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第383話

テンションの上がったハーレー=ポーターさんが落ち着くのを待ってホットプレートの話をすることにした。フィオナお義祖母さまが開発をハーレー=ポーターさんに丸投げ…いや委託したのだ。ある程度の情報は行っているだろうけど説明しないとちゃんと伝わらなさそう。



「そしてハーレー先輩、恒温調理板はそのコンパクト炉の派生です」


「あぁ、もう、わたしを更にクラクラさせてくれるのぉ〜?」


「派生と言いましたが、もしかしたら全くの別物かもしれません。何せ……」


「別物ぉ?」


「はい。卓上調理器具という点では同じかもしれませんが、恒温調理板は加熱時に炎を出しません」


「おわっ、加熱なのに火を出さないのかぁ〜。いいねぇ〜、その挑戦。煮炊きするのに火を使わない。魔道具開発者的にはたまらないなあ。ねぇ、この恒温調理板ってねえ、フィオナお祖母ちゃんがわたしにって譲ってくれたんだよお。孫の合作だよお、合作!!」


「ポーター先輩、落ち着いて下さい!! 恒温調理板は逃げませんから!!」


「え〜、逃げるよぉ〜」


「落ち着いて下さい。紅茶でも飲みます? 何なら塩と【リモー】の、絞り汁とハチミツでも加えましょう」


「ここには気の利いたドリンクなんて無いんだよねえ。有るのは冷えた水くらいかなぁ〜」


「仕方ない、ハーレー先輩、その冷えたお水を出して下さい」



ハーレー=ポーターさんは保冷庫からポーション瓶に詰めた冷えた水を取り出した。サッと鑑定してみたけど、ポーション瓶が御大層に見えるだけで中身は本当にただの水だった。そこに『キーボックス』から取り出した【鉱夫飴】を添える。



「ハーレー先輩、飴を食べてお水を飲んでください」



ハーレー=ポーターさんは飴を食べた。効果はてきめんだ。



「ふぅ〜。これ、飴ぇ? 飴(あめ)ぇ〜」



プッ… ふふ… アハハハ……


素直な感想なんだろうけど、単に下らないオヤジギャグにしか聞こえない訳で……。それでも肩の力は抜けるし興奮した頭も冷える。オヤジギャグは冷却魔法とはよく言ったものだ。


オヤジギャグって並列思考が生えて、行動不能(スタン)沈黙(サイレント)範囲冷却(エリアフリーズ)が発生するんだぞ。通じればだけど。異世界転生者、謎のスキル『オヤジギャグ』で追放される。こんな異世界転生は嫌だ!!



{ ―― ミーシャさん、上申しておきますね ―― }



ヤーデさん、止めて!!



「ねえ、この飴って白い粉だよねぇ」


「えっ、なんの事ですか?」


「あ、隠さなくていいよぉ〜。ミーシャってさぁ、今回の大会議の影の主役でしょお? あ、ナナシーさんだったぁ〜」



あ…バレてるわ。



「あ、まぁ…はい、ボクです」


「今回の大会議、【履筒(タイヤ)】が目玉商品だったのにぃ〜、ポッと出の出自も謎のドワーフに大量登録されて話題が喰われちゃったあ。アハハハ。これだからドワーフはやめられないよねぇ〜〜」


「ボクもよく分からないままあんな事に……」


「気にしなくていいんじゃない? 【伸縮環(エラス・リング)】の不備の指摘をしたのもミーシャもなんでしょお?」


「あ…、はい。指で弾いたら偶々です」


「不備のあるまま販売しなくて良かったってストーン氏族は喜んでたよぉ〜。それを指摘したのが大量登録の謎のドワーフと同一人物だったからぁ〜、大会議の事も納得したみたいだしぃ〜〜」


「そうなんですね」


「そうそう。ポーター氏族も喜んでるからねぇ〜。多分、いつでも本家筋に養子に入れるんじゃない?」


「けっこうです」


「うんうん。ポーター氏族になんかなっちゃ駄目ぇ〜。結婚しろって五月蝿いウザイ」


「それは嫌ですね」


「分かるぅ? わたしも早く結婚しろって言われなくなりたくてぇ〜、ミーシャのお陰でそれが確定しそうでぇ〜す」


「ボクが?」


「パラパラポンチ絵機構が完成した暁には、わたしを婚姻では縛り付けられないってポーター氏族も諦めるよぉ〜。嬉しいミーシャありがとう」



あー、そういう事か。良くも悪くも俺由来の登録諸々が複雑に絡み合ってしまってるよ。そしてハーレー=ポーターさんは思っていたより普通だった。



「ボク、最初はハーレー先輩って近寄りがたい方なのかと思ってたんですけど、こうやってお話ししてみると案外普通だなぁ…って」


「本当に? わたし良く変態って言われるよお。変態が平気なのは変態だけだよお?  ミーシャもだいぶ変態だよねぇ〜」


「違いますよ。ボクはハーレー先輩と違いますから」


「わーい、変態ぃ〜〜」


「ハーレー先輩、変態って言う(ドワーフ)が変態なんですよ」


「変態ナカーマ」


「ハーレー先輩、充分休憩できましたよね? 恒温調理板の話に戻りましょう」


「そうだったあ」



仲良くしなくていいけれど、何か開発してもらう事を考えたら懇意にしておいた方がいい(ドワーフ)な事だけは確かだ。



「それで、火を使わない調理器具なんです」


「保温の魔道具と同じ系列かなぁ?」


「でも、温度はお湯が沸騰するくらいと、蝋が溶け続けているくらいの二種類が欲しいです」


「おわ〜、それは結構ハードだなあ」


「それで、コンパクト炉と同じでオン・オフを付けて、調理板は鉄板か硬質陶板を希望です」


「結構面倒くさいねぇ」


「そして調理板の部分を鍋状にした物を作れば、揚げ物料理用や蝋引き用の道具に転用出来ます」


「つまり、この研究室で【茄子花芋】を揚げて食べられるう〜〜」


「ハーレー先輩、そこの保冷庫に冷やしエールを入れておけば一人(ソロ)でパーティーが出来ますよ」


「魔導回路的にはそこまで難しくも…いや、恒温だと過熱防止が要るしなぁ〜。ぐふふ楽しい」



俺はまたもマッドサイエンティストモードに入り込んだハーレー=ポーターさんを生暖か〜く見守るしかなかった。




「よしっ、明日から本気だすよお。そうそうミーシャ、学生証を出してよ。ミーシャも特殊仕様だよねえ」


「えっ、はい」


「これをこの扉の認証機に通せばぁ〜、二人だけの世界ぃぃ〜」


「ハーレー先輩、何を!?」


「はぁい、これで扉の認証機に学生証を通せばミーシャもこの研究室に入室がフリーダムだよお」



便利なのか、ありがた迷惑なのか……はぁ。

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