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第311話

やっぱり蕎麦は手に入れたい。前世で蕎麦打ち体験をしに行かなかったことを密かに後悔している。上司は蕎麦打ちにハマってしまい毎週末が三食全てが蕎麦になるので家族に嫌がられてた…とか言ってたけど。水回しが大変だとか、捏ね鉢が高額だったとか、蕎麦切り包丁がどうだとか。今思うと、もう少しちゃんと話を聞いてあげてればよかった。


そうか、蕎麦粉がふんだんに手に入る様になって蕎麦が打てる環境になったらガルフ=トングさんに蕎麦切り包丁を発注しなきゃいけないんだな。まな板というか、のし板とか、蕎麦切りの時に添える板とかも要るじゃん。あと麺棒? いや待てよ、絶対に必要なのは捏ね鉢だ!! それらは全部纏めてパイク=ラックさんに発注だな。…っていつの事になるのやら。




美石屋敷(みいしやしき)君、蕎麦はね、二八(にはち)が一番なんだよ」


「はぁ、そうですか (棒読み)」


「打つのも食べるのもね、二八(にはち)蕎麦が最高。十割蕎麦はオトコはついつい憧れちゃうけどね、アレは風味はいいんだよ。でもね、十割蕎麦は切れるし蕎麦臭いしでカミさん達には不評でねぇ…。「パパのお蕎麦はどうして短いの?」って娘に毎回言われるとヘコんじゃうよ」


「へぇー (棒読み)」


美石屋敷(みいしやしき)君も蕎麦やりなよ。蕎麦に含まれるルチンは身体にいいんだ」


「まぁ、今はいいっす」



あの上司、元気にしてるのかねぇ?





「その【埋もれ死に】の群生地ってどの辺か覚えてませんか?」


「『ロング=フィールド』の境界線にけっこう生えてんなぁ。エルフの奴ら、クルラホーンを歓迎する気がねぇだろう」


「それはどうでしょう?」


「エルフの奴ら酒飲まねぇし」


「確かにエルフはお酒を…って、アルチュールさん、ご自身やドワーフと比較してません?」


「古代エルフやダークエルフは “ トモダチ ” なんだけどよぅ…」



つまり、ダークエルフは “ 飲む系 ” なんだ。鬼の血が混じっているっていう事なので、それなりの量は飲めそうではある。



「『ロング=フィールド』はマジでヤベェわ。【埋もれ死に】は群生してるわ、ヤベー泥は生えてるわ」


「ヤベー泥ですか?」


「ヤベー汁に似た臭いなんだけどな、もっと臭い泥の豆が生えてるんだよ。【水母(プルモ)】の皮を丸めた感じの鞘に入ってるんだけどな、突くと弾けてヤベー泥が出て来る。茶色かったり白かったり赤黒かったり…、色は違っても全部臭くてヤベー泥なんだけどよぅ」


「アルチュールさんはそのヤベー泥に被弾した事はあるんですか?」


「泥の大きさが葡萄一粒って感じだからな、ドワーフなら鼻の穴に入ったら「臭くてヤベー!」って慌てるだろうけど、俺らクルラホーンなら頭に当たれば窒息死する。俺はまだ喰らってねぇからここに居るんだからな」



【粗相豆】に似た臭いで泥状…って醤油(もろみ)かな? 豆って言ってたけど、まさか味噌!? もしも味噌ならそれは欲しい。



「そのヤベー泥って『ネオ=ラグーン』に生えてます?」


「幸い生えてねぇんだよ、これが」


「そうなんですね」


「あれは絶対、エルフの奴らの対クルラホーン・トラップだね」



いや、それは違うと思うけどね。それより、本当に味噌なのか気になってしまって仕方がない。冒険者ギルドもしくは商業ギルドに採取依頼を出すにしてもドワーフ語での正式名称が分からないんだよなぁ…。ヤベー泥って言っても多分通じない。こんな時、マリイン=リッジさんがいたら探してきてくれそうなんだけどなぁ。あの(ドワーフ)、歳の割に子供っぽいというか悪戯好きだから、ヤベー泥の話をしたら嬉々として探してきそうじゃん。そもそも【粗相豆】だって俺に渡してきたのはイヤガラセのつもりだったハズだぞ。俺が喜んじゃったからその企みは失敗に終わったけどさぁ…。



「それよりミーシャ、この山の塩だけどエグみもねぇし、海の塩ほどじゃないにしろ甘みもあるんだけどよぉ、何処で産出したやつだ?」


「あ、それはそこらへん産です。尤もボクがヤバい成分を『分離』してるんで、アルチュールさんのお口に合ったのはそのせいかと」


「あー、ある意味加工されてんのか」


「毒になりそうな成分や身体に悪そうな成分を『分離』したんです」


「余ってたら譲ってもらえねぇか? 酒じゃねぇからな、金なら払うぞ」


「今回はプレゼントしますよ。面白い話を聞かせてもらったお礼って事で」


「有り難ぇ。塩は取りに行くのが大変なんだよ」


「アルチュールさんって仲間というかクルラホーンのお友達って居ないんですか?」



仲間が居るなら【蔓野豆(ツルノマメ)】探しとかお願いしたいし。人数が居たら【粗相豆】も本数が集まりそうな予感。



「居るぜ。ノン=ヴェー、フォーロヨーイ、メイティ。あ、メイティってのは俺の嫁だ」



アルチュールさんって結婚してたんだ。そしてクルラホーンの名前って響きが微妙に酔っ払ってないか? アル中の嫁さんが酩酊だと思ったら何だか嫌なんだけど…。



「ヤブマメ集めすんなら招集するぜ」


「お願いしようかな…。お礼のお酒は個々に渡せばいいですか?」


「そこは喧嘩になっからよぅ、個別にしてくんねぇか?」


「分かりました」


「ヤロー連中は飲めりゃー何でも良いんだけどな、俺の嫁さんは甘い酒が好きなんだよ。チョッピリなら果実の汁とかハチミツを混ぜても構わないからな、嫁さん好みの酒にして貰えたら嬉しいぜ」


「ふふ…、奥さん思いなんですね」


「どうせなら惚れたオンナにゃ好みの酒を飲ませてやりてぇじゃねぇか」


「ご馳走様でしたー」




どうやらクルラホーンの知り合いが増えてしまうらしい。

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