の茶室ではノリに押されて手拍子で了承してしまったが、この状況下ではどう足掻いても拒否出来ねぇわな。



「ぼっ、ボクにですか? 恐れ多くてどうしたらよいのか分かりません」


「受けてはくれぬのか?」


「でも……ボク………」


「何を躊躇する必要があるのかね?」


「そうじゃよ」



うわ〜、異世界だと奥ゆかしく何回かイエス/ノーの遣り取りの応酬はしないのか。転生者の先輩、しかも為政者には遣り取りで勝てる気がしねぇし。



「ありがとうございます。謹んでお受けいたします。従名誉猫獣人の名を汚さぬ様、創意工夫の精神で精進いたします」



大関昇進の伝達の使者に挨拶する様な口上になってしまった!! それも四文字熟語を入れる部屋っぽい。 そう言えば前世では一時期、大関/横綱の昇進時に不を入れた四文字熟語で挨拶するのって流行ったよなあ。流石に不眠不休とか不平不満とか不老不死とかは使われていなかったけど。



「それでは商業ギルド『スワロー』支部長、今現在をもってミーシャ=ニイトラックバーグは従名誉猫獣人となった。これは終身称号である」


「格別のご配慮ありがとうございます。そうだ、馬車ギルドとポーター氏族にも連絡をせねばいけませんな」


「そうじゃな」


「それはそうと、折角の料理が冷めてしまいます。三毛皇(みけおう)様に乾杯しましょう。それではパイク=ラック、冷やしエールの方をお願いしたい」


「あれか、魚醤の素材を川から冷やして持ち帰る魔法か」


「そうですのじゃ。ミーシャに会ってからは魚ではなくエールばかり冷やされましたがのう」


「それほどにか?」


三毛皇(みけおう)閣下、儂はこの歳で総魔力量が増えたのじゃよ」



パイクお義祖父さまの総魔力量が増えたネタなんだけど、自慢話なのか自虐ネタなのか……。自虐だとしたら、流石は『魔増(マゾ)(ひずむ)』孫の居る老ドワーフ(おじいちゃん)って事なのか?



神様のお供え用に少しずつ料理を取り分ける。竈神キャシーには勿論だけど、今回は上様こと上位存在に届けたい。ブロッコリーが無いので地母神レミ様にはイカさんウインナーだな。


先程、部屋の確認をしたネロさんとは別の白猫の人、キャンパさんが毒味係。鑑定後、実食して安全が確認された。極稀に特定の種族にのみ働く毒物が存在するので実地検証は重要。


三毛皇(みけおう)さんの宣言した 「ヒゲの健康と繁栄に乾杯」 という謎の音頭と共に小宴会が始まった。 「くぅ〜〜っっ」 「美味いのぅ……」 と言う声と共に一気に飲み干されたジョッキに追加のエールが注がれる。見ればミケヲさんはまだ飲み干してない。おいおいドワーフ空気読めよ……である。

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