表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

336/464

第335話

「それで希望エリアは有るのかね?」


「そうですね…庭に母体樹(ぼたいじゅ)を植えて、少しばかり家庭菜園もやりたいです。【運魔(ウマ)】用の厩も置きたいです。【運魔(ウマ)】の運動場は馬車組合のを借りようと思っています。家には小さくていいから作業場が欲しいかな…。あとお風呂は絶対に作ります」


「そこそこ盛り沢山じゃな」


「それだと南側だろう」



商業ギルド支部長さんの話だと、現『スワロー』の外壁の外側に展開している馬車組合所有の【運魔(ウマ)】の運動場を整地し直し、市街地・【運魔(ウマ)】の運動場・新興郊外地と同心円状になる様に追加エリアが開拓されるとの事。郊外にある畑の収穫物や工場から出荷される製品の運搬には【運魔(ウマ)】の運動場が利用出来るんだな。あくまでも『スワロー』再開発はモデルケースで各都市の近くに衛星都市というか工場村みたいのを増やしたりするみたいだけど。



「そのうち『スワロー』が『スリーストライプ』と合体するかもしれんのう…」


「そうですわね。そうしたら『タグルバトル』はどうなってしまうのかしら?」



フィオナお義祖母さま、心配する対象がそれですか? 確かに神様へのお賽銭的には問題だけれども。



「その場所ならば儂らの家からはさほど遠くはならぬのじゃな」


「そうですね」




どうやら、土地代が完全にタダというのは無理だけど、特別功労者への報奨として格安で購入出来るかもしれないとか何とか。でも、あまりにも格安過ぎる価格で入手し、それがバレると登録者か俺だと身バレしちゃいそうだな。お金は大事だけど保身はもっと大事なのよ。


持ち家が有っても利用料さえ払えば寮生活は可能。なので、楽する為に寮の部屋は借りておいた方がいいかな。楽するってのは荷物置き場とかちょっと作業する場所って意味ね。その時は学園の寮を引き払ってもいいしな。あ、アンディーの待機場所が必要だからやっぱり学園の寮も必要でしたわ。



「そうだ、その母体樹(ぼたいじゅ)の種類は分かっているのかね?」


「【プルモニア】だそうです」


「【プルモニア】か…。農業ギルドにも報告しておいた方がいいだろう」


「そうじゃな。忘れておったのじゃ」



商業ギルド支部長さんが言うには、【プルモニア】は果樹なのでその母体樹(ぼたいじゅ)を植樹するなら農業ギルドに報告しておかないといけないのだとか。多分、滅多に無い事だよね。



「でも、良かったわよね」


「はい。ボク、ビックリしちゃいました。パイクお義祖父さま、お口添えありがとうございます」


「気にせずともよいのじゃよ」


「でも、特別功労者の特典が有ったとしても普通はそんなに簡単に土地購入が出来るものなんですか?」


「もう少し審査が必要じゃろうな。恐らくはその母体樹(ぼたいじゅ)のお陰じゃろうな。お礼を言っておくのじゃよ」


母体樹(ぼたいじゅ)さん、ありがとうございます。素敵な庭に植樹しますからもう少しだけお待ち下さいね」



母体樹(ぼたいじゅ)の枝に付いている葉が数枚、微かに動いた様な気がした。



「ミーシャさん、血は繋がっていなくとも私の孫ならポーター氏族の末席に加わった様なものなのですわ。ポーター氏族で良いことは二つ有るの。一つ目は滅多なことでヒト族が絡んでこなくなるわ。二つ目は何時でも氏族から飛び出せる事かしら」


「そうじゃのう。飛び出した当人がそう言っておるのじゃからのう」


「飛び出ちゃってもいいんですか?」


「ポーター氏族はね、縛られると飛び出してしまうのですわ」


「ジャジャ馬氏族で有名じゃからな」



うん、意外と自由奔放な氏族なんだな。馬車ギルドと深く関係しているんだし、氏族としての力は強いだろうから一人や二人抜けても氏族全体としては平気なんだろうな。馬車ギルド繋がりでジャジャ馬って事ではないよね?



「ハーレー=ポーターがいるでしょう? あの子が今一番 “ 飛び出し注意 ” な氏族構成員なのですわよ。あの子もそれを逆手に取って研究だ開発だと好き放題やっているわよ」


「そうなんですね。ちょっとクセのある方だなぁ…と」


「うーん、それは多分演技だわ」


「そうなんですか!?」


「クセが強くてウザったるいと思われた方が利用しようと思われないものですわよ。それこそあの子が髭の一本も生えていない頃はね、 「大叔母様、大叔母様」 とヒヨコの様に付いて来たものですわ」


「フィオナお義祖母さまってハーレー=ポーターさんの大叔母さんだったんですか?」


「あら、教えてなかったかしら? あの子の母親が私の弟の子供なのですわ」



えっ!? フィオナお義祖母さまとハーレー=ポーターさんって意外と近親者じゃないか。前世の結婚式でも親族の席に呼ばれるレベルだな。



「まぁ、ミーシャは親族関係なんぞ気にすることはないのじゃ。あくまでもポーター氏族出身のドワーフが婚姻と供に他氏族に入り、その配偶者がミーシャを庇護養子に選んだだけじゃからな。ミーシャとしてはポーター氏族の肩書きを少しばかり利用出来る程度じゃよ」



いやいや、それは結構大きな後ろ盾ですよ。ヒト族が絡んでき辛くなるって事は俺にとっては物凄く大きな特典だと思うのよ。あ……、ワギュとラパンをあっさり所有出来たのって、もしかしてポーター氏族の力が少しだけ働いたとかなのか?




そのまま農業ギルドに【プルモニア】の母体樹(ぼたいじゅ)の接ぎ木用の枝を入手した事を報告に行ったら農業ギルド支部長さんが固まってしまったので、これがレアケースであることが確定したよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ