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第376話

「それでリンド、今回は片刃の斧を何本か作ってもらいたいんだけど」


「何本も必要なのか?」


「斧の大きさと柄の長さを色々試したくて」


「今になって戦闘スタイルを変えるのは大変だからな。俺でよければ協力する」


「試作は鉄でいいよ」


「微妙に重さの違う斧頭を複数打つのは面倒なんだが」


「アレを付ければいけない?」


「アレってアレか?」


「『鉛錘(レッドバランサー)』。一応付くよね」


「推奨しないが」


「『軟白鉄(ホワイトメタル)』は?」


「いや、それなら斧頭を何個か作った方がいい。錫や鉛で調整とか普通斧ではやらないんだがな」



会話が読めない、と言うか全くの謎です。



「普段は右手で振り回して、場合によっては両手でスイングしたい」


「斧はバスタードソードじゃないんだが……って、 “ 裏 ” を取るのか?」


「大物狩りをしないなら “ 裏 ” の方がいいだろうって『旋斧鬼(せんぷうき)』のザン=ライズ氏に言われました」


「 “ 裏 ” か……。だったら素直に鉄とミスリルの合金にアダマンタイト含有鉄を重ね合わせて鍛えた物がいいだろ?」


「多分ね。いいの?」


「そのあたりの合金はオロール女史のトマホークにも使うからな。俺としてはアリサの斧で先に試したい」


「じゃあ頼もう。代金は引き落としで」



夫婦間でも制作費は発生するんだな。親しき仲にも工賃ありか。聞いてただけでも素材代が高そうなのは分かるから、そこは請求されて当然か。



「あの、その工法って地金を重ねて鍛える式ですか?」


「ミーシャ、よく知ってたな。俗に言うメタルサンド工法だ。正式にはカップリング工法だな。これの偽物や偽物を取引する輩は『騙すカス』と言われている」



ちょっと違う気もするけど、玉鋼を折り鍛えて日本刀を打つやり方の派生っぽいんだよなぁ。どちらかと言えばダマスカス鋼か? …って、偽物が『騙すカス』なのかよ。紛らわしいな。



「違う金属同士で馴染むものですか?」


「馴染むぞ。というか馴染ませるからな。そこは魔法陣の一種を使えばいい」


「魔法陣ですか?」


「圧着系の魔法陣だ。カップリング工法は大昔に異世界からやってきた転生者が伝えたらしい」


「らしいって言うのは?」


「文字通りだぞ。その昔、『砂の魔女(サンド・ウィッチ)』が伝承したらしい」


「『砂の魔女(サンド・ウィッチ)』ですか?」


「『砂の魔女(サンド・ウィッチ)』は砂鉄をインゴットに変えたと言われている。伝説の魔女だ」



砂の魔女(サンド・ウィッチ)』タタラは砂鉄をインゴットに変えた。人々は砂金はインゴット化する事が出来たが、砂鉄を鉄の塊には出来なかったのだ。タタラは転生者であり、砂鉄をインゴット化しただけでなく、異なる金属同士を重ね合わせて鍛えるカップリング工法を伝えた。現代では圧着系の魔法陣を用いて金属を重ね合わせるが、タタラは重ねる金属を左側に、重ねられる金属を右側に置きカップリングしたというのだ。タタラ曰く、「妄想すればいい。いかなる物質も掛け算でカップリング出来る」が口癖だったそうだ。その技は失われており、現代では圧着系の魔法陣に頼るしかないのが残念なところである。


カップリングとか掛け算するとか『砂の魔女(サンド・ウィッチ)』タタラってもしや腐女子か!?



「それで、ミーシャちゃんにお願いしたい事があるんだ。」


「ボクにですか?」


「バトルアックスに攻撃力upの宝石を装着してみたくてね。その宝石の原石をミーシャちゃんに研磨してもらいたいんだ」



おおっ!! 流石は異世界。アンディーの【カーバンクル石(カーバンクライト)】だけでなく、その様な効果を持つ宝石が普通に存在してるよ。



「どんな宝石なんですか?」


「攻撃力upだと有名なのは【血肉石(コルネリア)】かな。基本、赤系の色宝石は攻撃力が上がる物が多いよ」


「そうなんですね」


「ミーシャちゃんは研磨は得意だけど、そっちの勉強はまだまだなのか」


「はは…。これから頑張ります」


「期待してるからね」



これはオロール先生のトマホーク用に付ける【カーバンクル石(カーバンクライト)】の練習にもなるぞ。



「リンドも斧頭に直付けは初めてだよね?」


「ああ。前から試してみたかった」


「そういった宝石を装着した武器は有りますよね?」


「普通は柄頭や鍔に付けるからな。斧頭や刀身に直付けは滅多にしないという事なんだが、まぁ、無いと言うわけでも無い」


「難しそうですし」


「さっきのカップリング工法と同じ技術を使うハズだ。学園に習いに行かないとな」


「あ、リンド=バーグさんが聴講するって言ってたのはもしかしてそれですか?」


「そういう事だ」



カップリング工法、もしかして宝石同士も合体出来るんじゃないか? 前世で言ったらダブレットとかトリプレットと言う技法だな。モース硬度の低い柔らかな宝石を水晶でカバーしたり、ターコイズの底面に樹脂を足して高さを出したりするのが有名だ。



「ん? ミーシャちゃんが何か企んでる顔をしてるぞ」


「え…っ、えっ、ボク特に何かは……」


「アリサの言う通り何か企んでる顔だな」


「えっ、あの……【スライムの死核】ってあるじゃないですか。あれを綺麗に研磨して、(マチェット)や草刈り鎌に取り付けた物をエルフに渡したら面白いかなぁ…? って考えてました」



嘘です!!



「ウケるんじゃない?」


「草入り水晶でない辺りがイヤガラセだ」


「それは普通に喜ばれると思うよ」


「草入り水晶は植物系の効果が有るんですよね?」


「普通は豊穣や成育力上昇だな」


「それに火力の効果を乗せたらどうなりますか?」


「草が燃える方に変換されるか、耐火になるか…だな。術式と組み合わせで変わるから、それは俺よりラルフロ=レーンの得意分野だ」


「前に素材の相性に気を付けろと言われました」


「それだ。防具だと稀に発生する」



実はこの組み合わせは魔法バトルカードでなぞる事が出来る。まぁ、上級ルールなので普通はスルーされてるそうだけど。相性については取り敢えず学園で学ばなきゃいけないことだけは理解した。

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