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第258話

学生と講師とで笑っていたらビニールハウスじゃなくて【水母(プルモ)ハウス】の端の方に動く影を見つけた。それも小さい人影。前世でいう十七センチドールで人気のあった『二十四節気ドール』、通称『立夏(りっか)ちゃん人形』というか、そんな感じの。俺は雨水(うすい)ちゃんが推しだったけど…。


で、その人影を観察していたら何やら【水母(プルモ)ハウス】を触っている模様。あれは一体何だろう? 妖精とか精霊の類かな? そう言えば生き物って鑑定した事なかったけど出来るんだろうか? 試すか…。



(簡易): ーーー 鑑定不能 ーーー


(鑑定): 妖精クルラホーン。 「同情するなら酒をくれ!!」



なんじゃこりゃ!? あれはクルラホーンという種族の妖精なんだな。そして酒好きらしい。「同情するなら酒をくれ!!」って、与えたらどうなるんだろう? 気になる。よし…試すか。



「先生、先生は【クラーゲン】シートは持ってきていないんですか? 【水母(プルモ)】シートとの違いが見てみたいです」


「あ、そういえばそうだな。一応、見本はある」


「先生、少しだけ切り取ってもいいですか? ボクは【水母(プルモ)】との違いを確認したいんですけど」


「少しだけだぞ。親指一本分くらいなら…」


「ありがとうございます」



二センチ✕五センチくらいの長方形って感じか。解体ナイフで切り取る。うん、半透明の皮膜だ。イカの皮って聞いてたけど小豆色はしてないんだな。



「先生、どうして半透明の乳白色なんですか? クラーケンの皮って白くないっすよね?」


「その色付きのは一番外側の皮だな。それは丈夫だからテントや幌、雨傘なんかに使われている。店先の軒先テントで目にしてると思うが…」


「あーっ、あの紫とか赤茶色の」


「俺、何であんな趣味の悪い色のテントばっかりなのかって思ってたわ」


「たまに緑っぽいテントもあるよね」


「あ、それも天然色だぞ。クラーケン七色と言って体色変化するからな。処理した時の状態で色が固定されるんだ」


「この皮が乳白色の理由を教えてください」


「それは二枚目の皮だからだ。クラーケンは三枚の皮に覆われている。三枚目の皮はレース編みに似た網目状だ。一応、試験に出る…んだったかな? 他の部位も素材として利用されてるから後で教科書を読んでおくように」



試験に出るクラーケン。確か墨がインクの材料だったな。イカ徳利とかあるんだろうか? いや、イカジョッキか?



「後は各々で畑の見学をしてくれ。一時間くらいしたら職校に戻るぞ」



俺は【クラーゲン】シートの切れ端を手にしたまま、こっそりクルラホーンのいた方に向かう事にした。




「クルラホーンさん、こんにちは。一杯どうですか?」


「おめえ、誰だ」


「ボクはミーシャ=ニイトラックバーグ、ドワーフです」


そう言いながら『キーボックス』から『生命之水(蒸留酒)』の入った小瓶を取り出す。魔力回復薬を入れるポーション瓶に『生命之水(蒸留酒)』を入れて持ち歩くのがドワーフステイタス。そう、それは飲める消毒薬であり着火剤。



「マジか!?」


「持ち歩いてたので人肌ですけど」


「温燗か…」


「土魔法でクルラホーンさんサイズの盃でも作ります?」


「いや、そのままでいい」



蓋を外して手渡すと、そのまま口を付け喇叭(ラッパ)飲みをし始める。サイズ感のせいで大の大人が一升瓶を飲んでるみたいに見えるんだが…。



「くぅぅ〜〜、効くぅ〜〜」


「あの、【クラーゲンシート】があるんですけど炙ります?」


「くれ、くれ!!」



『汎用魔法』の『着火』で炙ってみるとほんのり漂うスルメ臭がこれがクラーケン由来であることを教えてくれる。



炙ったクラーケンで温めの蒸留酒を飲むクルラホーン。



「あの、【サモントーヴァ】も持ってますけど…」


「姉ちゃん、神か!!」



こっそり『次元収納(インベントリ)』から【サモントーヴァ】を取り出し、細かく割いて手渡す。クルラホーンのサイズ的に渡す量もちょっぴりで済むのがいいよね。クルラホーンはそれを手にすると幸せそうに齧りつくとモシャモシャと咀嚼し、蒸留酒で流し込む。



「プハー  いいね、外で飲むタダ酒は格別だ。ルッラホー」


「それはよかったです」


「♪ YO YO… 『ネオ=ラグーン』生まれ、 『スワロー』育ち、 酔っ払ってる奴は大体トモダチ!!」



酔っ払ったクルラホーンがご機嫌に歌い出す。そうか、ドワーフと古代エルフはクルラホーンのトモダチ枠か。



「クルラホーンさんはここで何してたんですか?」


「仕事よ、仕事。あとオイラにはアルチュールって名前が有るんでぇ」


「アルチュールさん、お仕事お疲れ様です」


「そこの【水母(プルモ)ハウス】が解れてきてたのを見つけたからよう、直してたってー訳よ」


「ありがとうございます」


「ありがとうを言うのはオイラの方だぞ。【水母(プルモ)】を肴に飲みてぇなぁ…って思ってたら女神の降臨だ」



ハウスにイタズラをしてた訳じゃなかったのか。小人の靴屋さん的な感じかな?



「町の中には入らないんですか?」


「たまに行ってるぞぉ。スライムにチョッカイ出したり、スライムにチョッカイ出したり、醸造所からエールをくすねたり…」


「何やってるんですか…。見つかったら怒られません?」


「大丈夫だぁー。オイラ、クルラホーンとレプラコーンはドワーフ界隈だとフリーパスだからよぅ…」


「あ、靴の妖精さんか…」


「そそ、レプラコーンな。アイツらよぅ、オイラ達の事を “ 酒墜ちしたレプラコーン ” って言うんだけどよぅ、ヒック…、失礼だと思わね?」



それ、間違ってないよね。



「ボク、普段は『スワロー』に居るんで、アルチュールさんにまた会ったらお酒をご馳走しますね」


「マジかー、頼むわ。よし、歌うぞ」




「♪ YO YO… 『ネオ=ラグーン』生まれ、 『スワロー』育ち、 酔っ払ってる奴は大体トモダチ!!」


「歌え!! 歌え!!」


「♪ YO YO… 『ネオ=ラグーン』生まれ、 『スワロー』育ち、 酔っ払ってる奴は大体トモダチ!!」


「酔っ払ってる奴は大体トモダチ!!」



すっかり出来上がったクルラホーンに続いて復唱させられました……。

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