第338話
養鶏場に【鶏遭遇豆】を差し入れに行ったら雌鶏達に歓迎されました。勿論、コカコッコにもね。養鶏場で鍋を借りてヒヨコ用に煮豆を作っていた時に一粒二粒味見をしたけど、普通に美味かった。前世でヒヨコ豆を積極的に食べていた訳ではないので、同じ物なのか違う物なのかはよく分からないけども。意識高い系サラダとかベジタリアン用のカレーに入っていたと言われたら素直に信じちゃうよ。まぁ俺的には水煮大豆の方が好みではあるが。
【鶏遭遇豆】の煮豆をヒヨコに与えようと思ったら、雄コカコッコに脛をコツコツされた。これ、確か付いて来いの合図だったよね。という訳で煮豆の入った鍋を抱えたまま雄コカコッコに付いて行くとそこには巣で卵を温めている雌がいた。
コカッ コカッ
雄は鳴きながら雌の前の地面を嘴で突付く。
「コカコッコさん、お嫁さんに【鶏遭遇豆】の煮たのをあげればいいの?」
コカコッコー!!
餌皿に煮豆をよそって渡してあげると雌は嬉しそうに コカッ と一鳴きすると煮豆を食べ始めた。それを見て俺も鍋から煮豆を摘むと口に運ぶ。
コカッ コカカッ コカッ
コカコッコー!! コカコッコー!!
雌が煮豆を食べ始めたのを確認すると雄が俺の脛を再びコツコツと突付き、今度は雌鶏のいる方に向かって歩き始める。そのまま付いて行くとそこにはヒヨコが五羽いる。ヒヨコ達はピヨピヨ鳴きながらコカコッコの足元に纏わりつく。コカコッコの雄がヒヨコの頭を嘴でチョンチョンと優しく触る。それって健康チェックかな? それともスキンシップ?
コカッ!!
また嘴でヒヨコの前の地面を突付いたので餌皿に煮豆を入れてヒヨコ達の前に置いてあげた。ピヨピヨ鳴きながら煮豆を啄み始めるヒヨコ達。可愛いなぁ。ホッコリとした気分になったので鍋の中にまだ残っていた煮豆を摘み口に放り込む。
コケッ?
コケッコ?
コカコッコー!!
「あ、ごめんなさい。雌鶏さんとコカコッコさん、水戻しの【鶏遭遇豆】をどうぞ。そこの餌箱に入れるから仲良く食べてね」
コケッ コケッ
雌鶏達が一斉に頭を上下し始めた。お礼かな? それとも雌鶏のヘドバン? 雄コカコッコが一際大きく コカコッコー と鳴くとそれが合図だったのか雌鶏達が【鶏遭遇豆】を食べ始めた。雄コカコッコはそれを静かに見守っている。
「あれ? コカコッコさんは食べないの? それとも雌鶏さん達に譲ったの?」
コカッ コカッ
「煮豆が少しあるから一緒に食べよう。それとも硬い方が好みだった?」
マジックバッグから乾燥状態の【鶏遭遇豆】を一握り取り出して雄コカコッコに見せると嬉しそうに啄み始めた。どうやら雄コカコッコは硬い豆の方が好みな模様。それを見ながら俺も鍋から煮豆を取って食べた。
「ミーシャ=ニイトラックバーグ、雌鶏達に差し入れ感謝するよ」
「いえ、それほどでも」
「な…なっ!? 口にしている《《ソレ》》は煮豆かね?」
「はい、そうです」
コッカコッココー!!
「普通は【鶏遭遇豆】は食べない物なのだが……」
「いえ、美味しいですよ」
「私も試しに食べてみた事はあるがね、ホクホクしている訳でもなく甘くもなくて、何というか残念な豆だというのが正直な感想だったよ」
「そうですか? ボクはこの感じが好きですけど」
「まぁ、毒ではないからね。鶏達やコカコッコと一緒に食べてやれば彼らも喜ぶだろうね」
「そう思います。さっきも歓迎されました」
う〜ん、【鶏遭遇豆】の煮豆は煮た大豆っぽいし、枝豆が好きなら普通に食べれるとは思うんだけどなぁ…。大豆よりはコクが薄い感じがするけどね。何だろう、職員の方々の視線が痛い感じがするよ。
「コカコッコの卵は順調に育っている感じですか?」
「そうだね。ミーシャ=ニイトラックバーグが来てくれたから二羽も喜んでいるよ」
「孵化前にまた【鶏遭遇豆】を差し入れにきますね。他に推奨される餌って有りますか?」
「乾燥【穂先黍】を好むよ。実を軸から外し、軸は粉砕し実と同じ様なサイズに砕く。それを混ぜた物を喜んで食べる。大麦の粒も食べるしフスマも食べる。ハット麦も好きだよ。野菜は【玉菜】を刻んだ物が好きだね。勿論、【鶏餌草】は大好物だ。ドライフルーツなんかもいいね」
「わかりました」
ハット麦は炒った物をお茶にして飲むことの出来る麦。お茶がらは捨てる事無く餌に出来るので養鶏場で出て来るお茶は主にハット麦茶だ。砂糖を入れなくともほんのり甘みを感じるお茶なのでヒト族の貴族にも人気だったりする。
ちなみにドワーフに人気のお茶は大麦茶だ。同じ大麦でもエール用とは少し品種が違うらしい。酔い覚ましには大麦茶。酔う為には大麦、酔い覚ましにも大麦。ドワーフ、大麦好き過ぎだよなぁ…。
紅茶は元気になるからという事でそこそこ好まれている。『生命之水』を入れたり蜂蜜を入れたり、果実の搾り汁を入れたりして楽しむ。元気になるのは多分カフェインの効果です。
今日明日は鉱石研磨だ。職校が忙しくないここ数日がチャンスというものよ。




