表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

395/467

第393話

ビックリし過ぎでポカ〜ンとしていた俺にミケヲさんが苦笑いしている。



「ドワーフもフレーメン顔するんだ」


「ちっ、違います」


「まずはお礼からしなくては。いやー、菓子類が美味かった!! 越後屋、お主もワルよのう」


「いえいえ、お代官様には敵いません」


「これだよ、これこれ。吾輩ね、こう言うのがやりたかったんだよ」



うん、それは分かる。ついでに言うと帯クルクルこと 「よいではないか、よいではないか」からの 「あーれー」 も、そこに痺れる憧れる。



「それで、どこから話そうか?」


「衝撃すぎて俺の中では聞きたい事が全部ブッ飛びましたよ」


「そうだな、少しずついくか。そもそもミーシャ君は転生してきてからどれ位経つのかね?」


「俺ですか? 多分、三ヶ月いってるか、いってないかですね」


「短っっ!!」


「そう言うミケヲさんは?」


「吾輩は十五年程だな。ピチピチの三十五歳だ」


「俺はピッチピチの四十歳ですね」


「負けたの!? 吾輩ポッと出に負けた!?」


「そこはドワーフなので、人間…ヒト族換算なら十四歳ぐらいです」


「吾輩はヒト族なら三十歳ぐらいだな」



猫獣人の寿命はヒト族より同じか少し長く、長生きしても百二十歳ぐらいまでだ。



「それよりミケヲさんって黒猫族って本当ですか?」


「そう。吾輩は黒猫族である」


「確かに体毛部分は黒いですけど…、でも何で三毛なんですか? ミケって普通だったら三毛猫に付ける名前ですよね」


「それはだな、吾輩の尻尾がほれ、この通り三毛だからだな。三毛の尻尾で三毛尾(みけを)という訳だね」



そう言ってミケヲさんが差し出してきた尻尾は確かに三毛だった。



「よりによってそこだけ三毛なんですね」


「まぁ、この尻尾のせいで苦労もしたが、いい事もあったよ」


「尾、 “ お ” じゃなくて “ を ” なんですね」


「飼い主が当時、アニメキャラのシン=ジロヲ君に嵌ってたからな……」


「吸血鬼化した兄のジロヲが妹を……の鬱アニメですよね? 土砂崩れの描写が生々しすぎて放送延期からの打ち切りになった」


「そう…だな」



そう語るミケヲさんはどこか遠い目をしていて、俺としては反射的にこれはこれ以上触れちゃいけない話なんだろうと察した訳だ。




「ところで話は変わりますが、黒猫族であの格好の配送便って元ネタは某企業AさんとBさんですよね?」


「まぁ、日本人転生者が居たなら分かってくれると信じて作ってしまったのだよ」


「便利ですよね。どうやって妖精を説得して力を得たんですか?」


「それはだ、吾輩、昆布を献上した」


「昆布……?」


「吾輩、黒くて長いリボンが昆布以外に思い浮かばなかった。昆布を入手するのには苦労したんだぞ。海獣獣人や古代エルフと交渉して……」


「まぁ、どうにかこうにか妖精の心を刺激した訳ですね」


「うむ。どうやら昆布由来の塩とミネラルが妖精には刺激的だったらしくてね」



まさかの昆布。そうだ、昆布と言えば古代エルフの特大醤油入れだ。ミケヲさんに魚の形の醤油を知っているか聞かないと。



「ミケヲさんは魚の形の醤油入れがあるって知ってました?」


「いや吾輩は知らないね。……って有るのか?」


「完熟した豆が液体化したものです。自生してます」


「おいおいおいおい、醤油がか!?」


「今『次元収納(インベントリ)』から出します……って出ない!!」


「そりゃそうだ。ここは精神世界だからな。物理的な物は持ち込めないぞ」


「今度お見せしますよ。マジで醤油です」


「それでみたらし団子のタレ…と」


「はい」


「もうね、吾輩、久々に和菓子を食べた訳なのよ。出来れば緑茶も欲しかった」


「緑茶は見つかっていませんが、似たような味わいの抹茶風味のドリンクは見つけましたよ」


「是非!! 今度是非!!」



それ、【魔増(マゾ)(ひずむ)ジュース】って言うんですけどね。




「いやー、吾輩、日本語で話すのは四半世紀振りくらいだね」


「そんなに…って、猫時代があるからですか」


「そうそう。思考は日本語で出来たが口から出る声はニャアニャアとしかならぬので。いや、意外と覚えてるものだな。チョベリバー、とか、ガチョ~ンとか」


「いや、それ……死語です」


「死語……だと!?」


「○○○とか、◇◯●#ー!!とか、☆ッッッ$とか、凸凹%〒とか……」


「その時代の一発ギャグです」


「ショック。吾輩ショック。ショック三倍返しだ!!」


「それはちょっと懐かしいです。懐かしいと言えば、俺この前 「反省」 ってネタを流行らせました」


「おいおい、 「反省」 って猿のやつだろ? ミーシャ君ってそこの世代?」


「いえ、懐かしいCM番組で見ました」


「あ……前世は吾輩より確実に若者だね」


「それより、パイク義お祖父さまに猫ちぐらを発注した時に、棺桶にもなる物を…って言ってませんでした? ミケヲさんってどう見ても棺桶要らなさそうですよね?」


「あ、その時は吾輩は死ぬかと思ったのだよ」


「俺、高齢の猫獣人トップからの依頼かと思いましたからね」


「あの時は吾輩、五人の妃達にいいようにされていたのでなぁ…」


「もしかして、お世継ぎ問題とかです?」


「まぁ、上に立つ者には責任やら繁栄やらが押し付けられるものという事だ」



やっぱり婚姻って面倒くさいわ。って言うか組織のトップに収まるのが面倒くさい事になるってね。



「そもそもミーシャ君がドワーフのレディ姿を選んだ理由は?」


「あ、前世の諸々を再現したら悪目立ちしちゃうじゃないですか。その時にヒト族だったら貴族にさせられたり政略結婚に巻き込まれたり、大抵そうなりますよね?」


「なるな」


「なので、女性ドワーフにしたんです。ヒゲ娘を愛でるヒト族男性は居ないだろう…という妄想前提で。俺はノー婚姻でいきますから」


「成る程。ミーシャ君はヒゲとボインを目指すと……」


「何ですか、それ?」


「あ、気にしないでくれたまえ。忘れてくれて構わんよ」


「それに、白い部屋でのスキル獲得の為のポイント捻出で年齢を嵩上げするのに種族寿命を利用したかったし」


「あそこは、騙された。今からでも変更したいスキルがあるだろ?」


「ありますね。使えなくはないけどコレ要らんかったな…ってスキルが」


「あるある」



良かった。そこは俺だけ感じてる問題ではなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ