表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/462

第314話

すっかり忘れていた訳ではないけれど、あれから一度も炭焼き窯を見に行かなかった訳で。どんなトラブルがあったかなんて知らないぞ。


気の早いクルラホーン軍団が依頼品を持ち込んできたら事なので昨夜のうちに酒のミニボトルも作っておいた。手持ちの空になった【粗相豆】の鞘の数が心許ない。赤と白を二本ずつと、水飴を一・二滴加えた白ワインを一本。ポーション瓶に入れた消毒にも使える『生命乃水(蒸留酒)』は三本用意。後、赤ワインと水飴を混ぜた物に浸したレーズンを作っておき、状態異常回復ポーション用の瓶に入れておいた。実は状態異常回復ポーションは通常のポーション瓶より少しだけ口が広いのだ。


これ、状態異常回復ポーションに爪の先程の大きさの果物を一粒二粒入れ、そこにワインを注いでおいたらクルラホーン用のサングリアが出来るな。それこそ、ザクロ一粒とか山葡萄一粒とか、みかんの小房の脇にたま〜に付いてる子供のみかんとかを入れる?



アンディーのオヤツ用にレーズンを買っておいた。それこそ今日は野草を食べてもらって食性を調べてもいいじゃないか。俺のお昼は全粒粉のパン。面倒なので丸かじりする予定。その気になったらアンディー用のキャベツもあるし。マジックバッグは既製品の少容量サイズを買ってしまった。キャベツが一玉・二玉入る程度。それでもポーションを持ち運んだり最小サイズのポータブルトイレを入れたりは出来るのでヒト族の冒険者はよく購入している物だった。時間停止はしないので生鮮食品は入れてはいけない。まぁ、ニンジン、キャベツ、ジャガイモなんかは数日くらいは仕舞っておけるのでアンディーのキャベツ用バッグにしちゃった訳ですよ。そしてバッグの中は謎の時空間なので、キャベツとサンドイッチと生卵を一緒に入れても潰れないのが凄いよなぁ。



そのまま炭焼き窯のある場所に向かった。二人乗り用の馬車があるから『鉱坑(こうこう)息子』の怪我人役の(ドワーフ)を乗せる為に馬車組合から借りてきたんだな。『地底()』は『スリーストライプ』に荷運びに行って戻ってくるって事なので不在。『旋斧鬼(せんぷうき)』は街道整備というか周辺の山道のメンテをしている。『(みゃく)見役(みやく)』は地中の脈を確認しつつ若手の指導中。まぁ、生徒を放置することなく設定を活かした活動をしているから偉いものだよ。ありがとうございます。



「ミーシャ、遅いぞ」


「パートさん、まだ焚口は閉じてないよね?」


「違う違う、飯だよ、飯!!」


「ご飯の時間でもないと思うんだけど…」


「飯持ってきてくれたんじゃないの?」


「【玉菜(キャベツ)】で良かったら何枚か毟って譲りますよ」


「えっ……」



ゴメン。マジで三日間、拭き草の茎と野草とカエル料理(+食用昆虫)だったのか…。



「心做しか二人ともワイルドになってる感じがします。髭も伸びたんじゃないですか?」


「伸びてねぇって」


「火の番以外は専ら野草と食用キノコを探しに行ってたよ」


「『地底()』が戻ってきたらパンが食えるんだけど、まだ戻らねえ!!」


「パート君がね、笑いキノコと痺れキノコを見つけるのが上手で…」


「ジョーブさん、それって毒キノコのカテゴリーですよね?」


「だから、『旋斧鬼(せんぷうき)』が買い取ってくれた。パート君ってキノコ探しが得意みたいで、美味しい【C茸(シータケ)】も沢山見つけてくれたんだ。お陰で拭き草の茎以外の食材も食べることが出来たよ」


「【C茸(シータケ)】ですか?」


「傘の部分がCの字してるキノコ。肉厚で美味しいよ。鉱山の近くなんかだと【鉱山(マイン)(タケ)】がよく生えてるんだけど、この辺りには生えてなかったみたい」



椎茸じゃなくて【C茸(シータケ)】なのか。実物を見て鑑定してみたい。【鉱山(マイン)(タケ)】も美味しいキノコで、このキノコが生えていると鉱山(マイン)があるので見つけると嬉しさの余り小躍りしちゃうらしい。【鉱山(マイン)(タケ)】は鳥鍋に入れたら最高なんだって。



「俺等が炭を見張ってた間、ミーシャは何してたんだ?」


「ボクはアンディーの従魔登録をして、カーバンクルの調べものをして、職校の食堂でマヨトーストを食べて、学園の食堂で【アルケミート】を食べましたよ」


「はあっ!?」


「ボクは普通に生活してたので…」


「【アルケミート】って豚肉を牛肉に変化させる錬金肉だよね?」


「マヨトーストって今月から食堂で注文が始まった()()だよな」


「はい。一人一日二枚までの()()です」


「いいなぁ」


「おーい、学生さーん、拭き草を採ってきたぞー!!」 「やー!!」



あの叫び声は『(みゃく)見役(みやく)』だな。



「何か発見やトラブルは有ったんですか?」


「【木々奇鱗(きぎきりん)】に罹患した【樹精(ドライアド)】の母体樹(ぼたいじゅ)を発見したよ」


「それは深刻じゃないですか」


「なので、母体樹(ぼたいじゅ)の内脈を確認して治療してきた」


「周辺の乱れはなかったんですか?」


「それは無かったよ。って君、詳しいね」


「僕の出身は山深いので」


「なるほど。もし検脈師になりたかったら歓迎するよ」


「先日職校に入校したばっかりなんですよ。何年か色々学んで、その時に検脈師が将来の職業候補に残っていたらお声がけします」


「期待してるよ。その時はナックヤーマン=キーン=ニックをメンバーから外すから」


()ーー!!」



「解雇&()ーー!! 」 というのは冗談というか『(みゃく)見役(みやく)』の持ちネタの様で、【樹精(ドライアド)】の母体樹(ぼたいじゅ)の保護や治療には回復術師以外ではエルフが適任なのでナックヤーマン=キーン=ニックさんは間違っても追放も解雇もされないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ