第335話
今回はチーウ=エーツ視点の回です
「ただいまー。久々の我が家だ」
「おかえりやす」
「チーウ、おかえり」
「あ、カーン兄もホーク兄も帰ってたんだ」
「さっき揃って帰ったよ。晩飯の支度はまだだよ」
「チーウが戻るとは思ってへんかった。炭焼き警護は終わったん?」
「一応ね。初回は今日で終了。念の為、明日一日は『旋斧鬼』のメンバーが待機してくれてる。二の週の一の日が窯開けなので全員立ち会って出来ばえの確認。そこから炭焼きの二周目が始まる。二周目は別の冒険者パーティーが護衛に入るよ」
「おつかれさん」
「まぁ、楽な任務だけどね。ゴブリン間引いて魔石の納品と比べたら天国級よ」
「自分はミーシャの任務で奈落級や」
「えっ、ミーシャちゃん何かしでかしたの!?」
「してないよ。チョッカイ出したのはカーン兄貴の方だよ」
ミーシャちゃんは面白い発見はするし、ハッとさせる発案もするからカーン兄がチョッカイ出したくなるのは分かるけどね。妹目で見てもカーン兄はやり手の商人なんだけど、それを手玉に取るとか、ミーシャちゃんやるなぁ。ホーク兄も商業ギルドで振り回されてるらしいし。
「チーウ、『飲み拳』って知ってる?」
「それ、冒険者ギルドで騒ぎになってる遊戯でしょ? 魔法カードバトルより簡単で射幸心を煽る勝負だって聞いたよ」
「ちゃうねん、それ賭け事やないんや」
「マジで!?」
『飲み拳』の “ 飲み ” は酒飲みとは関係なかったのか。マンバとヒルとリーチフロッグの飲み込み合戦だった。勝ち負けで酒を賭けたのはドワーフ故のやらかしだった。そりゃそうだよね、魔法カードバトルと違って頭使わなくていいもの。私達だと荷物持ちを決める時に便利かな?
「ほんでな、『反省のポーズ』は知らんやろ?」
「なにそれ、カーン兄の為にあるんでしょ?」
「ちゃうがな。飲み過ぎた翌日のホークの為にあるんやで」
「違う」
「何となく察した」
「こうやるんやで」と言いながら『反省のポーズ』を実演するカーン兄。この何とも言えないポーズ、やりすぎたら叩かれるな。
「これが『反省のポーズ』……」
「これもミーシャのネタやねん」
「何か凄いな……。これ、ボケネタだよね?」
「ボケネタかいな」
「ほら、 「反省だけならゴブでも出来る!!」 って突っ込まれそうだし」
「確かにボケネタやわ。それ、使わせてもろてええ?」
「いいんじゃない?」
「ほな、『啼哭過激団』のエイトはんにゴブ付きのもやってもらお」
「『啼哭過激団』のエイトって、あの有名なやらかしキャラの?」
「チーウも知っとるん?」
「私はヤッシー推しなので」
ミーシャちゃん、料理以外でも登録ネタ持ってるんだ。風俗・流行案件って形がない分登録に漕ぎ着けるまでが大変なハズなんだけどなぁ…。
「カーン兄貴、夕飯どうする? 外に食べに行く? それとも何か適当に買ってこようか?」
「私、食材持ってるよ」
「マジで? 今日はもう面倒臭いの嫌やわ。チーウの手料理で済まそ」
「じゃあ、拭き草の茎料理だね」
「拭き草の茎………久しぶりだな」
そうか、ホーク兄は食べた事あったんだ。って、それ、ミーシャちゃんの手料理って事でしょ? いいなー、羨ましい。
「この拭き草の茎に風魔法の『紐みたい』を掛ければパスタみたいになるよ」
「『紐みたい』って攻撃魔法やなかった?」
「そうだよ。対ワームや対クラーケンっていうか、触手対策用魔法だね」
「それで拭き草の茎を裂くと」
「ベジパスタの出来上がり。これ、エルフに売り付けたら面白くない?」
「エルフやのうてもヒト族の貴族の淑女にウケそうや。ダイエットパスタって売り込めるやろ」
「流石、胡散臭い商人!!」
「チーウ、それ褒めとる?」
「褒めてないよ」
どうやら食べ方の提案として登録されるみたい。権利料が入らないギリギリの案件じゃないかな? まぁ、拭き草の茎自体が新規売り込みの食材なので、食べ方の提案は大事っちゃ大事よね。まぁ、月にエールの一杯でもタダ飲み出来るお金が入れば御の字ってことで。
「しかし、拭き草の茎の水煮が【カエデ糖】をまぶして高級菓子になってみたり、細く裂かれてダイエットパスタになってみたり、とても廃棄物の再利用とは思われない」
「結構美味しいし、野外で簡単に採取出来るから今や冒険者に人気なんだよ」
「尻のイメージが払拭出来ればいいけれど」
「ホーク兄、尻尻言わない!!」
「ハーイ、尻〜〜」
「カーン兄も茶化さない!!」
これだから、いい歳してるくせに男共は……。ミーシャちゃんが「残念」って言ってたのが分かるよ。
「で、チーウは明日は非番やの?」
「私はね。アリサは『旋斧鬼』さんに特訓付けてもらうって言ってた」
「何を習うんやろね?」
「対ミノタウロス戦闘術って言ってた」
「ミノタウロスって牛の人に似た魔獣やろ?」
「そう、それ。アリサは対ミノタウロス戦闘術『ミノ倒す』を習うんだって」
「チーウは習わんでええの?」
「残念ながら斧使いじゃないと『ミノ倒す』が完璧に熟せないのでーす」
「バールのような物じゃ駄目だったか」
「対ミノタウロス戦闘術『ミノ盾役』ならどの武器でもいけるって言ってたけど、そもそもミノタウロスと戦わないもん」
「そもそもやけど、この辺りだとどこにおるん?」
「最寄りはドワーフ領外」
「ならやっぱ戦わないやつやん」
「私達にはゴブリンで十分だよ」
ちなみに、ミノタウロスで人気第一位の食用部位は『第一胃』、次いで『舌』と『背肉』。覚え方は 「ミノタウロスは『第一胃』、『舌』、『背肉』」 だよ。これ、冒険者の昇級試験に出ます。




