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第360話

まさかガラポンがこの世界にも存在していたとは……。まさかコインを入れてレバーをガチャガチャと音を立てながら回すと景品が出て来る魔道具は無いよね?



「それは回転式の抽選機から当たりの等級を示す色の着いた玉が出て来て、その等級の商品を参加者に渡す訳ですよね」


「せやで。だから主催側で提供する商品を選べるんや。一等を目玉商品にして、六等を拭き草の束にするとかやな」



あ、六等はこっちでもティッシュなんだ。



「他に似たようなシステムの魔道具は無いんですか?」


「あ、この【クラッタラトル】は魔道具やないで」


「えっ!?」


「この回転筒から色の着いた玉が出るだけやからな。普通の道具やで」


「過去の異世界転生者が伝えた道具だからな。そういった道具は大抵が魔力無しで動くぞ」



そりゃそうだよね。日本っていうか前世の世界には科学は有っても魔法は無いもん。



「他に似たような抽選式の道具、もしくは魔道具って有りますか?」


「自分、見たことないわ」


「ん~~、アレは違うか?」


「アレって何や?」


「アレだよ、アレ。レバーを回すやつ」


「ラルフロ=レーン、それはもしかして、【にゃにが出るかニャ?】とか?」


「それだ!!」


「アレってガチャコロポンやったんか」



【にゃにが出るかにゃ?】、正式名称は【マジックカプセル無作為排出機】、又の名をガチャコロポンと言う。登録名が示す通り猫の人由来の魔道具。ぶっちゃけると三毛皇(みけおう)さんの発案品だ。



「それはどんな魔道具なんですか?」


「それ、開発が面倒臭かったみたいだよ」


「透明な容器の中にマジックカプセルに入れられた景品が入っていて、専用メダルを入れてレバーを一回転させれば下部にある景品取り出し口からマジックカプセルが出て来る。マジックカプセルは使い回すから回収されるぞ」



うん、モロにガチャガチャと音をさせながらレバーを回して景品を取り出すやつだ。前世だと正式名称は確かカプセルトイだったよね?



「運用は【クラッタラトル】の方が何かと簡単やから、すーっかり存在を忘れとったわ」


「アレの製作に俺の師匠が関わってるんだがな、兎に角苦労したって話だ」


「そうなんですね」


「アレの構造や機能は魔道具にしては珍しく全公開されてるからな。学園の生徒だったら申請したら何時でも閲覧出来るだろ」


「でも、それに【クジ引き(ロット)クッキー】を入れたとしてもランダム過ぎない?」


「せやなぁ。(ムッシュ)が【クジ引き(ロット)クッキー】を引き当てて、女性(レディ)がタワシを引いたら悲しいわ。模様が合う以前に景品が揃わへん」


「あの、そこはマジックカプセルの中に【クジ引き(ロット)クッキー】を二回引ける権利と書かれた紙片を入れておけば良いのでは?」


「それや!!」



前世のバラエティ番組で見た、目玉商品が番号札と引き換えにされている高額ガチャのシステムの丸パクリです。出てくるのが金色のカプセルだったりして設置業者ごとに色々と工夫してるよね。



「外に何か思い付く?」


「う〜ん、最後の一個を回した人にはラスト賞をあげるとかはどうです?」


「それなら目玉商品が出終わった後でもラスト賞欲しさで回してくれるかもしれない」


「凄いわー。ネタの宝箱(トレジャーボックス)や」


宝箱擬態獣(ミミック)かもしれませんよ?」


「それは止めてーな」



まぁ、ラスト賞も前世ネタなんですけどね。




クッキーを作る前にアンディーには部屋から出てもらう事になる。ラルフロ=レーンさんに向かってバイバイと手を振ってたけど、それがラルフロ=レーンさんにはどストライクだったのか「アンディーちゃんは可愛い」と連呼しまくっていたぞ。


今日は職員数が少ないので商業ギルド支部長室で預かってもらう事になった。受付に預けるのだとちょっと不安だったからホッとした。



試作のクッキーは理想的な材料の配合と厚みを求めてトライアンドエラーを繰り返す。焼き上がり時のクッキーが厚いと完成品が割れないかわりに曲げ加工がし辛く、薄すぎると曲げ加工が楽な反面、完成品が割れやすい。納得のいくクッキーになるまで結構な枚数を焼いたので部屋の中は甘い匂いで一杯になってしまった。



「これ、結構キツイな」


「お菓子の匂いの漂う部屋って憧れますけど、ここまで充満するとちょっと…」


「カーン兄貴、アレを使おう」


「せや!! 噂のマジックバッグの匂い商法や」


「まだ何かあるのかよ」


「これな、【クジ引き(ロット)クッキー】売り場で少しず〜つ匂わせたらええんとちゃうんか?」


「そうですね。流石カーン=エーツさんです」


「あかーん、自分持ってるマジックバッグ、下ろし立てやわ。それに匂いを詰めとうない!!」


「カーン兄貴、実験だと思って諦めて。成功したら商業ギルドで買い取りするから」


「ホンマに?」


(「………多分」)



最後はボソッと答えたからホーク=エーツさん的には自信がないんだな。


排煙の為の魔道具と『汎用魔法』の『換気』とを組み合わせてマジックバッグの中に焼きたてクッキー臭を封じ込めた。クッキー臭を外に少しずつ放出する時は排煙の為の魔道具を使うので、全部を魔法やスキル処理しないのが正解でした。一気に匂いを排出したければマジックバッグの口を全開にして臭いを取り出せば良かった。これ、マジックバッグの機能を使えば前世のクマよけスプレーや殺虫剤に相当するものを作れそうな気もする。



「で、この花弁(ペタル)型のクッキーを二枚合わせる。中に印を付けた紙を入れて封をすれば【クジ引き(ロット)クッキー】の完成だね」


「せやな。封する前に鑑定で中の印が見えへんか確認や。ラルフロ=レーンって透視系のスキル持ってたんやなかった?」


「有るぜ」


「全員で手持ちのスキルで確認しよう」



結果としては中級程度のスキルまでならシールで保護された中身は確認出来ない事が分かった。



「ほんでな、この二つのクッキーをキッチリ留めたいんよ」


「前にミーシャ=ニイトラックバーグが水飴で留めるって案を出してたけど」


「もう少しガッツリ着けたいわ」


「糊……、あっ、デンプンを少量の水で溶いて加熱したら糊になります」


「それだな」


「それなら水飴よりコストも安いよ」


「ほなそれにしよか」



辻占せんべい、完成です!!

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