第371話
寝る前にもう一仕事思い付いたのでメモ用紙に書き留める。それはヤーデさんに奉納するデザイン画。厳密に言うとヤーデさんに捧げるコスチュームデザイン。リアル緑のおばさんの服ではない。まぁ、モチーフは緑のおばさんなんだけど。
タイトスカートにジャンパー羽織って帽子と誘導旗、そしてホイッスル。それくらいかな?靴はパンプスかスニーカーだろう。あくまで俺が小学生の頃の記憶を引っ張り出したイメージだけど。ちょっとダサい。ミニスカな婦警さん風とまではいかなくとも、婦警さんっぽいのとかいいよね。手錠は要らないな。代わりにロープかな? えっ、それだと警備員さんか!? 俺の記憶だと、前世の仏教に出て来る不動明王が羂索という魔法のロープみたいな仏具を装備をしていたハズだ。悪人を捕縛する用ではなくて迷える衆生を救うシンボル的な仏具だ。さしずめ救助用ロープってやつか? そのイメージで魔法のロープを描いてみる。
誘導旗、もしくは光る誘導棒。いかん、警備員感がマシマシだ。服の色は柔らかい緑色で。若草色に差し色で黄色。新米の神様なので若葉マークって事です。子供の塗り絵で緑色に塗られた婦警さんともいう。上の神様に報告や相談が出来る様に無線的な道具も持たせたいな。うん、こんな婦警さんならタイホされたいかも。
乗り物はミニパトとはいかないので、そうだな……キックボード!! そんな婦警さんはいません。それだと止まりそびれてコケるところまでセット、ちょっぴりドジっ子。うん、萌え設定を加えてしまった。イジってしまってごめんなさい。白手袋も描いておくかな。
ヤーデさんに捧げる(予定)のコスチュームデザイン画をテーブルの上に置いた。一応、供物というかお供えのつもりだ。受け取り拒否されるかもしれないけど、そこはあくまでイメージイラストという事で。
◇◇◇◇◇
寝て起きたらいつもよりスッキリした目覚めにビックリした。何が良かったのか不明。早寝が良かったのか、エールを飲まなかったのが良かったのか、アンディーとムササビごっこをしたのが良かったのか、野草クッキーが良かったのか分からない。
髭を整える前に髭を浮かせるイメトレをする。そうだ、今夜アリサお姉ちゃんにも何を使っているか聞いてみよう。
ぽよん なの 昨日アンディーが言っていた事もヒントかもしれない。ぽよん ぽよぽよ お髭の子。鉱山の上の赤髭娘か……。
集合時間は午後一時だったので、午前中は時間に余裕がある。刺し子の手習いをしたけど運針が下手くそに戻ってる。一日一時間でいいから運針をすることにした。縫いながらふと思い付いた、裸石ポーチとかアクセポーチって需要は有るんだろうか? 見ない聞かないって事は裸石ポーチ自体に需要が無いか誰も発信していないかのどちらかだ。納品時に裸石を保護する以外にも大き目の魔石を入れてもいいと思うんだけど。そして裸石ケースも無いからなぁ。臍の緒を入れる桐箱みたいなケースに綿入れクッションを中敷きして裸石を収め納品ポーチに入れる。俺が一から作ってもいいけど、その作業が得意なドワーフやクルラホーンに発注してもいいな。納期のすり合わせは必要だけど、皆が儲かる分業制だ。
背中にアンディーを装備して教員室に行く。中にいる面々が講師なのか事務員なのか謎なんだよ。まぁ、全員が何かしらの指導ができると考えておけば間違いはないだろう。雑用の職員さんかと思っていたら実は校長とか漫画のネタによくある事だ。火消しの居候が暴れん坊の上様だったり、遊び人がお奉行様だったりするし。
「おはようございます。ミーシャ=ニイトラックバーグです」
「おはよう。ミーシャ=ニイトラックバーグ、週末に見せてくれた鉱石がちゃんと形になったかな?」
「はい。こちらが完成した裸石と研磨ノート、そして【石物語】を書いてみました」
「【石物語】?」
「あ、研磨した石に付けたストーリーの事を格好つけてそう呼んでみました」
「単語登録はしておくように。職校でもできるから」
「はい。それでは職校で単語登録の申請をしていきます」
そうか、勾玉の形状は登録してたけど【石物語】の方は伝えるのを忘れてたのか。
「こっちの曲がった裸石も登録申請する?」
「あ、そちらは申請してあります」
「そっちはしてるんだ。漏れがない様にすること」
「はい、分かりました。次回から気を付けます」
「これはちゃんと仕事をしているし、鑑定結果も付いていて作業記録も分かりやすい。これだけでもちゃんとした評価が入るけどその【石物語】、それが面白い付加価値を生んだね。蒐集家やデザイナーには喜ばれるだろう。マイナス表現を書いている訳ではないからプレゼントされた側も不快感を感じないね。目的が恋人探しだからウケるだろう」
「ありがとうございます」
「それよりこの【百合の星留】は普通に冒険者向けに売れる。アクセサリー加工しなくても中心の穴に紐を通せるのも評価が高い。これで専攻してないんだからな。こっちに進むの?」
「いえ、鉱石研磨は趣味なので……」
「決まらなかったら冒険者になる手もあるよ。作りたいもの素材を採取する為にあえて冒険者を選ぶ者も多いのがドワーフだ。まぁまずは職校でジックリ学びなさい」
「はい」
「じゃぁ、今回の研磨した四石については評価に足しておくから。後は納品時にラルフロ=レーンからこの書類にサインを貰ってくること」
結局、講師なのか事務員なのか分からずじまいだった。これは『無礼コール』を覚えて名前を見える様にするか……、いやあれは役職は見れないんじゃなかったか? じゃあ駄目か。




