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第352話

「なん…やて………」


「俺も初めて見ましたよ、その生きた背中装備」



カーン=エーツさんにアンディーを紹介していなかっただけでなく、実はホーク=エーツさんにも紹介していなかった事実。



キュウ ムキュウ

(「あたち あんでぃー」)


「アンディーがお二人に 「アンディーです」 とご挨拶しています」


「ホンマかいな」


「その獣魔は?」


「グライダー・カーバンクルです」


「レアモンやね」


「 “ 幸福の女神(ルッカ) ” とか “ 幸せをもたらす者(フェリス) ” 等と呼ばれるレア魔獣ですね」


「ええなー。カーバンクル自体が商売繁盛の象徴やで」


「そうなんですか? ボク、可愛い魔獣だな〜、としか思ってなかったので」


「だから懐かれたんでしょうね。カーン兄貴みたいに欲望ギラギラだったらカーバンクルも転がって逃げますよ」


ムキューウ

(「こっちの おじちゃんは へいきなの」)



アッシュちゃんやアンディーに嫌われてないみたいだから、ホーク=エーツさんって意外と子供や動物には高評価なのかもしれない。よく考えたらポンコツになるのはお酒が入り過ぎた時だけだもんなぁ。実は優秀だったのか。



「他にも追加効果で何らかの益をもたらす魔獣っています? ユニコーンやペガサスみたいに有名どころは抜きで」


「せやな…、身近なとこやと【手持ち豚】とか【加護の鳥】やろ? 【コカコッコ】もやろな」


「メジャーどころなら【運魔(ウマ)】、【極楽(ヘブン)(・レイブン)】、【眼鏡瘤蛇(コブヘビ)】、【風呂大鼠ハピパラ】。マイナーだと沢山いるけど入手可能度で考えたら【黄布(キーロ)翻海人(・ハンカジン)】、【夢喰(バク)】、【白黒熊(パンダベア)】、【麒麟(キリング)】、【馬河裸(バカラ)】、【案内牛(ゼンコージ)】……詳しくは従魔登録所で調べられるからそっちで聞いて」


「よく覚えとるわ。感心や」


「残念ながら酒に強くなる魔獣はいないんだ…。【酔吐負け(ヨイトマケ)】には騙された」



それを探して様々な魔獣を覚えた訳じゃないよね? 【酔吐負け(ヨイトマケ)】は飼うとお酒が美味しく飲める様になる反面、酒に弱くなる副次効果を持つ蛇姿の魔獣。なのでドワーフは飼育しない。ホーク=エーツさん自体が【酔吐負け(ヨイトマケ)】の血を引いてたりは……してないか。



「ミーシャはん、ラルフロ=レーンばかり贔屓にしてええの?」


「えっ、贔屓してませんよ」


「ラルフロ=レーンばかりやのうて、自分にも面白(おもろ)い商品卸してーな」


「そんな、急に言われても……」


「『ハニー・バニー』向けの何かでええのよ」


「何かって……、何かヒントになりそうなネタはありませんか?」


「せやなぁ…、ラルフロ=レーンは有名デザイナーや菓子職人に何や依頼したらしいわ。例の【鉱夫飴】で何とかならん?」


「平たい飴は割れちゃうので恋人には嫌がられるかもしれませんけど」


「あっちゃー、それはアカンわ」



恋に関係するお菓子ねぇ……。前世でアイドルグループが歌っていた【片想いの辻占(つじうら)せんべい】って歌があったなぁ……。ジャンケンでリーダーを決めるのが有名なグループだったよな。そのせいで辻占煎餅が大ブレイクしたんだっけ…。卵型で中が中空の煎餅の中からフィギュアの出て来る食玩も派生で生まれたくらいだし……。って、これイケるか?


俺は両手を合わせて蕾の様な形を作る。そしてそれをカーン=エーツさんに示しながら聞いてみることにした。



「あの…ですね、こんな感じで中空の卵型というか二枚貝(クラム)みたいなお菓子って有ります?」


「あらへんよ」


「聞いたことはないですね」


「ボク、思いついたんですけど、片想いの子がやる遊びで恋占いってあるじゃないですか」


「花びら毟ったり貝殻割ったりするやつやね」


「そうです。その延長というか派生というか、クッキーで蕾みたいな二枚貝みたいな形を作って、その中に印を入れたらどうでしょう」


「印って、 “ 当たり ” とか “ ハズレ ” とかなん?」


「それでもいいですけど◯とか☆とか△とかにしておいて、二人でそれぞれ選んで買ってもらい、目の前で割って開けた時に図柄が揃っていたらラッキーというか、カップル大成功というか……」


「それ、面白(おもろ)いな」


「普通に神託(おみくじ)っぽくしてもいいんでしょうけど、神様の決めた事ではないですしね」


「どっちかと言えば “ クジ引き(ロット) ” やわ」


「 【クジ引き(ロット)クッキー】ですかね?」


「ホーク、ちゃんとメモっとるん?」


「勿論」


「それより、ここで話してていいんですか?」


「アカンやろ。まぁエエんとちゃうん?」


「駄目!! 奥に行かないと。カーン兄貴も始末書は書きたくないでしょ?」


「嫌や!!」



防音の魔道具が設置されている奥の部屋、談話室というか小会議室というか……な部屋に移動する。商業ギルド職員や構成員、出入りの商人などが談話や商談をする時に使う小部屋だ。商業ギルド支部長がいる時は使わない部屋なので俺が入るのは実は初めてだったりする。



「ボク、この部屋は初めてです」


「あれだけ商業ギルドに出入りしているのに、この部屋を使うのが初めてって(ドワーフ)も珍しいんだけどね」


「ほな、本題に入ろか。クジ引きするのはエエ案やと思うのよ。せやけど【鑑定】持ちはどないするん? 【鑑定】スキルやのうても【透視】持ちなら見えるやろし」


「そこは若干必要経費が上乗せされますが、記入を隠すシールを貼ればよいかと」


「隠すシールって、あれか。上位鑑定結果を秘匿(シール)する()()やろ?」


「はい。本気の上位鑑定なら看破されちゃいますけど、たかが遊びに本気は出さないかと」


「おるかもしれんで」



それはそれで嫌だな。たかがナンパ遊びに本気を出して 「君とお揃いだよ」 とかドヤるのは相当恥ずかしいって。



「ほんで、図形はシールで隠すとして、整形はどないするの?」


「生地を薄めに伸ばしたものでクッキーを焼いて、焼き上がったらまだ熱いうちに型に押しつけたら角度が付きますよね」


「同じの二つを合体させるんか」


「それって、ちゃんとくっ着くの?」


「熱いうちなら着きそうですが、念の為、水飴を塗って圧着させればいいかと」


「それやと試作もすぐいけそうや」


「カーン兄貴、価格は一個銀貨一枚くらい?」


「気持ち高めやけど、鑑定保護シールを使(つこ)うてはるしな」


「形は二枚貝がいいと思う。クッキーを割って “ クジ引き(ロット) ” するって所が貝殻割りの恋占いに引っ掛けられる」



貝殻割りの恋占いというのは、想い人の事を考えながら貝殻を石畳に投げ付け、どんな割れ方をしたかで恋が成就するとかしないとかを占う遊びだ。綺麗にまっ二つに割れたら恋愛成就。三つに割れたら三角関係。四つに割れたらグループ交際。割れなかったら片想い。粉々に砕けたらその恋は実らない。…って判定結果なんだって。女学生が好きそう (注意:イメージです) な感じだな。

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