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第303話

パイク=ラックさんにアンディーの巣箱(ケージ)の製作をお願いしておき、俺は学園に行きカーバンクルについての資料を読むことにした。巣箱(ケージ)の受け取りは夕方。きっと素敵な巣箱(ケージ)が出来上がっているに違いない。


アンディーにニンジンを手渡したら背中にしがみつきながら器用にポリポリ噛ってるよ。



それよりどうしてアンディーが辛い目にあったのかを聞いてみた。アンディーは『ネオ=ラグーン』領より南に位置する森の中で暮らしていたのだという。地図で言うとエルフの住む『ロング=フィールド』領の辺りだ。山の中の森林地帯にカーバンクル達が暮らしているのだとのこと。そこでヒト族にテイムされたのだけど、他のカーバンクル達は綺麗な赤いカーバンクル石(カーバンクライト)を出したのにアンディーは一見地味でしかも角度によって緑や黄色や紫色が見える “ 何となく不気味な石 ” を渡した訳で…。俺にとってはご褒美なアンディーのカーバンクル石(カーバンクライト)は赤い石が欲しかったヒト族には不評だった訳だよ。レア種だからテイムしてみたら思っていたのと違った…と。そしてその先の話はアンディーは詳しく話してくれなかったけど、相当悲しい思いをしてしまったに違いない。逃げた先でエルフにも出会ったけど余りいい出会いでは無かったとも言っていたし。


その生息地には別のレア種のスローリー・カーバーンクルという個体が居て、そのカーバンクルは緑色のカーバンクル石(カーバンクライト)を産出する個体だったんだって。樹にしがみついて動かないタイプのカーバンクルだったんだとか。もしかしてナマケモノ系カーバンクルか? やはり珍しいからといってヒト族にテイムされたんだけど、緑色のカーバンクル石(カーバンクライト)を出すのはいいが全身が苔に覆われた感じだったので見栄えを気にしたテイマーがスローリー・カーバンクルを浄化。毛に絡みついた緑色の苔を綺麗さっぱり取り除いてしまった…と。するとスローリー・カーバンクルは緑色のカーバンクル石(カーバンクライト)を生み出さなくなってしまった。そしてテイムしている価値が無くなったと判断され捨てられる事になったのだという。流石にレア種を処分…ともいかなかったのか、『ロング=フィールド』出身のエルフに依頼してテイムした辺りの森に捨てて…いや放流してきてもらったらしい。


アンディーはそのスローリー・カーバンクルがカーバンクルの生息地に戻されたのを見た後に酷い目に遭い、そこから逃げてきたと言っていた。スローリー・カーバンクルは五年・十年と長い年月を掛けて再びその身に緑色の苔を纏えば緑色のカーバンクル石(カーバンクライト)を生み出せる様になるから心配しなくて良かったよ。ちょっとだけ安心した。



(「あたち にげたの とおくに にげたの」)

(「どこかわからなくなって おともだちもいなくて かなしい かなしいって」)

(「そちたら ますたーと おうまさん いたの」)

(「ますたー どわーふなのに あたちと おはなしできた ふしぎなの」)

(「あたち ますたーと いっしょがいい」)



しまった。商業ギルド経由でガルフ=トングさんにアンディー用のタワシを発注するのを忘れてしまった。慌ててたからアリサお姉ちゃんに『スリーストライプ』に行くならガルフ=トングさんにタワシを依頼して…って言う事も出来なかったしなぁ。多分、ポニー用だと少し硬いと思う。手紙に希望する仕様を書いて商業ギルド経由で依頼するのが一番だろう。



学園の図書館で資料を読んだらラルフロ=レーンさんのところに行こうかな。



――――――

【幻獣・魔獣大全 〜我等が隣人達〜 】


★カーバンクル★


小型種。生息地は山岳〜森林地帯。草食獣であるので森林限界を超えた山地には生息していないというのが定説である。額に見えるように魔獣石が付いており、一般的にはカーバンクル石(カーバンクライト)と呼ばれている。標準的なカーバンクル石(カーバンクライト)は透明な深紅の石であるが、実はカーバンクルの種類によって色が異なる。額の石は魔石の一種であるが、カーバンクル石(カーバンクライト)が額に存在していなくてもカーバンクルが死亡することはない。


人懐っこく好奇心溢れる性格の個体が多い為、古来より “ テイムを学ばんとする者、先ずはカーバンクルより始めよ ” 等と言われている。知力も高いのでテイマーの言う事を理解しているとされている。言葉は通じなくても何かしらを伝えようとモキュモキュと鳴き声をあげるのでテイムしている者はカーバンクルの言葉を聞いてやる必要がある。 


寿命が約百年とヒト族より長生きするので、テイムしきれなくなりそうな場合は速やかにテイム関係を解除し、元いた生息地に返してやる必要がある。



確認されているカーバンクル


・通常種・


【無針ハリネズミタイプ】:標準的なカーバンクル。針の無いハリネズミの様な姿をしている。額のカーバンクル石(カーバンクライト)は深紅でパイロープ・タイプ。コロコロと転がって移動する姿は愛らしく、ヒト族の貴族が愛玩目的でテイムしたりする。寿命は百年ほどあると言われており、数年〜十数年に一度カーバンクル石(カーバンクライト)を排出する。


【アルマジロタイプ】:鎧蛇獣(アルマジロ)の様な姿をしている。全身が帯甲(たいこう)に覆われている以外は無針ハリネズミタイプと同じである。無針ハリネズミタイプより速く転がるので見失わない様に注意が必要である。


【リスタイプ】:スクイラル・カーバンクル。樹上生活タイプのカーバンクル。クルミやドングリなどのナッツ類を好む。額のカーバンクル石(カーバンクライト)はオレンジ〜茶色でヘソナイト・タイプ。フサフサの尻尾がチャームポイント。




・レア種・


【ナマケモノタイプ】:スローリー・カーバンクル。樹木にしがみついてほとんど動かない。毛皮に緑色の苔が付着している。額のカーバンクル石(カーバンクライト)は緑色でツァボライト・タイプ。毛皮に付着した苔を排除すると緑色のカーバンクル石(カーバンクライト)を排出しなくなる。


【スナネズミタイプ】:ジャービル・カーバンクル。カーバンクルでは珍しく砂地に生息する。額のカーバンクル石(カーバンクライト)は緑がかった黄色でグロッシュラー・タイプ。活動的で走り回るので巣箱(ケージ)よりの脱走に注意。


【オコジョタイプ】:アーミン・タイプ。イタチ、ミンク、フェレットに似た姿のカーバンクルはここに分類される。額のカーバンクル石(カーバンクライト)は紫〜赤紫色でグレープ・タイプ、もしくはロードライト・タイプ。研究が進めば細分化されると言われている。巣箱(ケージ)にハンモックを使うと楽しそうに遊ぶ姿が目撃されている。


【ムササビタイプ】:グライダー・カーバンクル。樹上から滑空してくる。額のカーバンクル石(カーバンクライト)は暗褐色を中心に多色を覗かせるアンドラダイト・タイプ。虹を思わせる煌めきをみせる独特なカーバンクル石(カーバンクライト)は不吉の象徴だとして忌避する者もいる。小型種にモモンガタイプがいる。



・激レア種・


【ヤマネタイプ】:ドーマウス・カーバンクル。額のカーバンクル石(カーバンクライト)はピンクでウンバライト・タイプ。特定の条件下で色が変わる。巣箱の中で常に寝ているので時々は鑑定して生存確認をする必要がある。謎に包まれたカーバンクルである。

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