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第327話

三毛皇(みけおう)さんに献上する新年飾りが完成した。別に俺の作った物を献上しなくてもいいのに…と思ったんだけど、猫の人側にしてみれば名誉猫獣人であるパイク=ラックさんの家族(庇護氏族含む)作の新年飾りを献上される事は、大いなる意味ととても価値のある事だと言われたのでは仕方ないか。



「じぃじ師匠、ご指導ありがとうございました」


「うむ、精進するように」


「パイク=ラックさん、今日は指導のほどありがとうございました」


「何時でも学びに来てよいのじゃ」



という締めの挨拶をもって新年飾り作りは終了した。少し休憩したらパイク=ラックさんの家族との面通しを兼ねた夕食会だ。ちょっとだけ緊張する。



「お義父さん、ミーシャさん、準備ができましたよ」


「リズさん、悪いのう」


「パイクさんが座らないと皆が座れませんよ」


「婆さんや…」


「早く座って下さいな」


「………そう急かさんでおくれ」


「駄目ですよパイクさん。ミーシャさんもアッシュも見てますよ」



まさかのカカア天下なの!? パイク=ラックさんの家の食卓は円卓。これは上座も下座も無いというラック家の家風を現したものなんだとか。そう言えばリンド=バーグさんの家は四角いテーブルだったよ。



「アンディーちゃんはどこがいいかしらね? お義父さん作の猫ちぐらを置いてミーシャさんの脇の床でいいかしら?」


ムキュウキューン



多分、OKって事でいいと思います。



「家族の絆に乾杯じゃ」


「乾杯!!」✕五



パイク=ラックさんの音頭で夕飯が始まった。俺の歓迎会も兼ねているとのことで普段よりも食卓の上が賑やかなのだとか。【茄子花芋】の炒め物に葉物野菜をふんだんに使ったグリーンサラダ。焼きチーズに干し魚のスープとボイルしたソーセージ。そしてエールとアッシュちゃん用のワート。よく見たらトマトジュースも置いてある。



「ミーシャさん、ラック家にようこそ」


「親父様の認めた庇護養子なら家族も同然だからな。俺達と仲良くしてくれ」


「ありがとうございます」


「では食べながら自己紹介といこうではないか」



ドワーフという種族は食事の時は賑やかなのを好むので、余程でなければ 「口に物を入れたまま喋らない!!」 と怒られたりはしない。まぁ度が過ぎたら注意されるけどな。食事をするとどうしても酒が入るので、そこは饒舌になるというものですよ。


エールの樽はパイク=ラックさんが予め冷してくれているので今夜は美味しい冷えたエールか楽しめる。アッシュちゃんとアンディーは冷やしワートで。素焼きのコップに入れてもらったワートを器用に両手で掴んでコクコクと飲んでいるよ。後はドレッシングのかかっていない野菜類を分けてもらっている。



ムキュウ

(「ますたー おいちい」)


「アンディーちゃん、いっぱい食べてくださいね」


キュウ キュウ



「儂からじゃな。ミーシャも知っている通り、木工師で籠細工を嗜む爺じゃよ。エールを冷しすぎてのう、この年で総魔力量が増えてしまったのじゃよ」


「親父様は最近その総魔力量ネタがお気に入りだよな」


「そうは言うても真実じゃからな。リュートもエールを冷やすのじゃ」


「俺に冷しは出来ないよ。先に母さんの自己紹介だろ?」



次男さんはリュート=ラックさん。うん、逃げたな。



「私はフィオナ=ラックよ。パイクさんとの結婚を機に氏族名を変更したのよ」


「結婚を機に氏族名を変えられる方もいるんですね。ご両親に反対されたりとかは無かったんですか?」


「それは少しは言われましたよ。でもね、氏族名を変えたかったんだもの…」


「婆さんの旧氏族名はポーター氏族じゃからな。お転婆なじゃじゃ馬で有名なフィオナ=ポーターじゃった…」


「パイクさん、よして下さいよ…」



フィオナ=ポーターって、あのハーレー=ポーターさんと同じポーター氏族!? だとすれば馬車に関わる氏族の出ってことだよね。



「あの、ゴーレム研究で有名なハーレー=ポーターさんと同じポーター氏族ですか?」


「そうよ。あの子も私も本家筋よ。それが嫌で氏族名を変えたの」


「そうなんですか?」


「私の研究のせいでね、旧氏族名で名乗ると悪目立ちしちゃうのよねぇ…。ミーシャちゃんも悪目立ちしちゃったら氏族名をお変えなさい」


「はい、肝に銘じます」


「ところで母さんと親父様の馴れ初めって…」


「あら、教えてなかったかしら? あれは…」


「ゴフッ……、ケホッ、 、  ばっ婆さん、その話はまた後でじゃ!!」


「あらまぁ…」



これってラック家最強はフィオナ=ポーターさん改めフィオナ=ラックさん? ()()ポーター一族って事は良くも悪くも地雷なのか?



「次は俺だな。俺はパイク=ラックの次男、リュート=ラック。寄木細工を極めんとしている。ちなみに作業場は三軒先だ」


「私はリズ=タイラー。象嵌が得意よ。お義父さんお義母さんとは違って私とリュートはお見合い結婚よ」


「俺がまだ独り立ちしていないのにも拘わらず結婚してくれたんだ」


「リュートは悪い方ではないと思いましたし。一番の理由はお義母さんの存在ですけどね」


「私が?」


「有名な方なのは存じ上げてましたので。いろんな意味でお義母さんとなら仲良くやれると直感で判断しましたわ」



リズ=タイラーさんも強いな。



「リュート=ラック父様とリズ=タイラー母様の娘のアッシュ=ラックです。いっぱいお勉強しています。よろしくおねがいします」


ムキュウ ムキュウ


「最後にボクですね。ミーシャ=ニイトラックバーグです。パイク=ラックさんから聞いて知っているとは思いますが、『関所の集落(仮)』でパイク=ラックさんにお世話になりました。至らないところが多々あると思いますが、庇護養子になりましたので何卒宜しくお願いします」


ムキュウ!!


「あ、そこに居るのはボクの獣魔でグライダー・カーバンクルのアンディーです。他にも獣魔がいます。【運魔(ウマ)】二頭と間もなく孵化する予定のコカコッコです」


「所属は職校と学園でしたわよね?」


「はい。色々あって、向こう六十年は学べるそうです」


「あらまぁ、ミーシャさんは()()()なのね」



ん??? どういう意味!? …って、それが 「あなた、ハーレー=ポーターと同類じゃない」 と言う事だと気付くのに暫くかかったよ。

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