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第394話

ミケヲさんが猫獣人を選んだのは昔の飼い主に会った時の事を考えていたからだとの事。もし飼い主さんがこの世界に転生してきた時に一目で分かる様に、前世の特徴そのままに猫獣人として生きることを決めたのだ……と。



「吾輩、まだナツメグの事を諦めていないからな……」


「会えるといいですね」



それ以上は聞けなかった。



「それはそうとミーシャ君は名誉猫獣人の称号に興味はないかね?」


「パイクお義祖父さまの称号ですよね?」


「君にも渡してもいいのだがね」


「いやいやいやいや、けっこうです」


「貢物の数々もあるしだ、従名誉猫獣人ぐらいは推薦出来るが」


「何故です?」


「吾輩と面会しやすくなるから」


「それだけですか?」


「後は貢物がノーマークになる。流石に食べ物は鑑定されるがね」


「なら別に称号は不要では? 俺がプレゼントするのって黄金色の菓子、つまり食べ物がメインですよ」


「君の保証人が名誉猫獣人パイク=ラックだ。それも庇護養親。ドワーフ間での認識は知らぬが猫獣人間では普通に養子扱いなのだ。名誉猫獣人は一代名称だが、家族が個別に取得するのに制限はないからな」


「でもいいです。貴族みたいな称号はお断りしようと決めてまして」


「あ、それ貴族とかじゃないから。猫獣人の特権が解放されるだけだからな」


「どうせ変な特権なんじゃないですか? あ、どうせ発言は失礼でした。謝罪します」



偉い人なのを忘れてついついタメ口というか失言してしまった。



「夜目が利きやすくなるとか、ヒゲで感知しやすくなるとか、後は転送陣で転送酔いしなくなるとか」


「転送陣の酔い止めは便利そうですけど」


「おや、ヒゲスキルに興味が無いと」


「そもそも俺の髭は猫ヒゲと違いますよ。まだ浮かせられないですし」


「ドワーフってヒゲが浮くのか?」


「浮くらしいです。風呂で役立つスキルですよ」



プッ… ミケヲさんが吹き出した。まぁドワーフ以外には不要というか必要な理由が理解し難いわな。



「何でまたヒゲを浮かせる訳?」


「そりゃあ風呂で髭がお湯に浸からない為ですよ」


「風呂!! いいなぁ風呂!!」


「猫獣人は風呂嫌いですか?」


「拒絶はされぬが好みもしないな。吾輩は風呂好きだがね」


「日本人的にはそうですよね」


「ドワーフは風呂好きだと聞くが」


「ええ。作業で汚れる事が多いので想像以上に風呂好きです。公衆浴場だけでなく個人宅にも風呂が有りましたよ」


「日本人かよ」


「俺としては有り難いですがね。そこで風呂の湯に髭を浸けない為のスキルが有るそうです」


「そうですとは?」


「数え切れない量の髭を浮かせるスキルや魔法が有るらしくて……」


「ホンマかいな、なんでやねん!!」


「おや、ミケヲさんは関西出身でしたか?」


「いや、違うな。ツッコミするなら関西弁の方がいいのかな…なだけだ」


「関西弁といえば、この世界の商人言葉って関西弁に聞こえますよね?」


「それは…ほら、上様の趣味の設定だから……」



何しとんねん上位存在!!



「そうだ、ミケヲさんも言語スキルは取得されてるんですよね?」


「そこは転生ネタの基本だからな。それだけは死守しとけって知識はラノベやアニメで得ていたね」


「ですよねー。あ、昆布の件で古代エルフと会話した事は有るんですよね」


「あれは難解だった。無意識に聞くだけだと翻訳されないとは」


「俺、知り合いに古代エルフがいますよ。死者の声を聞けるらしいです。酒癖がアレですけど今度紹介しましょうか?」


「転生者ではないのだよね?」


「はい。ただ、スキルで俺の魂が転生していることは見られています。転生の痕跡が他者から見えない様に封印してもらいましたよ」


「そのうち頼むかもしれんな」



それはきっとナツメグさんに関わる話を聞くんだろう。



「今回は非公式訪問というか、フライング訪問だからノーカウントになる訳だが、後日正式に面会というか謁見の場を設けるので宜しく頼むよ」


「え〜〜どうしてもですか?」


「吾輩、悪いようにはしないよ」


「ミケヲさんと言うか、三毛皇(みけおう)様は転生者である…と言うのは公式情報に上がっているんですか?」


「獣人界では公式見解だよ。ヒト族はどう思っているか分からないが。亜人的には何か聞いているかね?」


「配送便を考案した猫の人が転生者、と言う認識ですかね。一応は知られているかと」


「なら大丈夫か」


「大丈夫って何がです?」


「吾輩、ミーシャ君のパトロンになろうと思うのだよ。ミーシャ君には吾輩が前世の知識をポロッと話したらそれを元に新たなる道具や料理を考案する係を任命したくてね。駄目かね?」


「メリットは?」


「吾輩は懐かしい品物を手に出来る。ミーシャ君は前世の知識持ちがバレない。どうせ道具の発注は他のドワーフだろ?」


「いいんですか?」


「タワシ、ピーラー、ぶん回しチョッパー、よく転生者バレしなかったね」


「あ……はい。運が良かったとしか、ですね」



コンロとかホットプレートとかパラパラ漫画とか、食べ物だとウナギの蒲焼きとか片思いの辻占せんべいとか、もっとネタバレしたらヤバイ物を発案してしまいましたが……。



「その前世ネタを耳打ちするという設定の為にも従名誉猫獣人の称号が必要なのだよ。明日、請けてくれるかなー?」


「いいともー!!」


「ヨッシャーー!!」


「あっーー!! ついお昼の番組のノリで答えてしまった!!」



クソッ、一本取られた。あの明るいノリであんな風に聞かれたら、ああ答えるに決まってるって。

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