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第293話

「マヨ土手の方もディップの方も注文出来るのは一人一日一枚ずつだよ」


「慌てなくてもトーストは逃げないからね」


「マヨ土手のベーコンお願いします」


「頼むかい?」


「俺は夜に回すので大丈夫です」



食堂が大混雑。なっ、何事だ!? あ…あれか、マヨネーズで土手を作るトーストと玉子ディップを乗せて焼くトーストが開始されたんだ。そして早くも購入制限が掛かってるんだけど……。よく見たら壁に “ 学生発案のマヨ土手トーストと玉子ディップトーストの名前を募集します。十一の月・一週目・九の日〆切り ” と書いてある紙が貼られていた。


どうやら職校では時々、学生達が発案した物品の名前を募集している模様。「これ、俺が名付けたんだ」ってチョッピリ優越感に浸れるって事だな。


時間のかかりそうなトーストの注文は避けてサッとお昼御飯を済ませると食堂の入り口前が何やら騒がしい事に気付いた。



「ヤベーな、これ『走婆(ランバ)』の相方かよ」


「凄えな。爺ちゃん頑張れ」


「あ、婆さんも来たよ」



お掃除ゴーレム『走婆(ランバ)』にお友達が出来たのか。どれ見て見るか…… ぷっ


名前、『走爺(ソウジイ)』なんだな。ボディ部分を老執事風にカスタマイズしただけなんだけど別物に見えるわ。これ、若い見た目に変えたらメイド風とか執事風とかに出来るんだな。でもなんで名前に『走』って入ってるんだろう?



「やっぱ爺さんも走るのかなぁ?」


「走るんじゃないか? 『走婆(ランバ)』って本気出したらポニーの襲歩(ギャロップ)くらい速度が出せるんだろ?」



えっ、お掃除ゴーレムって走るの!? ってゆーか、走らせる必要がどこにあるのだろうか。あ、学園にはお掃除ゴーレムがいない代わりに学生が魔法で掃除って事だった訳ね。職校の掃除は発明品がしてくれる。違いが面白い。




炭焼き窯に戻る前に【粗相豆】の空になった鞘にワインを詰めようと思った。まさか、さっきの今で持っては来ないとは思うけど、俺に唆されたばっかりに必死に【粗相豆】を探して持ち帰ったけれど約束のワインが無かったらアルチュールさんが悲しむな。そう思うと詰めざるを得ないじゃないか。幸い微量で済むけど逆に入手するのが面倒くさいぞ。授業中でなかったら酒場でワインを注文してそこから吸い取れるんだけどね。これは…冒険者ギルドに寄って相談してみるか。



「あ、ミーシャちゃん。今日って職校じゃないの?」


「アリサお姉ちゃん、こんにちは。今日は炭焼き実習の火入れの初日で、さっきまでお昼ご飯を食べに職校に戻ってたんです。ちょっと相談したい事があったので冒険者ギルドに寄りました」


「あ、炭焼き実習だったのか。今から私達も向かうよ」


「野営の訓練ですか?」


「そうそう実地訓練ね。私達ってあまり野営しないから、野営のやり方を忘れないように時々訓練に参加するんだよ。今回はミーシャちゃんのワギュちゃんも参加するからね」


「ワギュも参加するんだ。それより参加者って多いんですか?」


「今回は私達『地底()』と、『鉱坑(こうこう)息子』、『旋斧鬼(せんぷうき)』、『(みゃく)見役(みやく)』だね。『旋斧鬼(せんぷうき)』は討伐中心で活動するパーティー。ベテランが参加してくれたから安心だよ」



うん、どうしてこうパーティー名ってものはクセの強いのが多いのかね。



「それでミーシャちゃんの用事って何だったの?」


「あ! 冒険者ギルドの酒場ってワイン置いてます?」


「有るよ。今は飲めない時間帯だけどね。それでワインがどうしたの?」


「実は……」



酒場というか食堂のスタッフさんに事情を話したらワインを譲ってもらえた。折角なので赤ワインと白ワインを三本ずつ詰めてもらった。お金は要らないと言われたけど、俺の我儘を聞いてもらったので受け取ってもらう事で納得してもらった。ちなみに銅貨六枚。それでも高いらしいけど。


そうそう、銅貨の下の単位は何と鉛貨。鉄貨じゃないんだよ。それもドワーフ領内だけ鉛貨が流通している事実。他の種族は銅貨の下の単位は鉄貨。ドワーフ、鉄は素材として使ってしまうので貨幣の材料に選ばなかった。鉛は危険だけど扱いを間違わなければ問題ないという事だけど、そこまで鉛製の貨幣は市場に出回っていない。あくまでも単位として存在する貨幣って事でした。だったら鉄貨でいいんじゃないか? って話に戻る訳だけど、「鉄貨が有ったら鍛冶に使ってしまうからな…」と言う事ですよ。まぁ、鉛貨の流通が少なくても特に困らないのには理由があって、ドワーフは何かしらギルドや組合に所属しているので所属証で会計出来ちゃうかららしい。まさかのキャッシュレス社会!! そして多種族間で流通している鉄貨はドワーフ的には質が悪い物なので行商人がお釣りで入手しても鍛冶には使わないとの事です。正に釣りはいらねえぜ!状態だな。



「ミーシャちゃん、クルラホーンと仲良くなったの!? 変な事されてない?」


「大丈夫ですよ。お酒好きな面白い方でしたよ」


「でも、気を付けてね」


「はい。気を付けます」


「じゃあ、現地でね」



クルラホーンは悪戯好きな種族という認識なんだな。たまたまアルチュールさんが気のいい酒好き妖精なだけということなんだろう。まぁ妖精は軒並み悪戯好きではあるけれども。




「よっしゃぁ!! フロッグの勝利」


「そーれ、青汁!! 青汁!! 一気!! 一気!!」



まっ昼間から暇を持て余したオッサン共が野球拳で青汁一気してるんだ……。健康的だなぁ…。

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