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第342話

二号のグレードアップに何だか気を良くしたので一号と三号にも気合が入るというものよ。仕上げ研磨の直前まで終われれば部屋で仕上げ磨きは出来るし。若干の微粉末は出るけど気にしてたら生活出来ないレベルだからな。どうしても除去したかったら金属類を全部『次元収納(インベントリ)』に避難させて『汎用魔法』の『金属成分除去』を弱目に掛けて部屋全体を浄化処理すれば何とかなると思う。流石にドアノブとかまでは除去しないだろうけど不安なので私物は隠すぞ。


先に三号の菱形を星っぽくする処理からね。四辺に均等にカーブを入れていく。まぁ、厳密に揃ってなくてもいいけど。一応、裏側に当たり線は書いてあるけど。それからカーブの内側を緩やかに削り落としてゆく。それに合わせて角も高さを落とす。雫型の尖端とは若干成形が違う。雫型の方は山形で整えるけど、菱形の星方はカタカナの “ ノ ”みたいな谷というか沢といった型ね。ハートは “ くの字 ” で、星は “ノの字” かー。“ くの字 ” と “ノの字” 、女忍者が出てきそう。これ、三毛皇(みけおう)さんでなきゃ通じないやつだな。そして上弦か下弦の違いが有るけどどちらも三日月な事に気付いた。


三号を研磨しなから気分転換に一号も研磨。集塵の魔道具のお陰でいつもより研磨が捗っている。



「おーう、戻ったぞー。適当に休まねぇとバテるぞ」


「ハチミツと【リモー】汁と塩を混ぜた紅茶を飲めば元気が出るんだぜ」


「俺等は【魔精(マジカル)(・ジュース)】って呼んでるけどな」



魔精(マジカル)(・ジュース)】、何というか成分的にエナドリっぽくない? つまりマジック・エナジー・ジュース? それともモンスター・エナジー・ジュース? それは川の字のジュースなのか翼が生えるジュースなのか……。



「何だか美味しそうですね」


「酒を入れたらもっと美味くなるぜ」


「それもキツイやつな」


「はーい、覚えておきます」


「あんた、見ない顔だが何年目だ?」


「ボク、まだ二ヶ月目です。先輩、宜しくお願いします」


「俺らは五年目だ」


「鍛冶師の修行か何かですか?」


「違ーう。俺等は金属精錬を専門にしてるんだ」


「鍛冶師の代わりに金属を精錬する重大任務なー」


「それ、極めたらドワーフにモテモテになりますね。目指せ、精錬王ですね」


「おーい、よせやい。髭のオッサンにモテモテとか困るじゃねぇか」


「髭は髭でも御婦人方にモテた方が嬉しいね」


「からかってごめんなさーい」


「おーい、気にしてねぇぞー」



二人は再びガッチンガッチンと鉄鉱石を割り始める。俺も力が程よく抜けたので研磨再開だ。そしてまさかのエナドリ情報。ドワーフが酒以外で元気の出る飲み物が存在するとはな。




あっ……雫型の尖端にクラックが。マジかー。俺のせいではないけどヘコむわ。幸い割れたりしなかったけど。この先の作業は気を付けないと。強く擦り上げたら割れたりするからな。ここでクラックの件をノートに記載。これ何だか欠けそうな予感。よし、鑑定しておくか。



(鑑定)


【愛の囁き】1:心変わり中。中品質–。雫型。尖端にクラック有り。


【愛の囁き】3:心変わり中。低品質+。四端星型。



あ゛ぁ~〜〜、一号のグレードが下がってる!! クラックが出たから仕方ないんだけど。これ、中品質に戻したい…。どうする? 【愛の囁き】だけにそこに愛があればいいのか!?


あれも愛、これも愛………アイアイはお猿さんだったな。クソっ、雫型にしたばっかりに……。



「なぁ、今日のトースト、目玉焼きが美味かったな」


「だからって二枚頼む奴がいるか!!」


「お(めえ)もだろうが。そんなだからよう、いつまでたっても夜にエールと楽しめねぇんだよ」


「仕方ねえじゃねぇか。卵乗せが人気過ぎて夜には無くなってるんだぜ」



えっ!? マジで!? 卵、卵、たっぷり卵………。卵人気過ぎるだろ。でもマヨネーズも卵製品だしな。厨房的には目玉焼きよりマヨネーズ作りを優先させそうだよね。


あ…卵だ。卵型だよ。雫型の尖端を丸くしたら卵型に直せる。その逆は面倒くさいけど。カラット数は減るけど問題のクラックは処理できる。それに恋の終わりの悲しい涙を連想させる雫型より、愛の卵とか、ゴールインの更に先にある()()()()を連想させる卵型の方がこじつけ……じゃなくてゲン担ぎに丁度いいじゃない。


ありがとう、未来の精錬王のお二方。でも、トースト談義の盗み聞きで形が決まったとか言えねぇわ。



ガーッと一号の尖端部分を研磨し、ツルンとした卵型に整え直す。指先で撫でながら卵らしからぬ研磨残しがないか確認。たまに何だかフラットな感じの楕円カボッションカットにしちゃってるからな。指先に引っ掛からない感じなら多分大丈夫。どうしても手研磨のクセが出ちゃうんだよ。機械研磨が出来るんなら表面を回転する砥石にスーッと当ててやれば綺麗に整えられるんだけどね。陶芸に使うロクロが有れば、それを改造したら研磨機が作れると思う。動力は手回しでも足踏みでもいいんだ。それこそ【バーサーカッター】の派生でもいいし。手研磨は好きだけど、たまには機械研磨に頼りたい。



(鑑定)


【愛の囁き】1:心変わり中。中品質。愛を育む卵型。



ヨッシャー!! 何とか中品質に戻せた。これもメモだ。この、涙を連想させる雫型から愛を育む卵型に生まれ変わったのはいい感じの石ストーリーに使える。鉱石からアクセサリーになるまでのストーリーで商品に付加価値を加える。怪しい魔道具屋(ラルフロ=レーン)さんと胡散臭い商人(カーン=エーツ)さんなら喜んで乗っかってくれそうです。

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